次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(57歳、男性)は、妻(50歳)と2人で暮らしている。21歳から喫煙習慣があり、5年前に風邪で受診した際に肺気腫〈pulmonaryemphysema〉と診断された。最近は坂道や階段を昇ると息切れを自覚するようになってきた。
A さんの呼吸機能に関する数値で増加を示すのはどれか。
公式正答:2
解説
21歳から喫煙し肺気腫と診断され、坂道や階段で息切れを自覚する57歳男性の呼吸機能で、増加を示すものを問う。残気量である。
この問題で問われていること
閉塞性換気障害の病態から、各指標の変化の方向を導けるか。
しくみから理解する
肺気腫では、肺胞壁が破壊されて肺の弾性収縮力が失われ、また末梢の気道が呼気時に虚脱しやすくなる。その結果、息を吐ききることができず、肺内に空気が取り残される(エアトラッピング)。この取り残された空気の量が残気量であり、増加する。同時に、肺全体が過膨張して全肺気量も増え、横隔膜が平低化して呼吸筋の効率が落ちる。胸部エックス線での肺野の透過性亢進、横隔膜の平低化、滴状心といった所見も、この過膨張を反映している。
選択肢ごとの確認
1秒率は低下する。1秒率は、努力肺活量のうち最初の1秒間で吐き出せる割合で、70%未満が閉塞性換気障害の定義になる。気道が狭窄して速く吐き出せないため低下する。
1回換気量は増加しない。むしろ、肺が過膨張した状態からさらに吸い込む余地が減り、労作時には十分な換気量を確保できなくなる。安静時の1回換気量はむしろ保たれることが多く、減るのは予備量と労作時の換気になる。いずれにせよ、増加を示す指標ではない。
動脈血酸素分圧は低下する。肺胞の破壊により換気と血流の不均等が生じ、ガス交換の面積も減るため、酸素化が悪化する。進行すると二酸化炭素の貯留も加わる。
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混同しやすいポイント
『吐けない、溜まる』という病態から、増えるものと減るものが導ける。増える=残気量、機能的残気量、全肺気量、気道抵抗。減る=1秒率、1秒量、肺活量(相対的に)、動脈血酸素分圧、拡散能。誤肢はいずれも増加を示さない指標になる。ただし1回換気量は、安静時には保たれることが多く、減るのは予備量と労作時の換気であるため、「減る」と単純には覚えない。閉塞性と拘束性の違いも押さえる。閉塞性=1秒率が低下(70%未満)、肺活量は保たれる。拘束性=肺活量が低下(%肺活量80%未満)、1秒率は保たれる。
理解を深める
慢性閉塞性肺疾患の管理では、まず禁煙が最も重要になる。禁煙により、呼吸機能の低下の速度を遅らせることができる。加えて、ワクチン(インフルエンザ、肺炎球菌)による増悪の予防、薬物療法(長時間作用性の気管支拡張薬が中心)、呼吸リハビリテーション(運動療法、呼吸法、栄養、教育)、そして進行例では在宅酸素療法が行われる。呼吸法としては、口すぼめ呼吸(呼気時に口をすぼめて気道内圧を保ち、末梢気道の虚脱を防ぐ)と腹式呼吸を指導する。栄養では、呼吸筋の消耗と呼吸仕事量の増加により、エネルギー消費が高まって痩せやすいため、高エネルギー・高蛋白の食事を、少量頻回で摂ることを勧める。満腹は横隔膜を圧迫して呼吸を妨げるため、一度に多く食べないことも重要になる。労作時の息切れに対しては、動作を分解し、休憩を入れ、息を吐きながら動くという工夫を指導する。
間違えやすい考え方
呼吸機能の指標を問う型で、誤肢がすべて増加を示さない指標になる。「吐けない、溜まる」という病態で切る。
5分で振り返る
①肺気腫では肺胞壁の破壊と気道の虚脱により息を吐ききれず、残気量が増加する。②全肺気量と機能的残気量も増え、肺が過膨張して横隔膜が平低化する。③1秒率は低下(70%未満が閉塞性換気障害)。④動脈血酸素分圧は低下、進行すると二酸化炭素が貯留。⑤閉塞性は1秒率の低下、拘束性は%肺活量の低下(80%未満)。⑥管理の中心は禁煙、ワクチン、気管支拡張薬、呼吸リハビリテーション。⑦口すぼめ呼吸で末梢気道の虚脱を防ぐ。
1分チェック
- 肺気腫で増加するのは。→ 残気量(吐ききれず空気が肺内に残る)。
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