全身麻酔下で胃全摘出術を受ける患者に対する無気肺〈atelectasis〉の予防法はどれか。 2つ選べ。
公式正答:3・5
解説
全身麻酔下で胃全摘出術を受ける患者に対する無気肺の予防法を2つ問う。ハフィング法と、インセンティブ・スパイロメトリーの使用である。
この問題で問われていること
無気肺の機序から、予防法を導けるか。
しくみから理解する
無気肺は、肺胞に空気が入らず虚脱した状態である。術後は、麻酔と挿管による線毛運動の低下、分泌物の増加、創部痛による浅い呼吸と咳の抑制、臥床によって、末梢の気道が閉塞し無気肺が生じやすい。ハフィング法は、声門を開いたまま「ハッ、ハッ」と強く速く息を吐く方法で、通常の咳より創部への負担が少なく、末梢の分泌物を中枢へ移動させて排出できる。インセンティブ・スパイロメトリーは、ゆっくり深く吸って一定時間保持することを促す器具で、視覚的なフィードバックによって深呼吸を続けやすくし、虚脱した肺胞を再開通させる。どちらも肺胞を広げ、分泌物を出すという無気肺の予防に直接働く。
選択肢ごとの確認
腹帯の装着は、創部を支えて疼痛を軽減し、離床や咳嗽をしやすくするという間接的な効果はある。ただし、締めすぎると胸郭と横隔膜の動きを妨げ、かえって換気を減らす。無気肺の予防法として直接的なものではない。
抗菌薬の使用は、感染の治療と、術式に応じた予防のために行われる。無気肺は感染ではなく肺胞の虚脱であり、抗菌薬では予防できない。無気肺に感染が加われば肺炎になるが、順序として無気肺の予防が先になる。
弾性ストッキングの装着は、深部静脈血栓症の予防法である。下肢の静脈還流を助けるもので、呼吸器合併症の予防ではない。術後合併症の予防として同時に行われるため、混同しやすい。
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混同しやすいポイント
誤肢は、間接的なもの(腹帯)、別の合併症の予防(抗菌薬、弾性ストッキング)で構成されている。無気肺は「肺胞が虚脱する」ことなので、予防は「肺胞を広げる」ことと「分泌物を出す」ことに直接働くものになる。合併症ごとに予防法を対応づけておくと、この種の設問で迷わない。無気肺と肺炎=深呼吸、排痰、離床、口腔ケア。深部静脈血栓症=弾性ストッキング、間欠的空気圧迫、早期離床、抗凝固薬。イレウス=早期離床、早期の経口摂取。創感染=清潔操作、血糖管理、栄養。
理解を深める
術後の呼吸器合併症の予防は、術前から始まる。禁煙(4週間以上が望ましい)、呼吸訓練の練習(術後に痛みがある状態で初めて習うより、術前に習得しておくほうが実行しやすい)、口腔ケア(口腔内の細菌を減らすことが術後肺炎の予防になる)、栄養状態の改善である。術後は、十分な鎮痛(痛くて深呼吸できない状態を作らない)、早期離床、体位の工夫、加湿、そして呼吸訓練の継続を行う。上腹部の手術では、創部が横隔膜に近いため呼吸への影響が大きく、胃全摘出術はその代表になる。観察としては、呼吸音(減弱していないか、副雑音はないか)、呼吸数と深さ、酸素飽和度、体温、痰の量と性状、胸部エックス線所見を見る。無気肺は術後1〜2日にピークを迎えることが多い。同じ時期に発熱もよくみられるが、両者を因果で結ぶ説明は、系統的に検討した報告では支持されていない。術後1〜2日の発熱は、手術侵襲に対する炎症反応(吸収熱)で説明されるのが通常になる。無気肺は同時期に画像で認められうる所見であって、発熱の原因と決めてしまうと、他の原因の検索が遅れる。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢が間接的なものと別の合併症の予防である。無気肺の機序に直接働くかで切る。
5分で振り返る
①無気肺=肺胞の虚脱。術後は線毛運動の低下、分泌物、創部痛、臥床で生じやすい。②ハフィング法=声門を開いて強く速く息を吐く。咳より創部への負担が少ない。③インセンティブ・スパイロメトリー=ゆっくり深く吸って保持し、肺胞を再開通させる。④弾性ストッキングは深部静脈血栓症の予防、抗菌薬は感染の治療と予防。⑤術前からの禁煙、呼吸訓練の練習、口腔ケアが有効。⑥十分な鎮痛が深呼吸を可能にする。⑦術後1〜2日の発熱は吸収熱で説明できることが多い。無気肺も同時期にみられるが、発熱の原因と決めつけない。
1分チェック
- 無気肺の予防は。→ ハフィング法とインセンティブ・スパイロメトリー(肺胞を広げ、分泌物を出す)。
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