食品を扱う人の化膿した創が汚染源となる食中毒〈food poisoning〉の原因菌はどれか。
公式正答:3
解説
食品を扱う人の化膿した創が汚染源となる食中毒の原因菌を問う。黄色ブドウ球菌である。
この問題で問われていること
原因菌を、汚染源と発症の機序で区別できるか。
しくみから理解する
黄色ブドウ球菌は、健康な人の皮膚、鼻腔、咽頭に常在し、とくに化膿した創には大量に存在する。手指に傷のある人が素手で食品に触れると菌が付着し、増殖する過程でエンテロトキシン(腸管毒)を産生する。この毒素は耐熱性が高く、100℃で30分加熱しても分解されない。したがって、加熱調理した食品でも発症しうる。毒素型の食中毒であるため潜伏期が短く、摂取後1〜6時間で激しい嘔吐と腹痛が現れ、発熱は軽度か認めない。多くは1〜2日で回復する。
選択肢ごとの確認
腸炎ビブリオは、海水中に生息し、生の魚介類が原因となる。好塩性で、真水と低温に弱い。潜伏期は10〜24時間程度で、激しい腹痛と下痢を起こす。汚染源が人の創ではない。
ボツリヌス菌は、土壌や海底の泥に芽胞として存在し、缶詰、瓶詰、真空パック、いずし(発酵させた魚)といった嫌気的な環境の食品で増殖して神経毒を産生する。眼症状(複視、眼瞼下垂)、嚥下障害、構音障害、四肢の麻痺、呼吸筋麻痺をきたし、致死率が高い。乳児では、はちみつに含まれる芽胞が腸管内で発芽して乳児ボツリヌス症を起こすため、1歳未満にはちみつを与えてはならない。
サルモネラ属菌は、鶏卵、食肉(とくに鶏肉)が原因となる感染型の食中毒である。潜伏期は6〜72時間で、発熱、腹痛、下痢をきたす。加熱により死滅するため、十分な加熱が予防になる。
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混同しやすいポイント
食中毒は、原因微生物・感染型か毒素型か・芽胞の有無・毒素の性質を分けて覚える。耐熱性は一括できない。例えば黄色ブドウ球菌エンテロトキシンは耐熱性が高い一方、ボツリヌス毒素は十分な加熱で失活し得るが芽胞は耐熱性をもつ。予防は原因ごとの温度管理、加熱、二次汚染防止を確認する。
理解を深める
食中毒の予防三原則は、つけない(手洗い、器具の使い分け、生食と加熱食品の分離)、増やさない(低温保存、調理後は早く食べる)、やっつける(十分な加熱、中心温度75℃で1分以上、ノロウイルスは85〜90℃で90秒以上)である。黄色ブドウ球菌については、毒素が加熱で壊れないため、「つけない」と「増やさない」が決定的に重要になる。具体的には、手指に傷や化膿がある人は調理に従事しない(または使い捨て手袋を着用する)、調理前の手洗い、調理後は速やかに冷却して低温で保存する、といった指導になる。給食施設や病院の厨房では、従事者の健康チェック(下痢、発熱、手指の創傷)が日常的に行われる。看護師も、経管栄養の準備や食事の介助に関わる場面で、同じ原則が当てはまる。食中毒が発生した場合は、保健所へ届け出て、原因の究明と拡大の防止を図る。
間違えやすい考え方
原因菌を問う型で、誤肢がすべて別の汚染源をもつ食中毒菌である。汚染源と機序で切る。
5分で振り返る
①感染型・毒素型・生体内毒素産生型を区別する。②菌体、芽胞、産生済み毒素の耐熱性を混同しない。③黄色ブドウ球菌の産生済みエンテロトキシンは加熱だけに依存しない。④ボツリヌス毒素と芽胞は別に考える。⑤予防法は原因微生物ごとに確認する。
1分チェック
- 手指の化膿創が汚染源になる食中毒菌は。→ 黄色ブドウ球菌(毒素型、加熱しても毒素は残る)。
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