閉経に伴うエストロゲンの低下で生じるのはどれか。
公式正答:2
解説
閉経に伴うエストロゲンの低下で生じるものを問う。腟粘膜の萎縮である。
この問題で問われていること
エストロゲンの作用から、欠乏したときに何が起こるかを導けるか。
しくみから理解する
エストロゲンは、腟と外陰の粘膜を厚く保ち、腟の上皮細胞にグリコーゲンを蓄えさせる。このグリコーゲンが、腟内の常在菌であるデーデルライン桿菌によって乳酸に分解され、腟内を酸性に保つ(腟の自浄作用)。閉経によりエストロゲンが低下すると、粘膜が薄く萎縮し、分泌が減って乾燥し、腟内のpHが上がって感染しやすくなる。その結果、性交痛、掻痒、灼熱感、萎縮性腟炎、そして尿路症状(頻尿、尿意切迫、繰り返す尿路感染)が生じる。これらをまとめて閉経関連泌尿生殖器症候群と呼ぶ。
選択肢ごとの確認
骨量は増加ではなく減少する。エストロゲンは破骨細胞の活動を抑えて骨吸収を抑制しているため、低下すると骨吸収が骨形成を上回り、骨密度が急速に低下する。閉経後の数年間はとくに減少が速く、閉経後骨粗鬆症の原因になる。
脳血流量が増加するという事実はない。更年期には、自律神経の失調によるホットフラッシュ(顔面の紅潮、のぼせ、発汗)が生じるが、これは血管運動神経症状であり、脳血流量の増加を意味しない。
血中LDLコレステロールは減少ではなく増加する。エストロゲンは、肝でのLDL受容体の発現を促してLDLコレステロールを低下させ、HDLコレステロールを上昇させる作用を持つ。閉経後はこの作用が失われ、脂質異常症と動脈硬化のリスクが高まる。閉経前の女性が男性より心血管疾患が少ないのは、エストロゲンの保護作用によるとされる。
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混同しやすいポイント
エストロゲンの作用を一覧で持っておくと、欠乏時の変化がすべて導ける。①子宮内膜の増殖、②腟粘膜の維持と自浄作用、③骨吸収の抑制、④脂質の改善(LDL低下、HDL上昇)、⑤血管内皮の保護、⑥皮膚のコラーゲンの維持、⑦自律神経の安定。これらが失われることで、萎縮、骨粗鬆症、脂質異常症、動脈硬化、皮膚の変化、そして血管運動神経症状が生じる。誤肢は、骨・脂質について方向を逆にしたものになっている。
理解を深める
更年期症状への対応は、症状と本人の希望に応じて選択される。ホルモン補充療法は、ホットフラッシュ、発汗、腟の萎縮、骨粗鬆症の予防に有効だが、乳癌、血栓症、子宮内膜癌の既往などでは禁忌になり、リスクと利益を説明したうえで選択する。漢方薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、腟用のエストロゲン製剤や保湿剤も用いられる。生活面では、運動(骨と心血管の健康、気分の安定)、カルシウムとビタミンDの摂取、禁煙、適正体重、そして睡眠の確保が基本になる。更年期は、身体の変化に加えて、子どもの独立、親の介護、仕事の責任、夫婦関係の変化といった生活上の課題が重なる時期でもあり、症状を身体だけの問題として扱わない視点が必要になる。相談できる場があること自体が支えになるため、症状を訴えたときに「年齢のせい」で片付けないことが重要になる。
間違えやすい考え方
ホルモンの作用を問う型で、誤肢が骨と脂質の方向を逆にしたものである。エストロゲンの作用の一覧で切る。
5分で振り返る
①エストロゲンは腟粘膜を厚く保ち、グリコーゲンを介して腟内を酸性に保つ(自浄作用)。②低下すると粘膜が萎縮し乾燥、pHが上がり感染しやすくなる(閉経関連泌尿生殖器症候群)。③骨吸収を抑える作用が失われ骨量は減少する。④LDLコレステロールとアポBが明確に増加し、動脈硬化のリスクが高まる。HDLコレステロールの濃度はむしろわずかに上昇するという追跡研究があり、一律に減るわけではない。危険が高まる要因は、HDLの濃度よりも粒子の性状と機能の変化にあるとされる。変化には個人差が大きい。⑤ホットフラッシュは血管運動神経症状。⑥ホルモン補充療法は有効だが乳癌・血栓症の既往などで禁忌。⑦更年期は生活上の課題も重なる時期である。
1分チェック
- 閉経でエストロゲンが低下すると。→ 腟粘膜が萎縮する(骨量は減少、LDLは増加)。
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