臨床研究の倫理指針で被験者の権利を優先することを提唱しているのはどれか。
公式正答:4
解説
臨床研究の倫理指針で被験者の権利を優先することを提唱しているものを問う。ヘルシンキ宣言である。
この問題で問われていること
倫理に関わる主要な宣言を、対象と主題で区別できるか。
しくみから理解する
ヘルシンキ宣言は、1964年に世界医師会が採択した、人を対象とする医学研究の倫理原則である。ニュルンベルク綱領を受け継ぎ、被験者の福利は科学的および社会的利益よりも優先されること、自由意思によるインフォームドコンセント、研究計画の倫理審査委員会による事前審査、被験者のプライバシーの保護、リスクと利益の評価、脆弱な集団への配慮を定める。現在の臨床研究の倫理指針は、この宣言を基礎としている。「被験者の権利を優先する」という点が、この宣言の核心にあたる。
選択肢ごとの確認
オタワ憲章は、1986年に世界保健機関が採択したヘルスプロモーションに関する憲章である。健康を生きる目的ではなく資源と位置づけ、人々が自らの健康をコントロールし改善できるようにする過程と定義した。研究倫理の文書ではない。
リスボン宣言は、1981年に世界医師会が採択した患者の権利に関する宣言である。良質な医療を受ける権利、選択の自由、自己決定の権利、情報を得る権利、守秘義務、尊厳を得る権利などを定める。診療における患者の権利を扱うもので、研究の倫理ではない。
ジュネーブ宣言は、1948年に世界医師会が採択した、医師の職業倫理の誓い(現代版のヒポクラテスの誓い)である。患者の健康を第一に考えること、守秘義務、差別をしないことなどを宣言する。研究倫理を主題とするものではない。
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混同しやすいポイント
4つとも医療倫理に関わる文書であり、対象と主題で区別する。ヘルシンキ宣言=人を対象とする医学研究(被験者)。リスボン宣言=診療における患者の権利。ジュネーブ宣言=医師の職業倫理の誓い。オタワ憲章=ヘルスプロモーション。『研究=ヘルシンキ』『患者の権利=リスボン』『医師の誓い=ジュネーブ』『健康づくり=オタワ』と対で覚える。
理解を深める
看護研究においても、これらの原則が適用される。研究計画は倫理審査委員会の承認を得る。対象者には、研究の目的と方法、参加は任意であること、いつでも撤回できること、断っても不利益がないこと、個人情報の扱い、結果の公表方法を説明し、原則として文書または電磁的方法により同意を得る。文書で意思を表明できない場合は、非文書の同意を正式に記録し、証人を立てる方法がヘルシンキ宣言で認められている。国内の指針でも、研究の類型により、記録を伴う口頭での説明と同意や、既存の情報のみを用いる研究における情報の公開と拒否の機会の保障が認められている。患者を対象とする場合、看護師と患者という関係の非対称性から、断りにくさが生じうる点に配慮が要る。とくに、担当している患者に自分の研究への参加を依頼する場面では、第三者を介する、時間をおいて意思を確認するといった工夫をする。人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(国の指針)は、これらの国際的な宣言を踏まえて策定されており、研究者はこれに従う。臨床の場で得たデータを学会で発表する場合も、個人が特定されないよう配慮し、必要な手続きを経る。
間違えやすい考え方
宣言の名称を問う型で、誤肢がすべて医療倫理に関わる別の文書である。対象と主題で切る。
5分で振り返る
①ヘルシンキ宣言=人を対象とする医学研究の倫理原則。被験者の福利が科学的・社会的利益に優先する。②リスボン宣言=診療における患者の権利。③ジュネーブ宣言=医師の職業倫理の誓い。④オタワ憲章=ヘルスプロモーション。⑤研究には倫理審査委員会の承認と、原則として文書または電磁的方法による同意が要る(研究の類型により、記録を伴う口頭の同意や、情報の公開と拒否の機会の保障による方法も認められる)。⑥看護師と患者の関係の非対称性に配慮する。
1分チェック
- 研究における被験者の権利を定めるのは。→ ヘルシンキ宣言(世界医師会、1964年)。
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