次の文を読み、問いに答えよ。Aちゃんは出生前診断で羊水過多があり先天性食道閉鎖症〈congenitalesophagealatresia〉の疑いを指摘されていた。在胎37週5日に帝王切開で出生、出生体重2,780g、Apgar〈アプガー〉スコア1分後8点、5分後9点である。出生後、Aちゃんは先天性食道閉鎖症〈congenitalesophagealatresia〉と診断された。
出生直後のA ちゃんにみられるのはどれか。
公式正答:2
解説
出生前に羊水過多を指摘され、先天性食道閉鎖症と診断された新生児に出生直後にみられるものを問う。口腔内の泡沫状唾液の流出である。
この問題で問われていること
閉塞の部位から、症状を導けるか。
しくみから理解する
先天性食道閉鎖症では、食道が途中で途切れているため、唾液が胃へ流れず、口腔と咽頭に溜まる。この唾液が呼吸に伴って泡立ち、口や鼻から泡沫状に流れ出る。これが出生直後から観察される最も特徴的な所見になる。胎児期には、羊水を嚥下できないため羊水過多となり、これが出生前診断の手がかりになる。診断の確認として、細いカテーテルを口から挿入すると、途中で進まなくなる(コイルアップサイン)ことを確認する。
選択肢ごとの確認
腹部エックス線写真の鏡面像(ニボー)は、腸閉塞で腸管内に液体とガスが溜まったときにみられる所見になる。食道閉鎖症のうち、気管食道瘻を伴う型(最も多いC型)では、瘻を通って空気が胃へ入るため腹部にガスが見られるが、鏡面像が特徴的な所見ではない。
胆汁性の嘔吐は、閉塞がファーター乳頭より肛門側にある場合の所見になる。胆汁が逆流するには、胆汁の流入部より下流に閉塞が必要で、十二指腸下部より遠位の閉塞(腸回転異常症、小腸閉鎖)を示唆する。食道は胆汁の流入部よりはるかに口側であるため、胆汁性の嘔吐は生じない。
噴水状の嘔吐は、肥厚性幽門狭窄症の特徴になる。生後2〜3週頃から、授乳後に勢いよく吐き、吐物に胆汁を含まない(閉塞が幽門部でファーター乳頭より口側のため)。出生直後の所見ではない。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
『閉塞の部位で症状が決まる』という原則を押さえる。食道の閉塞=唾液が流れず口から溢れる、哺乳できない。幽門の閉塞=噴水状嘔吐、胆汁を含まない。十二指腸下部より遠位の閉塞=胆汁性嘔吐、腹部膨満、鏡面像。この対応から、それぞれの誤肢が別の部位の閉塞を示すと分かる。あわせて、症状が出る時期(出生直後か、日齢が経ってからか)も手がかりになる。
理解を深める
先天性食道閉鎖症は、気管食道瘻の有無と位置により、グロス分類でA〜E型に分けられる。最も多いのはC型(上部食道が盲端、下部食道が気管と交通する)で、全体の8割以上を占める。この型では、下部食道の瘻を通って胃の内容物が気管へ逆流し、化学性肺炎を起こす危険がある。したがって、診断がついたら直ちに、上部食道の盲端に持続吸引のカテーテルを留置して唾液を吸引し、頭部を挙上した体位をとり、経口摂取を禁じる。手術までの間、この管理が誤嚥性肺炎の予防に直結する。他の先天異常を合併することも多く(VACTERL連合:脊椎、鎖肛、心、気管食道、腎、四肢の異常)、全身の評価が必要になる。手術は、気管食道瘻の切離と食道の端々吻合になる。術後は、吻合部の狭窄と縫合不全、胃食道逆流、気管軟化症が問題になり、長期のフォローアップを要する。
間違えやすい考え方
症状を問う型で、誤肢が別の部位の閉塞の所見である。閉塞の部位と症状の対応で切る。
5分で振り返る
①食道が途切れているため唾液が胃へ流れず、泡沫状に口や鼻から溢れる。②胎児期は羊水を嚥下できず羊水過多になる(出生前診断の手がかり)。③カテーテルが途中で進まない(コイルアップサイン)。④幽門狭窄症は生後2〜3週の噴水状嘔吐で胆汁を含まない。⑤胆汁性嘔吐はファーター乳頭より遠位の閉塞。⑥最多はC型(上部が盲端、下部が気管と交通)。⑦診断後は持続吸引、頭部挙上、経口禁止で誤嚥性肺炎を防ぐ。
1分チェック
- 先天性食道閉鎖症の出生直後の所見は。→ 口腔内の泡沫状唾液(唾液が胃へ流れない)。
この問題に対応する教材の確認中です。