手術予定の患者が服用している場合、安全のために術前の休薬を検討するのはど れか。
公式正答:2
解説
手術予定の患者が服用している場合、安全のために術前の休薬を検討するものを問う。抗血小板薬である。
この問題で問われていること
薬剤の作用から、手術時に問題となるものを導けるか。
しくみから理解する
抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレルなど)は、血小板の凝集を抑えて血栓の形成を防ぐ薬である。この作用は、手術時には出血が止まりにくいという形で現れる。アスピリンは血小板のシクロオキシゲナーゼを不可逆的に阻害するため、その効果は血小板の寿命(7〜10日)にわたって続く。したがって、術式と出血のリスクに応じて術前の休薬が検討される。休薬の期間は薬剤ごとに異なり(アスピリン、クロピドグレル、プラスグレル、チクロピジン、シロスタゾールでそれぞれ目安が違う)、一律の日数では決まらないため、処方医と術者の指示に従う。ただし、休薬によって血栓症(心筋梗塞、脳梗塞、ステント血栓症)のリスクが高まるため、継続と休薬の利益と不利益を比較して個別に判断される。冠動脈ステント留置後の早期などでは、継続したまま手術を行うこともある。
選択肢ごとの確認
鉄剤は、鉄欠乏性貧血の治療薬で、出血傾向を招くことはない。むしろ術前に貧血を改善しておくことは、手術の安全性を高める。休薬の対象にならない。
冠血管拡張薬(硝酸薬など)は、冠動脈を拡張して狭心症の症状を抑える。休薬すると狭心症発作のリスクが高まるため、周術期も継続することが多い。
プロトンポンプ阻害薬は、胃酸の分泌を抑える薬である。術前の絶食期間や、周術期のストレス潰瘍の予防としても用いられ、休薬の対象にならない。
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混同しやすいポイント
『出血のリスクを高める薬か』という基準で判断する。抗血小板薬と抗凝固薬(ワルファリン、直接経口抗凝固薬)が該当する。誤肢はいずれも出血に関わらない薬剤になる。ただし、休薬すれば血栓のリスクが上がるという裏返しがあるため、一律に休薬するのではなく、個別に判断されるという点も併せて理解しておく。
理解を深める
周術期に管理が必要な薬剤は他にもある。ワルファリンは、半減期を考えて3〜5日前に中止し、必要に応じてヘパリンへの置換(ヘパリンブリッジ)を行う。直接経口抗凝固薬は、腎機能と術式に応じて1〜4日前に中止する。ビグアナイド系の糖尿病薬(メトホルミン)は、ヨード造影剤との併用や周術期の腎機能の変動により乳酸アシドーシスのリスクがあるため、休薬が指示される。インスリンと経口血糖降下薬は、絶食に伴う低血糖を避けるため、当日の量を調整する。副腎皮質ステロイドを長期に服用している患者では、手術という強いストレスに対して副腎が反応できず急性副腎不全を起こしうるため、逆に増量して投与する(ステロイドカバー)。降圧薬の多くは継続するが、レニン・アンジオテンシン系に作用する薬は麻酔導入時の血圧低下を招くため当日は中止することがある。看護師は、持参薬を正確に把握し、休薬の指示が確実に伝わり実行されているかを確認する役割を担う。
間違えやすい考え方
休薬の対象を問う型で、誤肢が出血に関わらない薬剤である。出血のリスクを高めるかで切る。
5分で振り返る
①抗血小板薬は血小板凝集を抑え、術中術後の出血を助長する。②アスピリンは不可逆的に作用し、血小板の寿命(7〜10日)にわたり効果が続く。③休薬の期間は薬剤ごとに異なり、一律の日数では決まらない。血栓症のリスクと比較して個別に判断し、処方医と術者の指示に従う。④ワルファリンは3〜5日前に中止しヘパリンへ置換することがある。⑤ビグアナイド系は乳酸アシドーシスのリスクで休薬。⑥ステロイド長期服用者は逆に増量する(ステロイドカバー)。⑦鉄剤・冠血管拡張薬・プロトンポンプ阻害薬は休薬の対象にならない。
1分チェック
- 術前に休薬を検討するのは。→ 抗血小板薬(出血が止まりにくくなる)。
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