次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(87歳、女性、要介護1)は1人暮らしで、長女(52歳、会社員)が同じマンションの隣の部屋に住んでいる。5年前に乳癌〈breastcancer〉のため左乳房切除術を受けた。1年前に肺への転移が確認され、胸水の貯留への対症療法のため入退院を繰り返していた。退院後は、状態観察と体調管理のため大学病院の外来を月に2回受診し、訪問介護と訪問看護を週に1回ずつ利用して在宅療養を続け「これ以上の積極的な治療はせずに自宅で最期まで過ごしたい」と話している。ある日、長女から「最近、母は通院がつらそうで、先月は1回しか受診していません。医師の診察は大事だと思うので、受診を続けるために主治医に何を相談すればよいでしょうか」と訪問看護師に相談があった。
長女への助言で適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
自宅で最期まで過ごしたいと希望する87歳女性が、通院がつらく受診が滞っている状況で、長女への助言を問う。在宅療養支援診療所の利用である。
この問題で問われていること
本人の希望と、通院の負担という課題の両方に応える方法を選べるか。
しくみから理解する
在宅療養支援診療所は、24時間の連絡と往診の体制を持ち、在宅での療養を支える診療所になる。この患者は「自宅で最期まで過ごしたい」と明確に希望しており、通院がつらくなっているという課題がある。計画的・定期的に医師が居宅を訪問して診療する訪問診療を受けられれば、通院の負担なく医学的な管理を継続でき、本人の希望も守れる。あわせて、急に具合が悪くなったときに求めに応じて臨時に訪問する往診の体制と、看取りの体制も整う。訪問診療と往診は別の役務で、定期に受けるのが訪問診療、求めに応じて臨時に受けるのが往診になる。大学病院の外来と併せて、あるいは移行して利用することができる。
選択肢ごとの確認
緩和ケア病棟への入院は、本人の「自宅で最期まで過ごしたい」という希望に反する。緩和ケア病棟は、症状の緩和が自宅では難しい場合や、家族の休息(レスパイト)が必要な場合の選択肢になるが、この段階で第一に勧めるものではない。
診察を月1回に減らすことは、通院の回数は減るが、通院そのものの負担は残る。また医学的な管理の頻度が下がる。既に先月は1回しか受診できていない状況であり、根本的な解決にならない。
通所リハビリテーションの利用は、通院の代わりにならない。医師の診察を受ける場ではなく、また外出の負担はむしろ増える。この患者の状態と希望にも合わない。
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混同しやすいポイント
『通院の負担をなくしつつ、医学的な管理を続ける』という条件を満たす方法を探す。訪問診療であれば、移動の負担がゼロになり、定期の診察を継続できる。誤肢は、入院(希望に反する)、回数の削減(負担は残る)、別のサービス(目的が違う)で、いずれも条件を満たさない。長女の「受診を続けるために何を相談すればよいか」という問いに対して、「受診の形を変える」という答えを示すことになる。
理解を深める
在宅療養支援診療所の要件は、24時間連絡を受ける体制、24時間往診が可能な体制、24時間訪問看護が可能な体制(連携を含む)、緊急時の入院先の確保、そして連携する医療機関等への情報提供と、看取りの実績の報告になる。機能強化型では、複数の医師の配置と、看取りの実績がさらに求められる。在宅での看取りを実現するには、この診療所と訪問看護ステーション、そして介護サービスの連携が要になる。この事例では既に訪問看護と訪問介護を利用しており、そこに定期の訪問診療と、必要時の往診が加われば体制が整う。大学病院の主治医との関係も大切で、これまでの経過と方針を引き継ぐための情報提供が必要になる。訪問看護師の役割は、こうした資源を知っていて、本人と家族の希望に沿った形を提案し、関係機関をつなぐことになる。長女が「医師の診察は大事」と考えていることも尊重しつつ、その目的(医学的な管理の継続)を、別の方法で達成できることを伝える。
間違えやすい考え方
『適切な助言』を問う型で、誤肢が希望に反するもの・負担が残るもの・目的の違うサービスである。条件を満たすかで切る。
5分で振り返る
①在宅療養支援診療所=24時間の連絡と往診の体制を持ち、在宅療養を支える。②定期の訪問診療により通院の負担なく医学的管理を継続でき、必要時の往診によって急変時と看取りの体制も整う。訪問診療=計画的・定期的、往診=求めに応じて臨時、と区別する。③緩和ケア病棟は自宅で過ごしたいという希望に反する。④受診回数を減らしても通院の負担は残る。⑤通所リハビリテーションは診察の場ではない。⑥要件は24時間の連絡・往診・訪問看護、緊急時の入院先の確保、看取りの報告。⑦大学病院の主治医からの情報提供で経過と方針を引き継ぐ。
1分チェック
- 通院がつらく在宅を希望する人には。→ 在宅療養支援診療所による定期の訪問診療(必要時は往診)の利用を提案する。
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