次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(22歳、男性)は、高校卒業後に就職したが、同僚との関係がうまく築けず、転職を繰り返している。「他の人と自分はどこか違う。自分の将来が不安だ」と感じたAさんは精神科クリニックを受診し、自閉症スペクトラム障害autismspectrumdisorderと診断された。Aさんは小学生のころから他人の気持ちが理解できないときがあり、対人関係を築くことが苦手で、学校で孤立していた。また、偏食が強く、るいそうがみられたために、同級生から容姿のことでいじめられたことがあった。中学校や高校では忘れ物が多く、集団生活になじめなかった。
A さんに認められるのはどれか。
公式正答:4
解説
同僚との関係が築けず転職を繰り返し、他人の気持ちが理解できず対人関係が苦手で孤立していた22歳男性に認められるものを問う。コミュニケーションの障害である。
この問題で問われていること
疾患の中核的な特徴を、事例の記述から特定できるか。
しくみから理解する
自閉スペクトラム症の中核的な特徴は、①社会的なコミュニケーションと対人的な相互作用の持続的な欠陥、②行動、興味、活動の限定された反復的な様式(こだわり、感覚の過敏さや鈍感さを含む)、の2つになる。この事例では、他人の気持ちが理解できない、対人関係を築くことが苦手、学校で孤立していた、同僚との関係がうまく築けないという記述が、いずれも①に該当する。また偏食が強いという記述は、感覚の特性として②に関わる。
選択肢ごとの確認
被害妄想は、他者が自分に危害を加えようとしているという確信で、統合失調症などでみられる。この事例には、そうした確信の記述がない。「他の人と自分はどこか違う」という感覚は、自分の特性への気づきであり、妄想ではない。
予期不安は、恐れている状況が再び起こるのではないかと先取りして不安になる状態を指す。パニック症で、また発作が起こるのではないかと不安になるものが代表だが、社交不安症、広場恐怖症、限局性恐怖症、全般不安症、心的外傷後ストレス障害でも現れる。この事例には、パニック発作の記述も、特定の状況を先取りして恐れるという記述もない。
ボディイメージの障害は、自分の体型についての認識が現実と異なる状態で、神経性やせ症の中核症状になる。この事例には、るいそう(やせ)と、容姿でいじめられた経験の記述があるが、体型の認識の歪みや、やせ願望の記述はない。るいそうの原因は偏食であり、摂食障害とは機序が異なる。
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混同しやすいポイント
誤肢3は、事例文の「るいそう」「容姿のことでいじめられた」という記述から連想させる作りになっている。しかし、るいそうの原因は偏食であり、これは感覚の特性による選択的な摂食と考えられる。摂食障害におけるボディイメージの障害とは別の機序になる。事例文の記述を、そのまま結びつけるのではなく、背景にある機序を考える必要がある。
理解を深める
自閉スペクトラム症は、発達期から現れる神経発達症で、程度と現れ方に大きな幅がある(スペクトラム)。知的障害を伴う場合と伴わない場合があり、伴わない場合は、学業に問題がないため気づかれにくく、成人になってから対人関係の困難や職場での不適応をきっかけに診断されることがある。この事例もそのパターンになる。診断されることは、レッテルを貼られることではなく、これまでの困難の理由が分かり、必要な支援を受けられるようになるという意味を持つ。「自分が悪いのではなかった」という理解が、自己評価の回復につながることも多い。支援としては、環境の調整(明確な指示、視覚的な手がかり、感覚刺激の調整、予測できる日課)、本人の特性の理解と自己理解の支援、そして社会資源(就労支援、障害者手帳、自立支援医療、当事者の会)の活用になる。強みに着目する視点も重要で、細部への注意、記憶力、規則性への強さ、誠実さといった特性が活きる場面を探すことが、就労の定着につながる。
間違えやすい考え方
特徴を問う型で、誤肢が別の疾患の症状と、事例文から連想させる誤りである。中核的な特徴で切る。
5分で振り返る
①自閉スペクトラム症の中核=社会的コミュニケーションと対人的相互作用の持続的な欠陥+限定的で反復的な行動・興味(こだわり、感覚の特性)。②この事例の「他人の気持ちが理解できない」「対人関係が苦手」「孤立」が該当。③偏食は感覚の特性による選択的摂食で、ボディイメージの障害とは機序が違う。④被害妄想は統合失調症の症状。予期不安は、恐れる状況の再来を先取りする不安で、パニック症で典型的だが、他の不安症や心的外傷後ストレス障害にもみられる。⑤知的障害を伴わない場合、成人になって診断されることがある。⑥診断は困難の理由が分かり支援につながる意味を持つ。⑦支援は環境調整と自己理解、そして強みの活用。
1分チェック
- 自閉スペクトラム症の中核的な特徴は。→ 社会的コミュニケーションと対人的相互作用の障害。
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