甲状腺クリーゼ thyroid crisis について正しいのはどれか。
公式正答:3
解説
甲状腺クリーゼについて正しいものを問う。誘因として感染症が多いことである。
この問題で問われていること
病態と誘因を、甲状腺機能亢進という基盤から導けるか。
しくみから理解する
甲状腺クリーゼは、甲状腺中毒症の患者に、感染症、手術、外傷、分娩、抗甲状腺薬の中断、ヨードを含む造影剤の投与といった強い負荷が加わったときに、代償が破綻して全身の臓器機能が急激に悪化する状態である。全国調査では、誘因のうち最も多いのが抗甲状腺薬の不規則な服用や中断で、感染症がそれに次ぐ。症状は、38℃以上の発熱、頻脈(130回/分以上)、心不全、意識障害(不穏、せん妄、昏睡)、消化器症状(嘔吐、下痢、黄疸)で、致死率が高い。
選択肢ごとの確認
低体温ではなく高体温になる。甲状腺ホルモンの過剰により代謝が亢進し、38℃以上の発熱をきたす。低体温をきたすのは、甲状腺機能低下症が極度に進行した粘液水腫性昏睡である。
致死率は2%以下ではない。適切な治療を行っても10%を超えるとされ、極めて重篤な病態になる。
初期症状は徐脈ではなく頻脈である。甲状腺ホルモンは心拍数を増やし、心収縮力を高める。130回/分以上の頻脈、心房細動、心不全が特徴になる。
欠乏症ではなく過剰による病態である。甲状腺ホルモンの作用が過剰になった状態が甲状腺中毒症であり、その極端な形が甲状腺クリーゼになる。
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混同しやすいポイント
誤肢はすべて『甲状腺機能低下症の特徴』または『過小評価』で構成されている。低体温、徐脈、ホルモンの欠乏は、いずれも機能低下症の側の所見になる。甲状腺ホルモンの作用(代謝の亢進、心拍数と心収縮力の増加、体温の上昇、消化管運動の促進、神経の興奮性の亢進)を押さえれば、その過剰による症状は導ける。
理解を深める
治療は、①甲状腺ホルモンの合成と分泌の抑制(抗甲状腺薬、無機ヨウ素)、②末梢でのホルモン作用の抑制(β遮断薬)、③副腎皮質ステロイド(末梢でのT4からT3への変換の抑制と、相対的副腎不全への対応)、④誘因の治療(感染症の治療など)、⑤全身管理(解熱、輸液、酸素、循環管理)を同時に行う。看護では、体温、心拍数とリズム、血圧、意識レベル、水分出納、消化器症状を頻回に観察する。高体温に対しては冷却を行うが、アスピリンは甲状腺ホルモンと結合蛋白の結合を阻害して遊離ホルモンを増やすため使用しない。予防が最も重要で、甲状腺機能亢進症の患者には、抗甲状腺薬を自己判断で中断しないこと、感染症や体調不良のときは早めに受診すること、手術や造影検査の予定があれば主治医に伝えることを指導する。この事例のような設問は、予防の指導につながる知識として実践的な意味を持つ。
間違えやすい考え方
『正しいのはどれか』型で、誤肢がすべて機能低下症の特徴か過小評価である。ホルモン過剰の作用で切る。
5分で振り返る
①甲状腺クリーゼ=甲状腺中毒症に強い負荷が加わり全身の機能が破綻した状態。②誘因は抗甲状腺薬の中断・不規則な服用が最多、次いで感染症。ほかに手術、外傷、分娩、ヨード造影剤。③症状は38℃以上の発熱、130回/分以上の頻脈、心不全、意識障害、消化器症状。④致死率は10%を超える。⑤低体温と徐脈は機能低下症(粘液水腫性昏睡)の特徴。⑥治療は抗甲状腺薬・無機ヨウ素・β遮断薬・ステロイド・誘因の治療・全身管理。⑦解熱にアスピリンは使わない。
1分チェック
- 甲状腺クリーゼの誘因で最も多いのは。→ 抗甲状腺薬の中断・不規則な服用(次いで感染症)。
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