喉頭摘出および気管孔造設術を受けた患者にみられるのはどれか。
公式正答:2
解説
喉頭摘出および気管孔造設術を受けた患者にみられるものを問う。嗅覚低下である。
この問題で問われていること
術後の解剖の変化から、どの機能が失われるかを導けるか。
しくみから理解する
喉頭摘出術では、喉頭を切除し、気管の断端を頸部の皮膚に縫い付けて気管孔を造設する。その結果、気道と食道が完全に分離され、呼吸は気管孔からのみ行われるようになる。鼻を通る空気の流れがなくなるため、においの分子が嗅上皮に届かなくなり、嗅覚が著しく低下する。同時に、味覚も風味の大部分を嗅覚に依存しているため、食事の味が分かりにくくなる。加湿と加温、異物の除去という鼻の機能も失われ、気管孔からの空気が直接下気道に入るため、加湿と清潔の管理が重要になる。
選択肢ごとの確認
難聴は生じない。聴覚は喉頭とは別の器官であり、手術の影響を受けない。
咀嚼困難も生じない。口腔と歯、咀嚼筋、下顎の機能は保たれる。舌の運動も温存される。
誤嚥は起こらない。むしろ喉頭摘出により気道と食道が完全に分離されるため、構造上、誤嚥が起こりえなくなる。これは喉頭摘出術の特徴の一つで、誤嚥を繰り返す重症例に対して、誤嚥防止の目的で喉頭を摘出する手術が行われることもある。この点は直感に反するため、よく問われる。
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混同しやすいポイント
選択肢4の「誤嚥」が最も紛らわしい。喉頭の手術と聞くと嚥下の問題を連想しやすいが、喉頭を摘出すれば気道と食道が分離され、誤嚥は構造上起こらなくなる。術後の解剖を図に描いて確認すると理解できる。同時に、声を失う(発声機能の喪失)ことと、鼻呼吸がなくなること(嗅覚の低下、加湿と加温の喪失)が主な変化になる。
理解を深める
喉頭摘出後の主な課題は、発声、嗅覚、気管孔の管理である。発声の代替手段としては、食道発声(空気を食道に取り込んで逆流させ、粘膜を振動させる)、電気式人工喉頭(頸部に当てて振動を伝える)、気管食道瘻を作ってシャント発声を行う方法がある。ただしこの方法では、発声用装置の周囲や内部から唾液や飲食物が気管へ漏れることが知られた合併症になる。咽頭皮膚瘻がある場合も同様で、瘻孔を通って気管へ流入することがある。習得には訓練と時間を要し、患者会の支援が役立つ。嗅覚については、鼻へ空気を送る訓練法(口腔と咽頭の動きで鼻腔に気流を作る方法)が試みられる。気管孔の管理では、加湿(人工鼻、ネブライザー)、吸引、清潔、入浴時に水が入らないようにする配慮、ほこりや煙を避けることが必要になる。緊急時には、気管孔から吸引と換気を行うため、周囲に理解を求めておく(救急隊への情報、カードの携帯)。永久気管孔は身体障害者手帳(音声機能障害、そしゃく機能障害を伴う場合など)の対象となる。生活の再構築には長い時間がかかり、就労、対人関係、外見への配慮を含めた支援が必要になる。
間違えやすい考え方
術後の変化を問う型で、誤肢に直感に反する事実(誤嚥が起こらない)が含まれる。術後の解剖から導く。
5分で振り返る
①喉頭摘出+気管孔造設で気道と食道が完全に分離される。②鼻を空気が通らないため嗅覚が低下し、味の感じ方も変わる。③加湿・加温・異物除去という鼻の機能も失われる。④合併症のない術後は、気道と食道が分かれているため通常の経路での誤嚥は起こらない(誤嚥防止の目的で行うこともある)。ただし気管食道瘻(シャント発声)や咽頭皮膚瘻がある場合は、瘻孔を通って気管へ流入することがある。⑤難聴と咀嚼困難は生じない。⑥発声は食道発声・電気式人工喉頭・シャント発声で代替する。⑦気管孔の加湿と清潔、入浴時の水の侵入に注意。
1分チェック
- 喉頭摘出後にみられるのは。→ 嗅覚低下(鼻を空気が通らなくなる)。誤嚥は起こらなくなる。
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