A さん(30 歳、男性)は、昼間の過剰な眠気を主訴に来院した。会社の会議では いつも寝てしまい、居眠り運転で交通事故を起こしたこともある。笑ったときに脱 力してしまうことや、入眠時に誰もいないのに人影が見えたり、睡眠と覚醒の移行 期に体を動かせなくなることがある。 最も考えられる疾患はどれか。
公式正答:1
解説
昼間の過剰な眠気、笑ったときの脱力、入眠時幻覚、睡眠麻痺がみられる30歳男性の疾患を問う。ナルコレプシーである。
この問題で問われていること
4つの症状の組み合わせから疾患を特定できるか。
しくみから理解する
ナルコレプシーは、日中に突然強い眠気に襲われて眠り込んでしまう睡眠発作を主症状とする。加えて、①情動脱力発作(カタプレキシー:笑う、驚く、怒るといった強い感情に伴って、突然筋の緊張が失われる。膝の力が抜ける、顎が下がる、全身が崩れ落ちるといった形で現れ、意識は保たれる)、②入眠時幻覚(寝入りばなに現実感のある幻視や幻聴を体験する)、③睡眠麻痺(いわゆる金縛り。入眠時や覚醒時に体を動かせない)を伴うことがあり、これらを合わせて四徴という。設問文にはこの4つがすべて記述されている。背景には、覚醒を維持する神経伝達物質オレキシンを産生する視床下部の神経細胞の脱落があるとされる。
選択肢ごとの確認
レム睡眠行動障害は、レム睡眠中に本来生じる筋の脱力が起こらず、夢の内容に沿って体を動かしてしまう状態である。大声で叫ぶ、腕を振る、ベッドから落ちるといった行動がみられ、本人や同床者が怪我をすることがある。中高年男性に多く、パーキンソン病やレビー小体型認知症に先行して現れることが知られている。日中の眠気を主症状とするものではない。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まることで睡眠が分断され、日中の眠気をきたす。いびき、起床時の頭痛、夜間の頻尿、肥満や小顎といった特徴を伴う。日中の眠気という点は共通するが、情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺はみられない。
レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)は、夕方から夜間にかけて下肢に不快な感覚が生じ、動かさずにいられなくなる。そのため入眠が妨げられ、結果として日中の眠気を生じる。鉄欠乏や腎不全、妊娠との関連が知られている。四徴はみられない。
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混同しやすいポイント
日中の眠気をきたす疾患は複数あるため、それだけでは絞れない。決め手は、情動脱力発作、入眠時幻覚、睡眠麻痺という、レム睡眠が覚醒時に侵入したような症状の組み合わせにある。設問文がこの3つをすべて書いているのは、ナルコレプシーを指すためである。事例文の中の一見冗長に見える記述が、鑑別の条件になっている型である。
理解を深める
ナルコレプシーの診断には、睡眠ポリグラフ検査と反復睡眠潜時検査が用いられる。後者では、入眠までの時間が短いこと(8分以下)と、入眠時にすぐレム睡眠が出現すること(入眠時レム睡眠期)が確認される。治療は、日中の眠気に対して中枢神経刺激薬(モダフィニルなど)、情動脱力発作に対して抗うつ薬が用いられる。あわせて、規則正しい睡眠、計画的な短時間の昼寝(15〜20分の仮眠を日中に組み込むと眠気が軽減する)、カフェインの適切な使用といった生活の工夫が有効になる。社会生活への影響が大きく、居眠り運転による事故、学業や仕事での評価の低下、怠けていると誤解されることによる自尊心の低下が問題になる。この事例でも既に交通事故を起こしており、運転についての説明は重要な看護になる。職場や学校の理解を得ること、必要な配慮を求めることも支援の一部になる。10歳代で発症することが多く、思春期の生活と進路に影響するため、早期の診断と適切な説明が本人と家族を助ける。
間違えやすい考え方
事例から疾患を特定する型で、誤肢がすべて日中の眠気をきたす睡眠障害である。四徴の組み合わせで切る。
5分で振り返る
①ナルコレプシーの四徴=睡眠発作、情動脱力発作(笑いなどで脱力、意識は保たれる)、入眠時幻覚、睡眠麻痺。②背景はオレキシン産生神経細胞の脱落。③レム睡眠行動障害は夢に沿って体を動かす(中高年男性、パーキンソン病に先行)。④睡眠時無呼吸症候群はいびきと呼吸停止による眠気。⑤レストレスレッグス症候群は下肢の不快感で入眠が妨げられる。⑥診断は反復睡眠潜時検査(入眠時レム睡眠期)。⑦計画的な短時間の昼寝が有効、運転についての説明が重要。
1分チェック
- 睡眠発作+情動脱力発作+入眠時幻覚+睡眠麻痺は。→ ナルコレプシー。
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