慢性腎臓病〈chronic kidney disease〉にお いてリンの代謝障害によって生じる症状はどれか。
公式正答:1
解説
慢性腎臓病においてリンの代謝障害によって生じる症状を問う。骨痛である。
この問題で問われていること
リンとカルシウムの代謝が、腎機能とどう関わるかを説明できるか。
しくみから理解する
腎機能が低下すると、リンの排泄が減って血中リン濃度が上がる。同時に、腎での活性型ビタミンDの産生が低下し、腸管からのカルシウムの吸収が減って低カルシウム血症になる。高リン血症と低カルシウム血症は、いずれも副甲状腺ホルモンの分泌を刺激する(二次性副甲状腺機能亢進症)。副甲状腺ホルモンは骨からカルシウムを動員するため、骨吸収が進み、骨がもろくなって骨痛、骨折、骨変形をきたす。この一連の病態を慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常という。
選択肢ごとの確認
貧血も慢性腎臓病の重要な合併症だが、原因はリンではなくエリスロポエチンの産生低下になる。腎の尿細管周囲の細胞で作られるエリスロポエチンが減り、骨髄での赤血球産生が低下する(腎性貧血)。治療はエリスロポエチン製剤と鉄の補充になる。
浮腫は、ナトリウムと水の排泄障害、および低アルブミン血症(ネフローゼ症候群を伴う場合)による。リンの代謝障害によるものではない。
不整脈は、主にカリウムの排泄障害による高カリウム血症で生じる。高カリウム血症は心停止に至りうる緊急の病態で、心電図でテント状T波、P波の消失、QRS幅の延長がみられる。リンの直接の作用ではない。
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混同しやすいポイント
慢性腎臓病の合併症を、原因となる物質ごとに整理する。リン→骨・ミネラル代謝異常(骨痛、骨折、血管の石灰化)。カリウム→不整脈、心停止。ナトリウムと水→浮腫、高血圧、心不全。エリスロポエチン→腎性貧血。尿素窒素などの尿毒素→尿毒症症状(食欲不振、悪心、意識障害、心膜炎)。酸→代謝性アシドーシス。この対応表を持っておけば、症状から原因を、原因から症状を導ける。
理解を深める
高リン血症の管理は、食事療法(リンを多く含む食品の制限。乳製品、加工食品に含まれる無機リンはとくに吸収率が高い)と、リン吸着薬(食事とともに服用して腸管でリンと結合させ吸収を防ぐ)による。服薬のタイミングが食直前または食直後である理由は、この機序による。血管の石灰化は、心血管疾患のリスクを高めるため、リンの管理は骨だけでなく生命予後にも関わる。慢性腎臓病の管理全体としては、血圧の管理、蛋白質の制限(ただし過度の制限は低栄養を招く)、塩分の制限、カリウムの管理(高カリウム血症があるときや進行した病期で、生の果物と野菜、いも類を制限し、野菜は茹でこぼす。早期では、野菜と果物の摂取がむしろ勧められる)、水分の管理(乏尿、浮腫、心不全などの所見がなければ通常は不要で、一律に制限するとかえって脱水を招く)、そして原疾患(糖尿病、腎炎)の治療がある。いずれの制限も一律ではなく、病期と検査値・症状に応じて決めるもので、管理栄養士による個別の栄養指導に基づく。透析導入の時期については、腎機能だけでなく症状と生活の状況を含めて判断される。看護では、長期にわたる自己管理を支えることが中心になり、制限を守れないことを責めるのではなく、生活の中で実行できる方法を一緒に探す姿勢が求められる。
間違えやすい考え方
症状の原因を問う型で、誤肢が別の物質による合併症である。原因物質と症状の対応表で切る。
5分で振り返る
①腎機能低下→リンの排泄減少(高リン血症)+活性型ビタミンDの産生低下(低カルシウム血症)。②両者が副甲状腺ホルモンの分泌を刺激(二次性副甲状腺機能亢進症)。③骨吸収が進み骨痛・骨折・骨変形。④貧血はエリスロポエチンの産生低下、浮腫はナトリウムと水の貯留、不整脈は高カリウム血症。⑤高リン血症の管理は食事とリン吸着薬(食直前・食直後に服用)。⑥血管の石灰化は心血管リスクを高める。⑦カリウム制限では野菜を茹でこぼす。
1分チェック
- 慢性腎臓病でリンの代謝障害が起こすのは。→ 骨痛(二次性副甲状腺機能亢進症による骨吸収)。
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