次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(49歳、女性)は、これまで在宅勤務でほとんど外出することがなく、BMI33であった。Aさんは久しぶりの出勤の際に転倒し、右大腿骨頸部骨折femoralneckfractureと診断され、右人工股関節置換術を受けることになった。
術後1日、A さんは39.1 ℃の発熱がみられた。 バイタルサイン:呼吸数18/分、脈拍117/分、整、血圧132/82 mmHg、経皮的動 脈血酸素飽和度〈SpO2〉97 %(room air)。 身体所見:呼吸音は異常なし、腰背部痛なし、術創部の腫脹、発赤、熱感はない。 左手の末梢血管内カテーテル刺入部に発赤、熱感がある。 血液検査所見:赤血球344 万/μL、Hb 12.1 g/dL、白血球11,900/μL、血小板18 万/μL。 血液生化学所見:尿素窒素16 mg/dL、クレアチニン0.8 mg/dL、CRP 11.4 mg/dL。 尿所見:沈査に白血球を認めない。 胸部エックス線写真:異常所見なし。 A さんの発熱の原因で考えられるのはどれか。2つ選べ。
公式正答:4・5
解説
人工股関節置換術後1日に39.1℃の発熱がみられ、呼吸音は正常、腰背部痛なし、術創部に炎症所見なし、左手の末梢血管内カテーテル刺入部に発赤と熱感がある患者について、考えられるものを2つ問う。術後の吸収熱とカテーテル関連血流感染症である。
この問題で問われていること
所見を一つずつ照合して、可能性のあるものを絞れるか。
しくみから理解する
術後1日という時期の発熱は、手術による組織の損傷に対する炎症反応、および血腫や壊死組織の吸収に伴う発熱(吸収熱)として説明できることが多い。通常は術後2〜3日で軽快する。同時に、この事例では末梢血管内カテーテルの刺入部に発赤と熱感があり、カテーテル関連血流感染症の可能性も考えなければならない。刺入部の局所所見は、感染を示す重要な徴候になる。両者は併存しうるため、吸収熱と決めつけずにカテーテルを評価する必要がある。
選択肢ごとの確認
肺炎は、呼吸音に異常がなく、酸素飽和度も97%と保たれていることから、この時点では考えにくい。術後の呼吸器合併症は通常、術後2〜3日以降に現れることが多い。
腎盂腎炎は、腰背部痛がないと明記されており、否定的になる。尿路感染は術後発熱の原因として頻度が高いが、この事例では所見が合わない。
術創部感染は、創部の腫脹、発赤、熱感がないと明記されており、否定される。また創部感染は通常、術後4〜5日以降に現れる。
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混同しやすいポイント
事例文の所見が、それぞれ選択肢を除外するために配置されている。呼吸音異常なし(肺炎を否定)、腰背部痛なし(腎盂腎炎を否定)、創部の炎症所見なし(創部感染を否定)、そしてカテーテル刺入部の発赤と熱感(カテーテル関連血流感染症を支持)。書かれていることと書かれていないことを丁寧に読み分ける作業になる。
理解を深める
術後発熱の鑑別では、時期が手がかりになる。術後1〜2日=吸収熱(無気肺も同時期にみられるが、発熱の原因とは結びつかない)。術後3〜5日=肺炎、尿路感染、静脈炎とカテーテル感染。術後5〜7日=創部感染、深部の膿瘍。術後7日以降=深部静脈血栓症、薬剤熱、縫合不全。この時期の目安と、局所所見を組み合わせて絞り込む。カテーテル関連血流感染症が疑われる場合は、カテーテルを抜去し、先端を培養に提出し、血液培養を2セット採取する。予防としては、挿入時の無菌操作、挿入部位の選択、毎日の必要性の評価と早期抜去、刺入部の観察と適切なドレッシング、そして接続部の消毒がある。末梢静脈カテーテルでも、留置期間が長くなれば静脈炎と感染のリスクが高まる。刺入部の発赤、腫脹、疼痛、索状硬結を毎日観察し、異常があれば速やかに抜去する。看護師が日常的に行う観察が、感染の早期発見に直結する場面になる。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢がすべて事例文の所見で除外できる。所見の照合で切る。
5分で振り返る
①術後1〜2日の発熱は吸収熱として説明できることが多く、2〜3日で軽快する。②カテーテル刺入部の発赤と熱感はカテーテル関連血流感染症を示唆する。③呼吸音正常なら肺炎、腰背部痛なしなら腎盂腎炎、創部所見なしなら創部感染は否定的。④術後発熱の時期=1〜2日は吸収熱、3〜5日は肺炎と尿路感染、5〜7日は創部感染、7日以降は血栓症と薬剤熱。時期は絞り込みの手がかりであり、実際は局所所見と検査所見を組み合わせて鑑別する。⑤疑ったらカテーテルを抜去し先端培養と血液培養2セット。⑥予防は無菌操作、毎日の必要性の評価、早期抜去、刺入部の観察。
1分チェック
- 術後1日の発熱で考えるのは。→ 吸収熱と、カテーテル刺入部の所見があればカテーテル関連血流感染症。
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