次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(70歳、女性)は夫(68歳)と2人で暮らしている。BMI26で左股関節の変形性関節症osteoarthritisのため関節可動域の制限と疼痛があり、外出時はT字杖を使用している。症状が強いときに消炎鎮痛薬を服用しているが、日常生活動作は自立している。Aさんは過去に転倒したことはないが、左右の下肢の差が3cmあり、立ち上がるときにふらつくことがある。自宅で座って過ごす時間が長い。Aさんは定期受診のため夫に付き添われて外来を受診した。
A さんの症状の悪化を予防するための説明で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
BMI 26で左股関節の変形性関節症により関節可動域の制限と疼痛がある70歳女性への、症状の悪化を予防する説明を問う。体重を減らすことである。
この問題で問われていること
関節への負荷という観点から、悪化の要因を導けるか。
しくみから理解する
変形性股関節症では、関節軟骨がすり減り、荷重による負荷が症状の悪化を左右する。股関節には、歩行時に体重の3〜4倍、階段の昇降ではそれ以上の負荷がかかるため、体重の減少はそのまま関節への負担の軽減につながる。BMI 26は肥満(1度)にあたり、減量によって疼痛の軽減と進行の抑制が期待できる。減量は、食事の調整と、関節に負担の少ない運動(水中歩行、自転車エルゴメーター、椅子に座って行う運動)を組み合わせて進める。
選択肢ごとの確認
運動をしないことは、悪化を招く。関節周囲の筋力(とくに中殿筋と大腿四頭筋)が低下すると、関節の安定性が失われて負荷が増し、疼痛が強まる。また不活動は体重の増加、骨密度の低下、全身の機能低下をもたらす。荷重のかかる運動(長い歩行、走る、階段の反復)は避けつつ、非荷重での筋力訓練と関節可動域訓練を行う。
減塩食は、高血圧や心不全、腎疾患の管理として重要だが、変形性関節症の症状とは直接関係しない。この事例に高血圧の記述はない。
家事を夫に任せることは、活動の機会を減らし、廃用と体重の増加を招く。また役割の喪失は、意欲と自己評価にも影響する。動作の工夫(椅子に座って行う、道具を使う、動作を分ける)によって、負担を減らしながら続ける方向を考える。
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混同しやすいポイント
誤肢は、活動を減らす方向(運動しない、家事を任せる)と、無関係な制限(減塩)で構成されている。変形性関節症の管理は、「関節への負荷を減らしつつ、活動と筋力は維持する」という両立にある。この視点から、減量は負荷を減らし、運動と活動は維持する、という組み合わせが導ける。
理解を深める
変形性関節症の保存療法は、患者教育、運動療法、体重管理、装具と杖の使用、薬物療法(消炎鎮痛薬、外用薬)、物理療法から成る。杖は、患側と反対の手に持つ。これは、杖と患側の下肢が同時に接地することで、患側にかかる荷重を分散させるためになる。この事例では既にT字杖を使用しているが、持ち方が正しいかを確認する意義がある。日常生活の工夫としては、和式の生活(正座、床からの立ち上がり、和式トイレ)を避けて洋式にする、高めの椅子と便座を使う、重い物を持たない、長時間の立位と歩行を避ける、階段では手すりを使う、履物は底が柔らかく安定したものを選ぶ、といった内容になる。左右の下肢長差が3cmあるという記述からは、補高(靴の中敷きや靴底での調整)の検討も考えられる。疼痛が強く生活に支障が大きい場合は、人工股関節置換術が選択肢になる。
間違えやすい考え方
『悪化を予防する説明』を問う型で、誤肢が活動を減らす方向と無関係な制限である。関節への負荷と活動の維持の両立で切る。
5分で振り返る
①股関節には歩行時に体重の3〜4倍の負荷がかかるため、減量が直接に負担を減らす。②運動はやめず、非荷重での筋力訓練(中殿筋、大腿四頭筋)と可動域訓練を行う。③家事も工夫して続ける(活動の維持と役割の保持)。④減塩は関係しない。⑤杖は患側と反対の手に持つ。⑥和式の生活を避け、高い椅子と便座を使う。⑦保存療法で改善しなければ人工股関節置換術。
1分チェック
- 変形性股関節症の悪化予防は。→ 減量(歩行時に体重の3〜4倍の負荷がかかる)。
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