膝蓋腱反射の低下で疑われる病態はどれか。
公式正答:1
解説
膝蓋腱反射の低下で疑われる病態を問う。脚気である。
この問題で問われていること
ビタミン欠乏症を、欠乏するビタミンと症状で対応づけられるか。
しくみから理解する
脚気はビタミンB1(チアミン)の欠乏によって生じる。チアミンは、糖代謝においてピルビン酸をアセチルCoAへ変換する酵素などの補酵素として働く。欠乏すると糖代謝が滞り、エネルギーを大量に消費する神経と心筋が障害される。末梢神経障害により、下肢のしびれ、感覚障害、筋力低下、そして膝蓋腱反射の低下・消失が現れる。心血管型(衝心脚気)では、高拍出性心不全により浮腫と心拡大、呼吸困難をきたす。中枢神経が侵されるとウェルニッケ脳症(眼球運動障害、失調、意識障害)となり、放置すればコルサコフ症候群へ移行する。
選択肢ごとの確認
壊血病はビタミンC(アスコルビン酸)の欠乏による。コラーゲンの合成が障害され、血管がもろくなって、歯肉出血、皮下出血、関節痛、創傷治癒の遅延をきたす。腱反射の低下は特徴ではない。
くる病はビタミンDの欠乏による小児の疾患である。骨の石灰化が障害され、骨の変形(O脚、肋骨念珠、頭蓋癆)、成長障害、低カルシウム血症によるテタニーをきたす。成人では骨軟化症となる。
夜盲症はビタミンAの欠乏による。ビタミンAは網膜の桿体細胞にあるロドプシンの構成成分であり、欠乏すると暗所での視力が低下する。進行すると眼球乾燥症、角膜軟化症に至る。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
『腱反射の低下=末梢神経障害=ビタミンB1』という結びつきが要点になる。誤肢はいずれも別のビタミン欠乏症で、それぞれ特徴的な症状が異なる。ビタミンと欠乏症を対で覚える。B1=脚気とウェルニッケ脳症、B12と葉酸=巨赤芽球性貧血(B12ではさらに亜急性連合性脊髄変性症)、C=壊血病、D=くる病・骨軟化症、A=夜盲症、K=出血傾向、ナイアシン=ペラグラ(皮膚炎・下痢・認知症)。
理解を深める
現代の日本で脚気が問題になる場面としては、偏った食事(インスタント食品や清涼飲料に偏る)、アルコール依存(吸収障害と摂取不足)、長期の経静脈栄養でビタミンを補充しない場合、妊娠悪阻、胃切除後、透析患者がある。とくに、ブドウ糖を含む輸液を、チアミンを補充せずに大量投与すると、糖代謝の需要が増してチアミンが枯渇し、ウェルニッケ脳症を誘発しうる。この点は臨床上きわめて重要で、意識障害のある患者に高カロリー輸液を始める前にはチアミンを投与する。看護では、食事内容の聴取、飲酒歴の確認、下肢のしびれや歩行の様子、腱反射、浮腫、心不全の徴候を観察する。ウェルニッケ脳症は早期に治療すれば回復しうるが、遅れると不可逆な記憶障害を残すため、疑ったら直ちに報告する。
間違えやすい考え方
症状から欠乏症を問う型で、誤肢がすべて別のビタミン欠乏症である。ビタミンと症状の対応表で切る。
5分で振り返る
①脚気はビタミンB1(チアミン)欠乏。末梢神経障害で腱反射が低下する。②心血管型(衝心脚気)では高拍出性心不全と浮腫。③中枢が侵されるとウェルニッケ脳症(眼球運動障害・失調・意識障害)。④壊血病=ビタミンC、くる病=ビタミンD、夜盲症=ビタミンA。⑤アルコール依存、偏食、長期の経静脈栄養、胃切除後がリスク。⑥チアミンを補わずにブドウ糖を大量投与するとウェルニッケ脳症を誘発する。
1分チェック
- 膝蓋腱反射の低下から疑うのは。→ 脚気(ビタミンB1欠乏による末梢神経障害)。
この問題に対応する教材の確認中です。