次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(44歳、男性)は、午前9時に発生した震度5強の地震で自宅の2階から慌てて逃げる際に階段から転落した。午前9時30分、Aさんは殿部に激しい痛みが出現し動けなくなったため、救急車で搬送され入院した。身体所見:体温36.8℃、呼吸数22/分、脈拍100/分、血圧76/38mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95%(roomair)。検査所見:赤血球300万/μL、Hb9.0g/dL、CRP0.3mg/dL、Na140mEq/L、K4.0mEq/L、濃縮尿、尿比重1.020、尿潜血(+)。
B さんは、歩行が困難であったため入院したが、検査の結果、腰部の打撲のみで 他に身体的な問題を認めなかった。日中は眠っていることが多く、夕方になると落 ち着かなくなり、大声で家族を呼んだり、家に帰ろうとすることがあった。入院4 日後、B さんは少しずつ歩けるようになり、退院が決まった。自宅が半壊状況のた め、福祉避難所に行くことになった。一緒に福祉避難所に行くA さんの妻(42 歳) は看護師に「義母は、入院前は大声を出すことはありませんでした。避難所で人に 迷惑をかけるのではないかと心配です」と相談した。 看護師のB さんに関する助言内容で適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
入院中に昼夜逆転と夕方の落ち着かなさ、大声を出す様子がみられた80歳女性が、自宅半壊のため福祉避難所へ行くことになり、嫁が心配を訴えた場面での助言を問う。福祉避難所では昼間の覚醒を促すことである。
この問題で問われていること
症状の背景を推定し、環境の調整として何ができるかを判断できるか。
しくみから理解する
この患者は、身体的な問題がないにもかかわらず、入院後に昼夜逆転と夕方の不穏が現れている。入院前にはこうした様子がなかったことから、環境の変化と入院という状況によって生じたせん妄が考えられる。せん妄への対応の基本は、誘因を取り除き、生活リズムを整えることになる。日中に覚醒を促し、活動と光を確保すれば、夜間の睡眠が改善して昼夜逆転が是正され、夕方の不穏(夕暮れ症候群)も軽減が期待できる。福祉避難所でも実行可能な、具体的で有効な助言になる。
選択肢ごとの確認
人との交流を少なくすることは、逆効果になる。交流と活動は、日中の覚醒を保ち、見当識の手がかりになり、せん妄の改善に働く。交流を減らせば刺激が不足し、昼間に眠り、夜に活動するという逆転が固定される。「迷惑をかけるのでは」という嫁の心配に応えて交流を減らす方向は、症状を悪化させる。
退院の延期を相談することは、この場面の解決にならない。身体的な問題はなく、歩行も回復しており、入院を続ける医学的な理由がない。むしろ入院の継続がせん妄を長引かせる要因にもなる。環境が変わることで改善する可能性もある。
すぐに精神科を受診することは、まず環境の調整を試みる前の対応としては早い。せん妄は、誘因を取り除くことで改善することが多く、まずそれを試みる。薬物療法が必要な場合もあるが、第一選択ではない。また避難所という状況で、直ちに受診できるとも限らない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、刺激を減らす、入院を続ける、専門機関へ回す、という3つの方向になっている。せん妄への対応の原則(誘因の除去、生活リズムの調整、見当識の手がかり、活動と交流の確保)を持っていれば、いずれも適さないと分かる。とくに選択肢2は、家族の心配に沿うように見えて症状を悪化させる、という構図になっている。
理解を深める
災害時の避難所では、高齢者にせん妄が生じやすい条件が揃う。環境の急激な変化、睡眠の障害(明るさ、音、寝具)、脱水、感染、栄養の不足、服薬の中断、活動量の低下、そして見当識の手がかりの喪失である。福祉避難所は、高齢者、障害のある人、妊産婦、乳幼児といった配慮を要する人のために設置され、一般の避難所より環境が整えられているが、それでも自宅とは異なる。対応としては、日中の光と活動の確保、夜間の環境(照明、音)の調整、水分と食事の確保、服薬の継続、時計とカレンダーの設置、慣れ親しんだ物の持参、そして役割を持ってもらうことがある。家族への説明も重要で、この症状が病気の悪化や認知症の発症ではなく、環境によって生じている可能性が高いこと、そして環境が整えば改善しうることを伝えれば、家族の不安と、周囲への気兼ねが和らぐ。避難所の運営者への情報提供と協力の依頼も、看護師が担える役割になる。
間違えやすい考え方
『適切な助言』を問う型で、誤肢が刺激を減らす・入院を続ける・専門機関へ回すである。せん妄への対応の原則で切る。
5分で振り返る
①入院後に生じた昼夜逆転と夕方の不穏はせん妄を疑う(入院前にはなかった)。②対応は誘因の除去と生活リズムの調整。日中の覚醒、活動、光の確保。③交流を減らすと刺激が不足し逆転が固定される。④入院の継続はせん妄を長引かせうる。⑤薬物療法は第一選択ではない。⑥避難所ではせん妄の条件が揃う(環境の変化、睡眠障害、脱水、服薬中断、活動低下)。⑦家族には、病気の悪化ではなく環境によるもので改善しうると伝える。
1分チェック
- 避難所での昼夜逆転と不穏には。→ 昼間の覚醒を促す(活動と光でリズムを整える)。
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