次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(57歳、男性)は、妻(50歳)と2人で暮らしている。21歳から喫煙習慣があり、5年前に風邪で受診した際に肺気腫〈pulmonaryemphysema〉と診断された。最近は坂道や階段を昇ると息切れを自覚するようになってきた。
A さんは発熱、咳嗽、粘稠痰、呼吸困難を認めたため受診し、肺炎〈pneumonia〉を伴う 慢性閉塞性肺疾患〈chronic obstructive pulmonary disease〉〈COPD〉 の急性増悪と診断されて入院した。入院後、薬物療法によって病状は改善し退院が決定した。看護師がA さんに退院後の生活について尋 ねると、今回の入院をきっかけにA さんは退職し、家事に専念すると答えた。 A さんの呼吸機能に対する負荷が最も小さい動作はどれか。
公式正答:4
解説
慢性閉塞性肺疾患の急性増悪から回復し、退職して家事に専念すると述べた患者への指導を問う。買い物した荷物をカートで運ぶことである。
この問題で問われていること
労作時の息切れを減らす動作の工夫を選べるか。
しくみから理解する
慢性閉塞性肺疾患では、上肢を使う動作、とくに荷物を持つ、腕を上げる、息を止める、前かがみで腹部を圧迫する、といった動作で息切れが強まる。荷物を手で持つと、上肢と肩の筋を呼吸の補助に使えなくなり、また体幹が固定されて胸郭の動きも制限される。カートを使えば、荷物の重さを支える必要がなくなり、上肢の負担が減って息切れを軽減できる。動作を工夫することで、活動の範囲を保つという考え方が、この指導の背景にある。
選択肢ごとの確認
食べる直前に調理することは、息切れを増やす方向になる。調理は立位で上肢を使う作業であり、疲労した状態で食事に臨むことになって、食事の摂取量が減る。作り置き、下ごしらえを分けて行う、電子レンジや調理器具を活用する、椅子に座って作業する、といった工夫が有効になる。
部屋全体に掃除機をかけることも負担が大きい。掃除機は、上肢を使い、前かがみになり、押し引きの動作を繰り返すため、息切れを強く誘発する。一度に全部やらず、部屋ごとに分けて日を変える、軽い道具を使う、家族や介護サービスに頼る、といった方法をとる。
頭より高い位置に洗濯物を干すことは、上肢を挙上する動作であり、最も息切れを誘発する動作の一つになる。腕を上げると、呼吸補助筋が使えなくなり、また胸郭の動きも制限される。物干しの高さを下げる、座って干す、乾燥機を使うといった工夫が要る。
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混同しやすいポイント
誤肢3つは、いずれも上肢を使い、腕を上げ、あるいは持続的な負荷がかかる動作になっている。慢性閉塞性肺疾患の生活指導の要点は、①上肢の挙上を避ける、②息を止めない、③前かがみで腹部を圧迫しない、④動作を分解して休憩を入れる、⑤道具と環境を工夫する、の5点になる。この視点で選択肢を見れば、カートの使用だけが負担を減らす方向だと分かる。
理解を深める
日常生活の動作ごとの工夫を具体的に挙げる。更衣=座って行う、前開きの服、かぶり物は避けるか腕を上げずに着られる工夫。入浴=浴槽の縁に座って洗う、シャワーチェア、洗髪は前かがみを避ける、湯温はぬるめ、換気して湯気を減らす、洗い場に酸素の延長チューブを用意する。排泄=いきまない(便秘を防ぐ)、洋式便座。調理=座って作業、下ごしらえを分ける、電子レンジの活用。掃除=軽い道具、範囲を分ける。移動=ゆっくり、坂と階段では立ち止まって呼吸を整える、息を吐きながら動く。共通する原則は、息を止めない、動作の前に呼吸を整える、動作の途中で休む、そして一度にやろうとしないことになる。呼吸リハビリテーションでは、これらを実際の動作で練習する。退職して家事に専念するという状況の変化は、活動量と役割の変化を意味するため、無理のない範囲で役割を持てるよう、動作の工夫を一緒に考えることが支援になる。
間違えやすい考え方
『適切な指導』を問う型で、誤肢がすべて上肢を使い息切れを誘発する動作である。負担を減らす方向で切る。
5分で振り返る
①上肢を使う動作、腕を上げる動作、息を止める動作、前かがみで息切れが強まる。②荷物はカートで運び、上肢の負担を減らす。③洗濯物は高く干さない、掃除は範囲を分ける、調理は座って下ごしらえを分ける。④動作の原則=息を止めない、動作前に呼吸を整える、途中で休む、一度にやらない。⑤入浴は座って洗い、湯温はぬるめ、換気する。⑥排便でいきまない(便秘を防ぐ)。⑦役割を保てるよう工夫を一緒に考える。
1分チェック
- 慢性閉塞性肺疾患の動作の工夫は。→ 上肢の挙上と持続的な負荷を避ける(カートを使う)。
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