神経線維には髄鞘のあるものとないものがあるが、活動電位に対する髄鞘の働き はどれか。
公式正答:3
解説
活動電位に対する髄鞘の働きを問う。活動電位の伝導速度を速くすることである。
この問題で問われていること
跳躍伝導の仕組みを説明できるか。
しくみから理解する
髄鞘は、シュワン細胞(末梢神経)またはオリゴデンドロサイト(中枢神経)が軸索に巻き付いて作る脂質に富んだ絶縁体である。髄鞘に覆われた部分では、イオンの出入りが起こらない。一定間隔でくびれた部分(ランビエ絞輪)だけに電位依存性ナトリウムチャネルが集中しており、活動電位はこの絞輪から絞輪へと飛び移るように伝わる。これを跳躍伝導という。無髄線維では軸索の全長を順に脱分極させながら伝わるため遅いのに対し、有髄線維では絞輪の間を電流が一気に流れるため、伝導速度が格段に速くなる。
選択肢ごとの確認
活動電位の発生頻度は、刺激の強さと不応期によって決まるもので、髄鞘の有無では変わらない。刺激が強いほど頻度は増すが、これは軸索の性質による。
活動電位のピーク(振幅)は、髄鞘があっても変わらない。活動電位は全か無かの法則に従い、閾値を超えれば常に一定の大きさで発生する。刺激が強くても振幅は大きくならず、頻度が増すことで情報が伝えられる。
周囲の神経線維への伝わりを防ぐという説明は、絶縁体という語からの連想として一見もっともらしい。しかし髄鞘の主たる働きは伝導速度の向上にある。神経線維はそれぞれ結合組織の鞘に包まれており、通常は隣接する線維へ興奮が飛び移ることはない。設問は「活動電位に対する働き」を問うており、跳躍伝導による速度の向上が答えになる。
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混同しやすいポイント
選択肢4が最も紛らわしい。髄鞘=絶縁体という知識から、混線を防ぐ働きを想像しやすい。しかし絶縁の意味は、その部分でイオンが出入りしないことにあり、その結果として跳躍伝導が可能になり速度が上がる。絶縁は手段で、速度の向上が結果である。また選択肢2の『全か無かの法則』も、神経生理の基本として押さえておく。
理解を深める
神経線維は、直径と髄鞘の有無によって分類され、伝導速度が異なる。太くて髄鞘のあるA線維(運動神経、固有感覚、触覚)が最も速く、次いでB線維(自律神経の節前線維)、最も遅いのが細くて無髄のC線維(痛覚の一部、温度覚、自律神経の節後線維)になる。痛覚の伝導では、Aδ線維が伝える鋭い局在の明瞭な一次痛(速い痛み)と、C線維が伝える鈍く広がる二次痛(遅い痛み)に分かれる。けがをした直後に鋭い痛みを感じ、少し遅れてじんじんする痛みが続くのはこのためである。髄鞘が障害される疾患としては、中枢では多発性硬化症、末梢ではギラン・バレー症候群がある。いずれも伝導速度が低下し、多発性硬化症では時間的・空間的に多発する神経症状、ギラン・バレー症候群では下肢から上行する筋力低下と腱反射の消失が現れる。ギラン・バレー症候群は末梢の脱髄であるため、神経伝導検査で伝導速度の低下を捉えることが診断に用いられる。多発性硬化症は中枢の脱髄で、末梢を調べる神経伝導検査では評価できず、MRIの所見、髄液のオリゴクローナルバンド、そして誘発電位によって診断する。
間違えやすい考え方
機能を問う型で、誤肢に『絶縁体』からの連想を誘うものが置かれている。跳躍伝導という機序で切る。
5分で振り返る
①髄鞘はシュワン細胞(末梢)とオリゴデンドロサイト(中枢)が軸索に巻き付いた絶縁体。②ランビエ絞輪にナトリウムチャネルが集中し、絞輪から絞輪へ跳躍伝導する。③無髄線維より格段に速い。④活動電位の振幅は全か無かの法則で一定、髄鞘では変わらない。⑤太い有髄のA線維が最も速く、無髄のC線維が最も遅い。⑥髄鞘の障害=多発性硬化症(中枢)、ギラン・バレー症候群(末梢)。
1分チェック
- 髄鞘の働きは。→ 跳躍伝導により活動電位の伝導速度を速くする。
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