次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(57歳、男性)は、妻(50歳)と2人で暮らしている。21歳から喫煙習慣があり、5年前に風邪で受診した際に肺気腫〈pulmonaryemphysema〉と診断された。最近は坂道や階段を昇ると息切れを自覚するようになってきた。
5年後、A さんは急性増悪による入退院を繰り返していた。今回の入院では呼 吸機能の低下がみられたため、退院後に在宅酸素療法〈HOT〉を導入することに なった。A さんは「家での生活で気をつけることは何ですか」と看護師に質問した。 A さんへの指導内容で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
在宅酸素療法を導入する慢性閉塞性肺疾患の患者への指導内容を問う。「ガス調理器を電磁調理器に変更してください」である。
この問題で問われていること
酸素の性質から、生活上の注意を導けるか。
しくみから理解する
酸素自体は燃えないが、他の物質の燃焼を強く助ける(支燃性)。酸素濃度の高い環境では、通常なら小さな火が急激に燃え広がり、衣類や周囲の物に引火して重大な火災につながる。実際に、在宅酸素療法中の火災事故が繰り返し報告されており、その多くが喫煙と、ガスコンロなどの火気の使用によるものになる。したがって、酸素供給装置と鼻カニューレの周囲2メートル以内に火気を近づけないことが原則で、調理には電磁調理器を用いることが推奨される。
選択肢ごとの確認
電気毛布そのものは火気ではなく、使用が禁じられるわけではない。ただし、コードの断線やショートによる発熱のリスクはあるため、点検と適切な使用は必要になる。寒さへの対策としては、室温の管理、重ね着、湯たんぽ(低温熱傷に注意)といった方法もある。そのうえで、この選択肢はこの設問の答えにならない。在宅酸素療法の安全管理で最も重大なのは直火で、酸素は支燃性であるため炎が一気に燃え広がる。ガス調理器を電磁調理器へ変更することは、その直火を生活から取り除く直接の対策になる。電気毛布への注意も必要だが、直火を除くことに比べれば優先度が下がる。
入浴時に酸素チューブを外してはならない。入浴は、湯温による血管拡張、湯圧による静脈還流の増加、そして洗身動作による酸素消費の増加が重なり、酸素の需要が高まる場面になる。むしろ入浴中こそ酸素が必要であり、延長チューブを用いて、酸素を吸入したまま入浴する。
呼吸が苦しいからといって自己判断で酸素流量を上げてはならない。慢性閉塞性肺疾患で二酸化炭素が貯留している患者では、高濃度の酸素投与により呼吸中枢への刺激が失われ、換気が減って二酸化炭素がさらに貯留し、意識障害に至ることがある(CO2ナルコーシス)。流量は医師の指示に従い、安静時、労作時、睡眠時でそれぞれ指示された量を守る。息切れが強いときは、休息と呼吸法で対応し、改善しなければ連絡する。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、選択肢2と4は、どちらも「苦しいときにどうするか」に関わる誤りになっている。入浴中に外す(酸素が最も必要な場面で外す)、苦しいから増やす(危険な行為)。在宅酸素療法の指導では、この2点を明確に伝える必要がある。火気の問題と併せて、生活の中で危険につながる3つの場面(火気、入浴、流量の自己調整)を押さえる。
理解を深める
在宅酸素療法の管理では、機器の取り扱いも重要になる。酸素濃縮装置は電源が必要で、停電時に備えて携帯用の酸素ボンベを用意する。停電の連絡先、機器の業者、そして緊急時の連絡先を分かりやすい場所に掲示しておく。外出時は、携帯用ボンベの残量を確認し、余裕をもって行動する。旅行や移動については、事前に業者と相談すれば対応できることが多い。鼻カニューレによる皮膚障害(耳介、鼻孔、頬)にも注意し、当たる部分を保護する。加湿は、流量や機器により必要性が異なる。定期的な受診と、酸素飽和度の自己測定も指導する。在宅酸素療法は、外見上の変化を伴い、外出をためらう要因にもなる。「酸素をつけていると人目が気になる」という気持ちに配慮しつつ、酸素を使うことで活動範囲が広がることを伝える。適切に使えば、生命予後と生活の質の両方が改善する治療である。
間違えやすい考え方
『適切な指導』を問う型で、誤肢が入浴時の中断と流量の自己調整である。酸素の性質と危険な場面で切る。
5分で振り返る
①酸素は支燃性があり、火気により重大な火災を招く。②装置とカニューレの2メートル以内に火気を近づけない(喫煙は厳禁、ガスコンロは電磁調理器へ)。③入浴中は酸素の需要が高まるため、延長チューブを使って吸入したまま入る。④苦しいからと自己判断で流量を上げない(CO2ナルコーシスの危険)。⑤流量は安静時・労作時・睡眠時で指示された量を守る。⑥停電に備えて携帯用ボンベと連絡先を用意する。⑦カニューレによる耳介と鼻孔の皮膚障害に注意。
1分チェック
- 在宅酸素療法で最も注意することは。→ 火気を2メートル以内に近づけない(電磁調理器へ変更)。
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