発災直後、自家用車に泊まり生活を始めた避難者に発生しやすいのはどれか。
公式正答:2
解説
発災直後、自家用車に泊まり生活を始めた避難者に発生しやすいものを問う。静脈血栓塞栓症である。
この問題で問われていること
車中泊という条件が身体に何をもたらすかを説明できるか。
しくみから理解する
車中泊では、狭い座席で長時間同じ姿勢をとり、下肢を屈曲したまま動かせない。加えて、トイレが不便なために水分の摂取を控えることが多く、脱水が加わる。この2つが重なると、下肢の静脈血がうっ滞して血栓が形成される(深部静脈血栓症)。形成された血栓が、車から降りて歩き出したときなどに遊離して肺動脈を閉塞すれば、肺血栓塞栓症となる。突然の呼吸困難、胸痛、失神をきたし、致死的になりうる。過去の震災で、車中泊をした避難者に肺血栓塞栓症による死亡が相次いだことから、災害医療における重要な課題として広く知られるようになった。
選択肢ごとの確認
生活不活発病は、活動しない状態が続くことで心身の機能が全般に低下する状態である。避難生活で確かに起こりやすいが、発生までにある程度の時間を要する。設問は「発災直後」の車中泊を条件としており、より早期に、かつ致死的に起こりうる静脈血栓塞栓症が該当する。
圧挫症候群(クラッシュ症候群)は、倒壊した建物などに長時間身体が挟まれ、その後に救出されたときに起こる。挟まれていた筋肉が壊死し、救出によって血流が再開すると、カリウムやミオグロビンが全身へ流れ出て、高カリウム血症による心停止と急性腎障害をきたす。車中泊とは機序が異なる。
心的外傷後ストレス障害は、外傷的な出来事の後に、再体験、回避、認知と気分の陰性の変化、過覚醒といった症状が1か月以上続く場合に診断される。発災直後に発生するものではない。急性期には急性ストレス反応として同様の症状が現れうるが、これも車中泊という条件から直接導かれるものではない。
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混同しやすいポイント
設問文の条件を丁寧に読む。「発災直後」=時間経過が短い、「自家用車に泊まる」=狭い空間、長時間同じ姿勢、水分摂取の抑制。この2つの条件から、早期に起こり、かつ姿勢と脱水が原因となるものを選ぶ。誤肢は、時間がかかるもの(生活不活発病、心的外傷後ストレス障害)と、機序が異なるもの(圧挫症候群)で構成されている。
理解を深める
静脈血栓塞栓症の予防は、避難所の運営において重要な項目になる。具体的には、こまめに体を動かす(少なくとも1時間に1回は歩く、足首を回す、つま先を上げ下げする)、十分な水分を摂る(トイレを我慢しないよう、トイレ環境を整えることが前提になる)、ゆったりした服装、弾性ストッキングの使用、そして可能な限り早く車中泊から避難所や仮設住宅へ移行することである。トイレの数、清潔さ、明るさ、女性と高齢者が使いやすいかは、水分摂取に直結する重要な環境要因になる。避難所でも、狭いスペースで座ったまま過ごす時間が長ければ同じリスクが生じるため、通路の確保、体を動かす機会、体操の時間が有効になる。医療チームは、下肢の腫脹や疼痛、呼吸困難といった症状に注意し、超音波検査による血栓のスクリーニングを行うこともある。予防の啓発は、掲示、放送、健康チェックの機会を通じて繰り返し伝える。
間違えやすい考え方
事例から病態を推定する型で、誤肢が時間経過の合わないものと機序の異なるものである。条件(姿勢と脱水)で切る。
5分で振り返る
①車中泊=狭い空間で長時間同じ姿勢+トイレを避けるための水分制限→深部静脈血栓症。②血栓が遊離して肺動脈を閉塞すれば肺血栓塞栓症、致死的になりうる。③予防は1時間に1回動く、足首を回す、十分な水分、弾性ストッキング、早期の車中泊からの移行。④トイレ環境の整備が水分摂取の前提になる。⑤生活不活発病と心的外傷後ストレス障害は時間経過が異なる。⑥圧挫症候群は長時間の圧迫と救出後の再灌流による。
1分チェック
- 車中泊で起こりやすいのは。→ 静脈血栓塞栓症(長時間の同一姿勢と脱水)。
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