術後の創傷治癒が遅延する因子となる検査値はどれか。
公式正答:1
解説
術後の創傷治癒が遅延する因子となる検査値を問う。アルブミン2.2g/dLである。
この問題で問われていること
検査値を基準と照らし、創傷治癒への影響を判断できるか。
しくみから理解する
血清アルブミンの基準値は約3.8〜5.2g/dLで、2.2g/dLは著しい低値になる。アルブミンは肝で合成される蛋白で、半減期は約20日になる。ただし炎症により低下する急性期蛋白でもあり、体液の分布にも影響されるため、栄養状態や蛋白の貯蔵量を直接に測る指標としては用いない。それでも、低アルブミン血症が術後の治癒不良と関連することは繰り返し示されている。創傷治癒には、コラーゲンの合成をはじめとして大量の蛋白質が必要であり、低アルブミン血症の状態では、線維芽細胞の増殖とコラーゲンの産生が滞り、治癒が遅れる。加えて、膠質浸透圧の低下による浮腫が組織への酸素と栄養の供給を妨げ、免疫機能の低下が感染のリスクを高める。
選択肢ごとの確認
推算糸球体濾過量62mL/分/1.73平方メートルは、GFR区分では60〜89にあたり、正常または軽度低下と呼ばれる(軽度から中等度低下は45〜59の区分になる)。またこの区分に入ることと慢性腎臓病の診断は別で、蛋白尿などの腎障害の所見がなければ診断には至らない。いずれにせよ、創傷治癒を直接に遅らせる水準ではない。高度の腎不全(透析を要する状態)では、尿毒症物質と栄養障害により治癒が遅れるが、この値はそこまで至らない。
動脈血酸素分圧88Torr(室内気)は、基準範囲(おおむね80〜100Torr)内にある。創傷治癒には十分な酸素が必要だが、この値であれば問題にならない。60Torrを下回るような低酸素血症では、コラーゲンの合成が障害される。
ヘモグロビンA1c 5.5%は正常範囲にある。糖尿病で血糖のコントロールが不良な場合(ヘモグロビンA1cが高値)は、好中球の機能低下と微小血管障害により感染しやすく治癒が遅れるが、この値であれば問題にならない。
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混同しやすいポイント
4つの検査値を、それぞれの基準と照らして判定する作業になる。アルブミン2.2(基準3.8〜5.2、著明な低値)、推算糸球体濾過量62(GFR区分では60〜89で、正常または軽度低下)、動脈血酸素分圧88(正常)、ヘモグロビンA1c 5.5(正常)。基準値を知らなければ判定できない設問であり、主要な検査値の基準を覚えていることが前提になる。
理解を深める
創傷治癒に必要な栄養素を整理する。蛋白質(コラーゲンの材料、免疫機能)、エネルギー(不足すると蛋白が異化される)、ビタミンC(コラーゲンの合成に必須。欠乏で創が開く)、ビタミンA(上皮化と免疫)、亜鉛(細胞の増殖と蛋白合成)、鉄(酸素運搬とコラーゲン合成)、アルギニンとグルタミン(免疫と組織修復)。術前から栄養状態を評価し、低栄養があれば介入することが、術後の合併症を減らす。評価は、体重の変化、食事摂取量、筋量(上腕周囲長、下腿周囲径)、身体所見、そして主観的包括的評価によって行う。血清アルブミンとトランスサイレチンは炎症により低下する急性期蛋白で、体液の分布にも影響されるため、栄養状態を直接に測る指標としては用いない。ただし予後との関連は強く、低値は術後の合併症の危険を示す所見になる。看護では、食事の摂取量を実際に確認し、食べられない理由(食欲、嚥下、口腔内、疼痛、悪心、環境)を探り、栄養サポートチームと連携する。「食べていますか」ではなく、何をどれだけ食べたかを具体的に把握することが出発点になる。
間違えやすい考え方
検査値を判定する型で、誤肢がすべて基準範囲内か軽度の異常である。基準値と照らして切る。
5分で振り返る
①血清アルブミンの基準は約3.8〜5.2g/dL。2.2は著明な低値で創傷治癒を遅らせる。②半減期は約20日。ただし炎症で低下する急性期蛋白であり、栄養状態を直接に測る指標としては用いない。低栄養の評価は体重の変化、摂取量、筋量、身体所見による。③低アルブミン血症は、コラーゲン合成の低下、浮腫による酸素供給の低下、免疫機能の低下を招く。④推算糸球体濾過量62はGFR区分の60〜89(正常または軽度低下)で、区分に入ることと慢性腎臓病の診断は別。動脈血酸素分圧88とヘモグロビンA1c 5.5は正常。⑤治癒に必要な栄養素=蛋白質、エネルギー、ビタミンC・A、亜鉛、鉄。⑥トランスサイレチンも半減期は短いが、同じく炎症で低下するため、栄養状態そのものの指標としては用いない。⑦食事摂取量を具体的に把握する。
1分チェック
- 創傷治癒を遅らせる検査値は。→ アルブミン2.2g/dL(基準3.8〜5.2、著明な低栄養)。
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