A さん(55 歳、虚血性心疾患〈ischemic heart disease〉) は4人部屋に入院している。A さんは緊急で心臓カテーテル検査を行うことになった。日勤の担当看護師がA さんの検査のために 訪室すると、同室の右片麻痺のあるB さん(60 歳、脳出血〈cerebral hemorrhage〉)からト イレに行きたいと声をかけられた。 このときの看護師の行動で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
緊急の心臓カテーテル検査に向かう患者と、同室でトイレ介助を求める患者が同時にいる場面での対応を問う。その場から離れずに別の看護師を呼び、Bさんのトイレ介助を依頼することである。
この問題で問われていること
安全を確保しながら両方に対応する方法を選べるか。
しくみから理解する
この場面の要点は、どちらか一方を選ぶのではなく、両方の安全を確保する方法を探すことにある。転倒のリスクがある患者をその場に残して離れれば、転倒事故が起こりうる。一方、緊急の検査は遅らせられない。したがって、その場を離れずに応援を呼び、トイレ介助を他の看護師に依頼して、自分は検査への移送を続けるのが最も安全になる。医療は個人ではなくチームで提供されるものであり、一人で抱え込まないことが基本になる。
選択肢ごとの確認
ナースステーションに戻って相談することは、その場を離れることを意味する。相談すること自体は適切だが、離れている間に転倒が起こりうる。ナースコールや大声で応援を呼ぶ、あるいは近くの職員に声をかけるなど、その場を離れずに助けを求める方法を選ぶ。
Aさんに待つよう説明することは、緊急の検査を遅らせることになる。虚血性心疾患で緊急のカテーテル検査が必要な状況では、時間が予後を左右する。
Bさんに待つよう説明することは、転倒のリスクを放置することになる。トイレを我慢させることは、失禁による尊厳の傷つきや、我慢の末に一人で行動して転倒するという結果を招きうる。
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混同しやすいポイント
『どちらかを諦める』のではなく『両方を成り立たせる方法を探す』という発想が要点になる。誤肢2と3は、一方を犠牲にする選択であり、誤肢1は、その場を離れることでリスクを生む。応援を呼ぶという選択肢が、両方を満たす。日常の業務でも、複数の要請が重なる場面は頻繁にあり、そのときに一人で処理しようとするか、チームで対応するかが、安全を分ける。
理解を深める
優先順位の判断では、緊急性(生命に関わるか、時間の猶予はどれだけか)と、重要性(その人にとっての意味)を考える。ただし実務では、この設問のように、判断と同時に「人手を増やす」という選択肢が常にあることを忘れないことが重要になる。応援を求めることは、能力の不足を示すものではなく、安全を守る行為として組織的に推奨されるべきものになる。応援を求めやすい風土があるかどうかは、医療安全の水準に直結する。忙しそうな同僚に声をかけにくい、迷惑をかけたくない、といった心理が、事故の背景にあることは多い。チームとしては、業務量の可視化、リーダーによる調整、そして「困ったら呼ぶ」ことを当然とする文化づくりが対策になる。また、この事例のように、転倒のリスクがある患者については、あらかじめトイレ誘導の時間を決めておく、ナースコールを押しやすくしておく、といった予防的な関わりも重要になる。
間違えやすい考え方
『適切な対応』を問う型で、誤肢が一方を犠牲にするものと、その場を離れるものである。両方を成り立たせる方法で切る。
5分で振り返る
①どちらかを諦めるのではなく、両方を成り立たせる方法を探す。②その場を離れると転倒のリスクを放置することになる。③応援はその場を離れずに呼ぶ(ナースコール、大声、近くの職員)。④緊急の検査は遅らせられない、トイレの我慢も転倒と尊厳の問題を招く。⑤優先順位は緊急性と重要性で判断するが、同時に人手を増やす選択肢を忘れない。⑥応援を求めることは能力不足ではなく安全を守る行為。⑦転倒リスクのある患者には予防的な誘導とナースコールの工夫を行う。
1分チェック
- 同時に要請が重なったら。→ その場を離れず応援を呼び、両方の安全を確保する。
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