次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(44歳、男性)は、午前9時に発生した震度5強の地震で自宅の2階から慌てて逃げる際に階段から転落した。午前9時30分、Aさんは殿部に激しい痛みが出現し動けなくなったため、救急車で搬送され入院した。身体所見:体温36.8℃、呼吸数22/分、脈拍100/分、血圧76/38mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95%(roomair)。検査所見:赤血球300万/μL、Hb9.0g/dL、CRP0.3mg/dL、Na140mEq/L、K4.0mEq/L、濃縮尿、尿比重1.020、尿潜血(+)。
午前11 時、A さんの母親B さん(80 歳)は、余震が続くため避難する途中で転倒 し、歩行が困難となった。B さんは、孫のC さん(14 歳、女子)に付き添われて救 急車で病院に搬送された。B さんは、意識は清明で、腰痛を訴えている。バイタル サインは、呼吸数16/分、脈拍90/分、血圧135/80 mmHg で、排尿によって着衣 が濡れている。 外来で診察を待っている間に、B さんの隣にいるC さんがうずくまっているの を看護師が発見した。C さんのバイタルサインは、呼吸数36/分、脈拍110/分、血 圧94/40 mmHg で、手のしびれ、動悸を訴えている。 看護師の初期対応で優先度が高いのはどれか。
公式正答:4
解説
腰痛を訴える80歳女性の付き添いで来た14歳の孫が、待合室でうずくまっているのを発見した場面での優先度を問う。孫の経皮的動脈血酸素飽和度の測定である。
この問題で問われていること
目の前で起きた変化に、生命の評価で応じられるか。
しくみから理解する
うずくまるという状態は、それまで問題のなかった人に起きた新たな変化になる。原因としては、腹痛、胸痛、呼吸困難、めまい、過換気、低血糖、そして心理的な反応が考えられる。14歳という年齢と、地震という状況、祖母の受傷という体験を踏まえると、過換気症候群や急性ストレス反応の可能性もあるが、身体的な原因を除外しないまま心理的なものと決めつけることはできない。まず生命に関わる状態かを評価する必要があり、酸素飽和度の測定は、呼吸と循環の状態を短時間で非侵襲的に把握できる方法になる。
選択肢ごとの確認
祖母の着衣の交換は、失禁による不快と皮膚への影響を考えると必要な援助になる。しかし、目の前で新たに生じた変化への対応が優先される。着衣の交換は、状態が確認された後に行える。
祖母の既往歴の確認も必要な情報収集だが、緊急性がない。
孫の四肢の保温は、ショックが疑われる場合には意味を持つ。しかし、まず状態を評価しなければ、保温が適切かどうかも判断できない。評価が介入に先立つ。
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混同しやすいポイント
『目の前で新たに生じた変化を、まず評価する』という原則になる。誤肢1と2は、祖母への対応で緊急性がない。誤肢3は、評価の前に介入している。災害時は、多数の要請が重なり、注意が分散しやすい状況になるが、生命に関わる変化を見逃さないことが最優先になる。付き添いの家族が体調を崩すことも、災害時にはよくある事態であり、患者だけでなく付き添う人にも目を向ける必要がある。
理解を深める
災害時には、直接の被災による外傷だけでなく、間接的な健康問題が生じる。過換気症候群、急性ストレス反応、持病の悪化(喘息発作、心疾患、糖尿病、てんかん)、服薬の中断による症状、脱水、そして低体温がある。とくに子どもは、自分の不調を言葉で表現できないことがあり、また周囲の大人が動揺しているなかで我慢してしまうこともある。うずくまる、泣かない、動かない、無表情といった変化は、身体的にも心理的にも重要なサインになる。この事例では、14歳の孫が、地震を経験し、祖母が転倒して救急搬送されるという事態に付き添い、慣れない病院で待たされている。身体的な評価に続いて、心理的な支援も必要になる。安全であることを伝え、そばにいて、必要なら家族に連絡し、休める場所を用意する。付き添いの家族への配慮は、災害時に限らず、日常の医療の場でも見落とされやすい視点になる。
間違えやすい考え方
優先度を問う型で、誤肢が緊急性のない対応と評価前の介入である。目の前の新たな変化を評価するという原則で切る。
5分で振り返る
①目の前で新たに生じた変化は、まず生命に関わるかを評価する。②酸素飽和度は呼吸と循環を短時間で非侵襲的に把握できる。③心理的な反応と決めつける前に身体的な原因を除外する。④評価は介入(保温)に先立つ。⑤祖母の着衣交換と既往歴の確認は緊急性がない。⑥災害時は外傷以外に、過換気、急性ストレス反応、持病の悪化、服薬中断、脱水が生じる。⑦子どもは不調を表現できず我慢することがあり、うずくまる・動かない・無表情が重要なサインになる。
1分チェック
- 付き添いの人がうずくまっていたら。→ まず生命に関わる状態かを評価する(酸素飽和度の測定)。
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