次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(49歳、女性)は、これまで在宅勤務でほとんど外出することがなく、BMI33であった。Aさんは久しぶりの出勤の際に転倒し、右大腿骨頸部骨折femoralneckfractureと診断され、右人工股関節置換術を受けることになった。
A さんの術後に最も注意すべき所見はどれか。
公式正答:3
解説
BMI 33で在宅勤務によりほとんど外出していなかった49歳女性が、右大腿骨頸部骨折で人工股関節置換術を受けた後、最も注意すべき所見を問う。ホーマンズ徴候である。
この問題で問われていること
術式と患者背景から、最も起こりやすい合併症を導けるか。
しくみから理解する
ホーマンズ徴候は、膝を伸展させた状態で足関節を背屈させたときに、腓腹部に痛みが生じるもので、深部静脈血栓症を疑う所見になる。この患者は、下肢の手術、術後の臥床、肥満(BMI 33)、そしてもともとの活動量の少なさという、深部静脈血栓症の危険因子を複数持っている。下肢の整形外科手術は、血栓症の発生率が高い術式として知られており、術後の観察の中心になる。血栓が遊離して肺動脈を閉塞すれば肺血栓塞栓症となり、致死的になりうる。
選択肢ごとの確認
クールボアジェ徴候は、無痛性に腫大した胆囊を触知する所見で、膵頭部癌などによる悪性の胆道閉塞を示唆する。腹部の所見であり、この事例とは無関係になる。
ブルンベルグ徴候(反跳痛)は、腹部を圧迫してから急に手を離したときに痛みが増強する所見で、腹膜刺激症状を示す。腹膜炎や虫垂炎で陽性になる。
ロンベルグ徴候は、閉眼で立位を保つと動揺が著明になる所見で、深部感覚障害による失調(感覚性失調)を示す。脊髄後索の障害や末梢神経障害で陽性になる。
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混同しやすいポイント
誤肢はすべて別の領域の徴候であり、名前が似た人名徴候を並べた構成になっている。この種の設問では、事例の状況から必要な所見を先に考え、それに合う名称を選ぶ。この事例では下肢の手術後で肥満と不活動があるため、深部静脈血栓症が最も警戒すべき合併症になり、対応する徴候を探せばよい。なおホーマンズ徴候は感度も特異度も高くないため、これだけで診断はできず、下肢の腫脹、疼痛、熱感、色調の変化、左右差と併せて評価し、超音波検査で確認する。
理解を深める
深部静脈血栓症の予防は、術前から始まる。リスクの評価(年齢、肥満、悪性腫瘍、既往、経口避妊薬、長期臥床)、早期離床、足関節の自動運動(足首を動かす、つま先を上下する)、弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法、そして高リスクでは抗凝固薬の投与になる。術後は、下肢の観察(腫脹、周径の左右差、疼痛、熱感、色調)、呼吸状態(突然の呼吸困難、胸痛、頻脈、酸素飽和度の低下は肺血栓塞栓症を疑う)、そして水分摂取の確保を行う。とくに、初回離床の際に血栓が遊離しやすいため、この場面での観察が重要になる。人工股関節置換術後は、深部静脈血栓症に加えて、脱臼の予防も大きな課題になる。後方アプローチでは、股関節の過度の屈曲、内転、内旋が脱臼肢位になるため、これらを避ける生活動作の指導が必要になる。
間違えやすい考え方
事例から合併症を推定する型で、誤肢が別領域の人名徴候である。事例の危険因子から必要な所見を考えて切る。
5分で振り返る
①ホーマンズ徴候=膝伸展位で足関節を背屈させると腓腹部に痛みが生じる(深部静脈血栓症)。②この事例の危険因子=下肢の手術、術後臥床、肥満、活動量の少なさ。③血栓が遊離すれば肺血栓塞栓症で致死的になりうる。④クールボアジェ徴候は胆囊の腫大、ブルンベルグ徴候は腹膜刺激症状、ロンベルグ徴候は深部感覚障害。⑤ホーマンズ徴候だけでは診断できず、腫脹・疼痛・熱感・左右差と超音波で評価する。⑥予防は早期離床、足関節の運動、弾性ストッキング、間欠的空気圧迫、抗凝固薬。⑦初回離床時に血栓が遊離しやすい。
1分チェック
- 下肢の術後で最も注意する所見は。→ ホーマンズ徴候(深部静脈血栓症)。
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