次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(32歳、初産婦)は妊娠39週4日で男児を正常分娩した。出生体重3,000g、身長48.0cm。出生直後、児に付着していた羊水を拭き取り、インファントラジアントウォーマーの下で観察を行った。その後、温めておいた衣服を着せてコットに寝かせ、コットを空調の風が当たらない場所に配置した。
産褥3日。A さんは児の啼泣に合わせて横抱きで母乳を与えている。A さんの 乳房の型はⅢ型、熱感が出てきている。乳管は左右とも4本開通している。「抱き 方は色々あると聞きました。今の方法以外の授乳の仕方はありますか」と相談を受 けた。 授乳の仕方を図に示す。 A さんに適した授乳の仕方はどれか。
公式正答:3
解説
産褥3日、乳房Ⅲ型で熱感があり、乳管が左右とも4本開通している褥婦に適した授乳の仕方を図から選ぶ。公式正答は③である。
この問題で問われていること
乳房の状態に応じて、授乳姿勢を選べるか。
しくみから理解する
授乳の姿勢には、横抱き(標準的な抱き方。児の頭を授乳する側の腕で支える)、交差抱き(反対側の腕で児の頭を支え、頭の位置を細かく調整できる)、脇抱き(フットボール抱き。児を脇に抱え、足を後方へ向ける)、そして添い乳(側臥位)がある。姿勢を変えると、乳頭に当たる児の顎と舌の位置が変わり、排乳される乳腺葉も変わる。乳房が緊満して熱感がある場合や、特定の部位にうっ滞がある場合には、抱き方を変えて、これまで排乳されにくかった部位から乳汁を出すことが有効になる。とくに脇抱きは、乳房の外側と下部の排乳に適し、横抱きだけでは残りやすい部位を補える。この褥婦は横抱きのみで授乳しており、熱感が出てきている段階で、別の抱き方を加えることが適切になる。
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混同しやすいポイント
「乳房の型」と「乳管の開通数」は、事例の背景を示す情報で、どの抱き方を選ぶかを直接には決めない。判断の鍵は、熱感が出てきている(うっ滞が始まっている)ことと、これまで横抱きだけで授乳してきたことになる。同じ姿勢を続けると、排乳される部位が偏るため、姿勢を変えて乳房全体から出すという考え方が答えになる。姿勢そのものの名称より、なぜ変えるのかを押さえる。
理解を深める
授乳姿勢の共通の要点を整理する。①母親が楽な姿勢をとる(背中と腕を支える、クッションを使う、足底を床につける)。②児の体を母親の方へ向け、耳・肩・腰が一直線になるようにする(体をねじらせない)。③児の口が乳頭の高さに来るよう、児を乳房へ近づける(母親が前かがみにならない)。④乳輪まで深くくわえさせる(乳頭だけを浅く吸うと、乳頭に傷ができ、乳汁も出にくい)。⑤下唇が外向きに開き、顎が乳房に触れ、鼻はふさがれていない状態を確認する。⑥ゆっくりと大きく吸う動きと、嚥下の音が聞こえる。姿勢ごとの適応としては、横抱き=一般的、交差抱き=新生児や吸着が難しい場合、脇抱き=帝王切開術後(腹部を圧迫しない)、乳房が大きい場合、乳房の外側のうっ滞、双子の同時授乳、添い乳=夜間、会陰部の疼痛がある場合、疲労が強い場合。乳房緊満への対応としては、姿勢を変えることに加えて、授乳前に乳輪を柔らかくする、頻回に授乳する、授乳後は冷罨法を行う、という方法を組み合わせる。
間違えやすい考え方
図から姿勢を選ぶ型で、姿勢を変えて排乳の部位を変えるという原則で判断できる。図中のどれが正答③かは別冊で要確認。
5分で振り返る
①授乳姿勢=横抱き、交差抱き、脇抱き(フットボール抱き)、添い乳。②姿勢を変えると排乳される乳腺葉が変わるため、うっ滞への対応になる。③脇抱きは乳房の外側と下部の排乳に適し、帝王切開術後にも用いる。④共通の要点=母親が楽な姿勢、児の耳・肩・腰を一直線に、児を乳房へ近づける、乳輪まで深くくわえさせる。⑤下唇が外向きに開き、顎が乳房に触れ、鼻はふさがれていない。⑥乳頭だけを浅く吸うと傷ができ乳汁も出にくい。⑦緊満への対応は、姿勢を変える・乳輪を柔らかくする・頻回授乳・授乳後の冷罨法を組み合わせる。
1分チェック
- 横抱きだけで熱感が出てきたときは。→ 抱き方を変えて、別の部位から排乳する。
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