次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(87歳、女性、要介護1)は1人暮らしで、長女(52歳、会社員)が同じマンションの隣の部屋に住んでいる。5年前に乳癌〈breastcancer〉のため左乳房切除術を受けた。1年前に肺への転移が確認され、胸水の貯留への対症療法のため入退院を繰り返していた。退院後は、状態観察と体調管理のため大学病院の外来を月に2回受診し、訪問介護と訪問看護を週に1回ずつ利用して在宅療養を続け「これ以上の積極的な治療はせずに自宅で最期まで過ごしたい」と話している。ある日、長女から「最近、母は通院がつらそうで、先月は1回しか受診していません。医師の診察は大事だと思うので、受診を続けるために主治医に何を相談すればよいでしょうか」と訪問看護師に相談があった。
3か月後、A さんは呼吸状態の悪化のため在宅酸素療法〈HOT〉(3L/分、24 時 間)を受けることになった。要介護3に変更され訪問看護を週に3回利用すること になった。毎日午前は訪問介護、午後は長女が介護休業制度の短時間勤務等の措置 を利用して介護することになった。訪問介護員から「A さんの食事を作り、食べた 後の片付けをしているのですが、A さんが食事の後に少し息が苦しいと言うこと があります。どうすればよいでしょうか」と訪問看護師に相談があった。 訪問介護員への助言で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
在宅酸素療法中の87歳女性が、食事の後に少し息が苦しいと言うことについて、訪問介護員から相談を受けた訪問看護師の助言を問う。「Aさんの1回分の食事量を減らし回数を増やしましょう」である。
この問題で問われていること
食後の呼吸困難の機序から、対策を導けるか。
しくみから理解する
食後に呼吸困難が強まる理由は複数ある。第一に、胃に食物が入って膨満すると、横隔膜が押し上げられて胸腔が狭くなり、換気が妨げられる。第二に、消化のために腹部内臓へ血流が集まり、酸素の需要が増える。第三に、食べる動作そのものが酸素を消費する。したがって、1回の量を減らして回数を増やせば、胃の膨満を抑え、1回あたりの負担を軽くできる。1日の総摂取量を保ちながら、呼吸への影響を減らす方法になる。
選択肢ごとの確認
食事を介助することは、この場面の解決にならない。介助しても胃の膨満は変わらず、呼吸困難は改善しない。またこの患者は自分で食べられており、介助は自立を損なう方向になる。
食後に短速呼吸を促すことは、逆効果になる。速く浅い呼吸では、死腔の換気の割合が増えて有効な換気量が減り、呼吸仕事量も増える。呼吸困難時には、口すぼめ呼吸(ゆっくり吐く)と腹式呼吸で、ゆっくり深い呼吸を促す。
食事以外の時間を安静に過ごすことは、活動性を下げ、廃用と食欲の低下を招く。呼吸困難があっても、動作を工夫しながら活動を続けることが、機能の維持につながる。安静を求める指導は、生活の質を下げる方向になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、機序に対応しない対応(介助)、逆効果の呼吸法(短速呼吸)、活動の制限(安静)で構成されている。「なぜ食後に苦しいのか」という機序から考えれば、胃の膨満を減らすことが直接の対策だと分かる。相談してきたのが訪問介護員である点も、この設問の要素になる。多職種から相談を受けたときに、実行可能で具体的な助言を返すことが、チームとしての支援になる。
理解を深める
呼吸器疾患のある人の食事の工夫を、まとめて挙げる。1回量を減らして回数を増やす(1日5〜6回)。エネルギー密度の高い食品を選ぶ(少量で栄養が摂れる)。噛みやすく飲み込みやすい形態にする(咀嚼も酸素を消費する)。炭酸飲料と、ガスを発生しやすい食品(豆類、いも類、炭酸)を控える(腹部の膨満を増やす)。食事の前に休息し、呼吸を整える。姿勢を整える(前かがみを避け、上体を起こす)。食事中も酸素を吸入する。食後すぐに横にならず、上体を起こして休む。調理と後片付けの負担を減らす(配食、簡便な調理、家族や介護サービス)。慢性の呼吸器疾患では、呼吸仕事量の増加によりエネルギー消費が高まる一方、食事による呼吸困難で摂取量が減るため、低栄養に陥りやすい。低栄養は呼吸筋の筋力低下を招き、さらに呼吸困難を悪化させるという悪循環を作る。したがって、食べられる工夫を重ねることが、呼吸機能の維持にも直結する。
間違えやすい考え方
『助言』を問う型で、誤肢が機序に対応しない対応・逆効果の呼吸法・活動の制限である。食後の呼吸困難の機序で切る。
5分で振り返る
①食後の呼吸困難は、胃の膨満による横隔膜の挙上、消化のための酸素需要の増加、食べる動作の負担による。②1回量を減らし回数を増やす(1日5〜6回)ことで、総量を保ちつつ負担を減らす。③短速呼吸は死腔の割合を増やし逆効果、口すぼめ呼吸でゆっくり吐く。④食事以外の安静は廃用と食欲低下を招く。⑤エネルギー密度の高い食品、噛みやすい形態、ガスを発生する食品を控える。⑥食事中も酸素を吸入し、食後は上体を起こして休む。⑦低栄養→呼吸筋の低下→呼吸困難の悪循環に注意。
1分チェック
- 食後の呼吸困難には。→ 1回量を減らして回数を増やす(胃の膨満を抑える)。
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