肝硬変〈cirrhosis〉 による肝性脳症〈hepatic encephalopathy〉で生じるのはどれか。2つ選べ。
公式正答:2・4
解説
肝硬変による肝性脳症で生じるものを2つ問う。異常行動と羽ばたき振戦である。
この問題で問われていること
肝硬変の症状を、肝性脳症によるものとそれ以外に分けられるか。
しくみから理解する
肝性脳症は、肝機能の低下により、アンモニアをはじめとする神経毒性物質が解毒されずに血中に増え、脳へ達して生じる意識障害である。段階的に進行し、初期には昼夜の逆転、多幸感や不機嫌といった性格の変化、計算力の低下がみられ、次いで異常行動(場所や状況に合わない行動、失禁、脱衣)、傾眠、そして昏睡へ至る。羽ばたき振戦は、上肢を前方に伸ばして手関節を背屈させたときに、手が羽ばたくように不規則に動く現象で、肝性脳症の代表的な神経学的所見になる。
選択肢ごとの確認
浮腫は、肝硬変によるアルブミンの合成低下(膠質浸透圧の低下)と、二次性のアルドステロン増加によるナトリウムと水の貯留から生じる。肝硬変の症状ではあるが、肝性脳症によるものではない。
くも状血管腫は、上胸部や頸部にみられる、中心の細動脈から放射状に血管が広がる皮膚の変化である。肝でのエストロゲンの分解が低下することによる。手掌紅斑、女性化乳房も同じ機序による。これも肝硬変の症状だが、脳症の症状ではない。
メドゥーサの頭は、門脈圧亢進により側副血行路が発達し、臍周囲の腹壁静脈が怒張して放射状に見える所見である。門脈圧亢進の徴候であり、脳症ではない。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
肝硬変の症状を、機序ごとに分類することが要点になる。①肝細胞機能の低下=黄疸、低アルブミン血症(浮腫、腹水)、凝固因子の低下(出血傾向)、アンモニアの蓄積(肝性脳症)、エストロゲンの分解低下(くも状血管腫、手掌紅斑、女性化乳房)。②門脈圧亢進=食道・胃静脈瘤、脾腫、腹壁静脈の怒張(メドゥーサの頭)、腹水。誤肢はすべて①のうち脳症以外か、②に属する。設問が「肝性脳症で生じるもの」と限定している点を読む。
理解を深める
肝性脳症の誘因としては、便秘(腸内でアンモニアが産生され吸収される時間が長くなる)、消化管出血(血液中の蛋白が分解されてアンモニアが増える)、高蛋白食、脱水、感染、電解質異常(低カリウム血症)、利尿薬や睡眠薬の使用がある。したがって治療と予防は、これらの誘因の除去に加えて、合成二糖類(ラクツロース)による排便の促進と腸内のpHの低下、腸管非吸収性の抗菌薬、分岐鎖アミノ酸製剤の投与になる。かつては蛋白制限が行われたが、現在は過度の制限は栄養状態を悪化させるため、必要な量を確保しつつ分岐鎖アミノ酸を補うことが推奨される。看護では、意識レベル、羽ばたき振戦、見当識、行動の変化を経時的に観察し、便通を整え、転倒と誤嚥を防ぐ。夜間の不穏が最初の徴候として現れることも多く、「夜だけ様子がおかしい」という家族の訴えを見逃さないことが早期発見につながる。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢がすべて肝硬変の別の機序による症状である。脳症によるものかで切る。
5分で振り返る
①肝性脳症=アンモニアなどが解毒されず脳へ達して起こる意識障害。②初期は昼夜逆転・性格の変化・計算力の低下、次いで異常行動、傾眠、昏睡。③羽ばたき振戦が代表的な所見。④浮腫は低アルブミン血症、くも状血管腫はエストロゲンの分解低下、メドゥーサの頭は門脈圧亢進による。⑤誘因は便秘、消化管出血、高蛋白食、脱水、感染、低カリウム血症、薬剤。⑥治療はラクツロース、腸管非吸収性抗菌薬、分岐鎖アミノ酸。⑦過度の蛋白制限はしない。
1分チェック
- 肝性脳症の所見は。→ 異常行動と羽ばたき振戦(アンモニアの蓄積による)。
この問題に対応する教材の確認中です。