次の文を読み、問いに答えよ。午前10時、A県内で大規模災害が発生した。A県内の救命救急センターに、家屋等の倒壊現場から救助された傷病者の受け入れ要請があり病院に搬送された。直ちにトリアージが行われた。搬送されてきたBさん(45歳、男性)には頻呼吸が認められ、胸部と背部の痛みを訴え、吸気時に胸郭が陥没し、呼気時には膨隆している。
発災6時間、C さん(60 歳、男性)は、職場のがれきの下から救助され、搬送さ れてきた。C さんの意識は清明、バイタルサインは、体温35.8 ℃、脈拍110/分、 不整、血圧90/68 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95 %(room air)である。 がれきに挟まれていた両下肢は、皮膚の創傷、腫脹および皮下出血が認められた。 両下肢の感覚は鈍く、麻痺がみられる。足背動脈は触知できる。尿の色は赤褐色で ある。血液検査の結果、尿素窒素20 mg/dL、クレアチニンキナーゼ〈CK〉3万 IU/L、血糖値110 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 8.2 mEq/L であった。 圧挫症候群〈crush syndrome〉〈クラッシュ症候群〉が疑われ、救出後から輸液療法が開始されている。 このときの看護師の対応で優先度が高いのはどれか。
公式正答:1
解説
がれきの下から救助され、カリウム8.2mEq/L、クレアチンキナーゼ3万IU/L、赤褐色の尿を認める60歳男性への対応で優先度が高いものを問う。除細動器の準備である。
この問題で問われていること
高カリウム血症が引き起こす事態を予測できるか。
しくみから理解する
圧挫症候群では、長時間圧迫された筋が壊死し、救出により血流が再開すると、筋から大量のカリウム、ミオグロビン、そしてクレアチンキナーゼが全身へ流出する。カリウム8.2mEq/Lは著しい高値(基準は3.5〜5.0mEq/L)であり、心筋の電気的な活動を障害して、致死的な不整脈(心室頻拍、心室細動)と心停止を招く。心電図では、テント状T波、P波の平低化と消失、PR間隔の延長、そしてQRS幅の延長が現れ、最終的には正弦波様の波形となって心停止に至る。したがって、いつ心室細動が起きてもよいよう、除細動器を準備しておくことが最優先になる。
選択肢ごとの確認
既往歴の聴取も必要だが、いま生じている生命の危機への備えが先になる。
全身の保温も必要になる(体温35.8℃と低体温がある)。低体温は不整脈と凝固障害を招くため対応するが、除細動器の準備より優先度は下がる。
創傷の洗浄も必要だが、感染の予防という目的であり、緊急性は低い。
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混同しやすいポイント
「いま最も速く生命を奪うものは何か」で判断する。カリウム8.2mEq/Lという値を見た時点で、心停止の危険を想起できるかが分かれ目になる。誤肢はいずれも必要な対応だが、時間の尺度が異なる。検査値を読み、そこから起こりうる事態を予測して備える、という考え方が要点になる。
理解を深める
圧挫症候群の管理を整理する。病態=長時間の圧迫により筋が壊死し、救出後の血流の再開により、細胞内の物質が全身へ流出する(再灌流障害)。高カリウム血症、ミオグロビン尿による急性腎障害、代謝性アシドーシス、循環血液量の減少(壊死した筋への体液の移動=サードスペース)、そして播種性血管内凝固をきたす。「救出後に急変する」ことが最大の特徴で、救出の時点では会話ができていても、その後に心停止に至ることがある。予防と治療=①救出の前から輸液を開始する(可能であれば)。大量の輸液により、腎血流を保ち、ミオグロビンを希釈して排泄させる。②高カリウム血症では心電図を監視し、心電図変化があればカルシウム製剤で心筋を保護し、インスリン・ブドウ糖やβ2刺激薬でカリウムを細胞内へ移動させる。カリウム除去は透析等を病態に応じて選ぶ。炭酸水素ナトリウムは重い代謝性アシドーシス等に限って検討し、尿アルカリ化を一律の標準処置としない。④血液透析(腎不全と高カリウム血症に対して)。看護=心電図モニターの装着と継続的な観察、除細動器の準備、静脈路の確保と輸液の管理、尿量と尿の色の観察、電解質と腎機能の把握、四肢のコンパートメント症候群の観察(腫脹、疼痛、感覚と運動の障害、末梢の脈拍)、そして体温の管理。災害時には、多数の傷病者が同時に発生するため、この病態を知って早期に対応することが救命につながる。阪神・淡路大震災で多くの症例が報告され、広く認識されるようになった。
間違えやすい考え方
優先度を問う型で、誤肢がいずれも必要だが緊急性が低い。いま最も速く生命を奪うもので切る。
5分で振り返る
①圧挫症候群=長時間圧迫された筋が壊死し、救出により血流が再開すると、カリウム、ミオグロビン、クレアチンキナーゼが全身へ流出する。②カリウムの基準は3.5〜5.0mEq/L。8.2mEq/Lは著しい高値で、心室細動と心停止を招く。③心電図=テント状T波、P波の平低化、PR延長、QRS幅の延長、正弦波様の波形。④「救出後に急変する」ことが最大の特徴。⑤治療=循環・心機能を評価した早期輸液、心電図監視、適応に応じたカルシウム、インスリン・ブドウ糖、β2刺激薬、透析等。尿アルカリ化や陽イオン交換樹脂を緊急処置として一律に列挙しない。⑥急性腎障害、代謝性アシドーシス、循環血液量の減少、播種性血管内凝固も生じる。⑦四肢のコンパートメント症候群(腫脹、疼痛、感覚と運動の障害)も観察する。
1分チェック
- カリウム8.2mEq/Lでは。→ 除細動器を準備する(致死的不整脈と心停止に備える)。
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