次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(22歳、男性)は、高校卒業後に就職したが、同僚との関係がうまく築けず、転職を繰り返している。「他の人と自分はどこか違う。自分の将来が不安だ」と感じたAさんは精神科クリニックを受診し、自閉症スペクトラム障害autismspectrumdisorderと診断された。Aさんは小学生のころから他人の気持ちが理解できないときがあり、対人関係を築くことが苦手で、学校で孤立していた。また、偏食が強く、るいそうがみられたために、同級生から容姿のことでいじめられたことがあった。中学校や高校では忘れ物が多く、集団生活になじめなかった。
就労移行支援を利用し、A さんは仕事を始めたが、苦手な仕事内容が多く、失 敗が続いているため同僚から注意を受け続けている。外来看護師は、A さんから 「毎日が憂うつでつらい。ストレスが溜まるのでどうしたらよいか」と相談を受け た。 A さんへの対応で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
就労後、苦手な仕事が多く失敗が続いて注意を受け続け、「毎日が憂うつでつらい。ストレスが溜まるのでどうしたらよいか」と相談した患者への対応を問う。憂うつな気分について詳しく話してもらうことである。
この問題で問われていること
訴えを受け止めることと、対処法を示すことの順序を判断できるか。
しくみから理解する
この患者は「憂うつでつらい」という感情を訴えており、まず必要なのは、その内容を詳しく聴いて理解することになる。どのような場面でつらいのか、いつからか、どの程度か、睡眠や食欲はどうか、そして希死念慮はないか。これらを把握しなければ、適切な対応は選べない。憂うつが続いている場合、うつ状態への進展も考えられ、精神科的な評価が必要になることもある。対処法を示す前に、その人に何が起きているかを知る、という順序になる。
選択肢ごとの確認
仕事に慣れるまで待つよう説明することは、訴えを受け流すことになる。既に失敗が続き、注意を受け続けている状況で、時間が解決するとは限らない。むしろ状況が悪化して、離職や心身の不調につながりうる。
同僚とうまく付き合う方法を考えてもらうことは、問題を本人の対人スキルの問題として扱い、本人に解決を求めることになる。この患者は自閉スペクトラム症があり、対人関係の困難は特性によるものになる。本人の努力で解決を求めるのではなく、環境の調整(業務内容の見直し、指示の出し方、職場の理解)を検討する必要がある。
看護師自身のストレス発散方法を指導することは、その人に合うとは限らず、また訴えの内容を聴かないまま助言することになる。ストレス対処の方法は、本人の特性、好み、生活状況によって異なる。まず話を聴き、その人に合う方法を一緒に探す。
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混同しやすいポイント
誤肢は、受け流す、本人に解決を求める、自分の方法を押しつける、という3つの誤りになっている。共通するのは、訴えの内容を詳しく聴いていない点になる。「どうしたらよいか」と問われると、すぐに答えを出したくなるが、まず聴くことが答えを見つける前提になる。とくに感情の訴えでは、聴かれること自体が支えになる。
理解を深める
この事例の背景を考えると、いくつかの課題が見える。仕事の内容が本人の特性に合っていない可能性。職場が本人の特性を理解していない可能性。注意を受け続けることによる自己評価の低下。そして、それらが積み重なった結果としての憂うつ。したがって、本人の話を聴いたうえで、必要に応じて、職場との調整(就労定着支援やジョブコーチを介した業務内容と指示の出し方の見直し)、主治医への相談(うつ状態の評価と治療)、そして本人が使える対処法の検討(休息、相談できる相手、活動の調整)を進める。自閉スペクトラム症のある人では、二次障害としてうつ病、不安症、適応障害を生じることが少なくない。これは特性そのものではなく、環境との不適合と、繰り返される失敗体験と否定的な評価によって生じる。したがって予防は、環境を調整して失敗を減らし、できていることを認めることになる。希死念慮の確認も、この場面では欠かせない評価項目になる。
間違えやすい考え方
『適切な対応』を問う型で、誤肢が受け流す・本人に解決を求める・自分の方法を押しつけるである。まず聴くという順序で切る。
5分で振り返る
①感情の訴えには、まず内容を詳しく聴く(場面、時期、程度、睡眠と食欲、希死念慮)。②対処法を示す前に、何が起きているかを知る。③「慣れるまで待つ」は受け流すことになり、状況が悪化しうる。④対人スキルの問題として本人に解決を求めず、環境の調整を検討する。⑤自分のストレス対処法を押しつけない。⑥自閉スペクトラム症では二次障害(うつ病、不安症、適応障害)を生じやすい。⑦予防は環境の調整と、できていることを認めること。
1分チェック
- 「つらい」と訴えられたら。→ まずその内容を詳しく聴いて理解する。
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