創傷処置について適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
創傷処置について適切なものを問う。感染徴候のない創傷の消毒は不要であることである。
この問題で問われていること
湿潤環境による治癒の考え方を理解しているか。
しくみから理解する
現在の創傷管理では、感染徴候のない創に対して日常的な消毒は行わない。消毒薬は細菌だけでなく、創傷治癒に必要な線維芽細胞や表皮細胞といった正常な細胞も傷害するため、治癒を遅らせる。代わりに、生理食塩水または水道水で洗浄して異物と壊死組織を除去し、適切なドレッシング材で湿潤環境を保つ。湿潤環境では、細胞の遊走と増殖が促され、上皮化が速く進む。かつての「消毒して乾かす」という管理は、現在は推奨されない。
選択肢ごとの確認
ドレッシング材は、創部の辺縁ちょうどではなく、創縁より2〜3cm程度大きく貼付する。周囲の健常な皮膚に密着させることで、滲出液の漏れを防ぎ、湿潤環境を保てる。辺縁に合わせると、周囲から浸出液が漏れ、細菌が侵入しやすくなる。
肉芽形成の時期に強い水圧をかけると、新しく形成された脆弱な肉芽組織を損傷する。洗浄は、感染徴候がなければ穏やかな圧で行う。強い水圧が必要になるのは、汚染がひどい場合や壊死組織が付着している場合に限られる。
テープは、皮膚から垂直に引き上げるのではなく、皮膚と平行に近い角度で、貼付面を押さえながらゆっくり剥がす。垂直に剥がすと、表皮が引き上げられて剥離し、スキンテア(皮膚裂傷)を起こす。とくに高齢者では表皮と真皮の結合が弱く、容易に裂傷を生じる。粘着剥離剤を用いることも有効になる。
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混同しやすいポイント
誤肢はいずれも、創や皮膚を傷つける方向の操作になっている。大きく貼らない、強い水圧をかける、垂直に剥がす。創傷管理の原則は、治癒を妨げない、余計な損傷を加えない、湿潤環境を保つ、という点にある。この原則から、それぞれの誤りを判断できる。
理解を深める
創傷治癒の過程は、炎症期(受傷から数日、好中球とマクロファージが異物と壊死組織を処理する)、増殖期(線維芽細胞がコラーゲンを産生し、血管新生が起こり、創縁から上皮化が進む)、成熟期(コラーゲンが再構築され瘢痕が成熟する)と進む。治癒を妨げる因子としては、感染、壊死組織、異物、乾燥、過剰な滲出液、繰り返す外力(圧迫、ずれ、摩擦)、低栄養(とくに蛋白質、ビタミンC、亜鉛)、血流の障害、糖尿病、副腎皮質ステロイドの使用、加齢、喫煙がある。ドレッシング材は、滲出液の量と創の状態に応じて選ぶ。滲出液が多ければ吸収性の高いもの、少なければ湿潤を保つもの、感染があれば交換頻度を上げて観察できるものを用いる。スキンテアの予防としては、皮膚の保湿、外力の回避、適切なテープの選択と剥離、環境の整備(ベッド柵の保護)、そして高リスク者(高齢者、ステロイド使用者、浮腫のある人)の把握が挙げられる。
間違えやすい考え方
『適切なのはどれか』型で、誤肢がすべて創や皮膚を傷つける操作である。治癒を妨げないという原則で切る。
5分で振り返る
①感染徴候がなければ消毒しない(消毒薬は正常な細胞も傷害する)。②洗浄(生理食塩水または水道水)と湿潤環境の保持が基本。③ドレッシング材は創縁より2〜3cm大きく貼る。④肉芽形成期に強い水圧をかけない。⑤テープは皮膚と平行にゆっくり剥がす(垂直はスキンテアを招く)。⑥治癒過程は炎症期→増殖期→成熟期。⑦妨げる因子=感染、壊死組織、乾燥、外力、低栄養、血流障害、糖尿病、ステロイド、喫煙。
1分チェック
- 感染徴候のない創の消毒は。→ 不要(洗浄と湿潤環境の保持が基本)。
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