次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。小学校の教員を定年退職後、書道教室に月2回、体操教室に月1回通っている。20年前に高血圧症〈hypertension〉と診断され、月に1回かかりつけの病院を受診し、内服治療をしている。6か月前から、Aさんは病院の受診日を間違えたり、書道教室の日時を忘れることがあり、かかりつけの医師に相談した。Aさんは認知症専門医を紹介され、Mini-MentalStateExamination〈MMSE〉18点で、軽度のAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症Alzheimerdiseaseと診断された。
診断から半年後、A さんは、かかりつけの病院の看護師に「書道教室や体操教室 は、部屋のカレンダーに書いて参加しています。ただ、最近、病院に行くときに薬 が残っています。大切な薬だと先生から言われていますし、忘れずに飲みたいので すが、どうしたらよいでしょうか」と相談した。 看護師のA さんへの対応で最も適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
書道教室や体操教室はカレンダーに書いて参加できているが、薬が残っていると相談した軽度認知症の患者への対応を問う。「薬を飲んだらカレンダーに丸を付けてみませんか」である。
この問題で問われていること
本人が既に使えている方法を活かせるか。
しくみから理解する
この患者は、カレンダーに書くという方法で予定の管理に成功している。つまり、視覚的な手がかりを使う方法が、この人には有効だと既に実証されている。服薬についても、同じ方法を応用すれば、新しい習慣を一から作るより定着しやすい。飲んだら丸を付けることで、飲んだかどうかを目で確認でき、記憶に頼らずに済む。本人の残された力と、既に成功している方法を活かすという、ストレングスの視点に基づく対応になる。
選択肢ごとの確認
お薬手帳を毎朝見ることは、飲んだかどうかの記録にはならない。お薬手帳は処方の内容を記録するもので、服薬の確認には使えない。また「見る」という行為自体を忘れる可能性もある。
主治医に相談してくださいと返すことは、本人の相談を受け止めずに他へ回すことになる。処方の見直し(回数を減らす、一包化する)が必要な場合は医師と薬剤師の関与が要るが、その前に看護師としてできる工夫を一緒に考えることができる。相談された内容に、まず自分の立場で応える姿勢が求められる。
「この病気の方は薬を飲み忘れることがあります」という説明は、事実ではあるが、本人の困りごとを解決しない。また、病気のせいだと一般化することで、本人の努力を否定し、無力感を与えうる。本人は「忘れずに飲みたい」と明確な意思を示しており、その意思に応える具体策が求められている。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
誤肢は、方法として機能しない、他へ回す、一般論で返す、という3つの誤りになっている。本人が既にできていること(カレンダーの活用)に着目し、それを広げるという発想が、この設問の核心になる。認知症のある人への支援では、できないことを補うだけでなく、できている方法を見つけて活かすことが有効になる。
理解を深める
服薬管理の工夫は、その人の生活と能力に合わせて選ぶ。視覚的な手がかり=カレンダーへの記入、服薬カレンダー(曜日と時間帯のポケットに薬を入れる)、薬を見える場所に置く。習慣との結びつけ=食事、歯磨き、テレビ番組といった毎日必ず行うことと組み合わせる。処方の単純化=一包化、服用回数を減らす(1日3回を1回に変更できる薬もある)、剤形の変更。他者の関与=家族の声かけ、訪問看護や訪問介護での確認、訪問薬剤管理指導。技術の活用=アラーム、服薬支援ロボット。この事例では、まず本人ができる方法から試し、それで不十分であれば、より支援の度合いの高い方法へ段階的に移る。いきなり他者による管理へ移すことは、本人の自立を損なう。認知症の進行に応じて方法を見直していく必要があり、定期的な確認(残薬の確認)が欠かせない。
間違えやすい考え方
『最も適切な対応』を問う型で、誤肢が機能しない方法・他へ回す・一般論である。本人が既にできている方法を活かすかで切る。
5分で振り返る
①本人が既に成功している方法(カレンダーへの記入)を服薬にも応用する。②飲んだら丸を付けることで、記憶に頼らず目で確認できる。③お薬手帳は処方の記録であり服薬の確認には使えない。④相談を他へ回さず、まず自分の立場でできる工夫を一緒に考える。⑤「病気だから忘れる」という一般化は本人の努力を否定する。⑥工夫の選択肢=服薬カレンダー、習慣との結びつけ、一包化、回数の削減、他者の確認、アラーム。⑦本人ができる方法から始め、段階的に支援を強める。
1分チェック
- 服薬忘れへの工夫は。→ 本人が使えている方法(カレンダー)を応用する。
この問題に対応する教材の確認中です。