開心術後の心タンポナーデ cardiac tamponade で正しいのはどれか。2つ選べ。
公式正答:2・4
解説
開心術後の心タンポナーデで正しいものを2つ問う。心音減弱と中心静脈圧の上昇である。
この問題で問われていること
心囊内圧の上昇が血行動態に何をもたらすかを説明できるか。
しくみから理解する
心タンポナーデは、心囊内に液体(術後では血液)が急速に貯留し、心臓が外から圧迫されて拡張できなくなる病態である。心臓が十分に拡張できないため、静脈血が心臓へ戻れず、中心静脈圧が上昇する。同時に、心室が十分に満たされないため1回拍出量が減り、心拍出量が低下して血圧が下がる。心音は、心臓と胸壁の間に液体が介在するため減弱して聴こえにくくなる。これらを合わせたのがベックの三徴(血圧低下、頸静脈怒張=中心静脈圧上昇、心音減弱)になる。
選択肢ごとの確認
徐脈ではなく頻脈になる。1回拍出量の低下を補うため、交感神経が緊張して心拍数が増える。徐脈は末期の所見であり、初期は頻脈が特徴になる。
心拍出量は増加ではなく低下する。拡張が妨げられて心室が十分に満たされないためで、これが血圧低下とショックの原因になる。
吸気時に収縮期圧が10mmHg上昇するのではなく、低下する。これを奇脈という。健常者でも吸気時に収縮期圧はわずかに低下するが、心タンポナーデではこの低下が10mmHgを超えて著明になる。機序は、吸気により右心系への還流が増えると、拡張できない心囊の中で心室中隔が左室側へ偏位し、左室の充満がさらに妨げられることによる。上昇ではなく低下という方向を取り違えないようにする。
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混同しやすいポイント
誤肢3つが、いずれも方向を逆にしたものになっている。徐脈(正しくは頻脈)、心拍出量の増加(正しくは低下)、吸気時の収縮期圧の上昇(正しくは低下=奇脈)。「心臓が外から圧迫されて拡張できない」という一点から、すべての所見の方向が導ける。拡張できない→充満しない→拍出量が減る→血圧が下がる→代償で頻脈になる。同時に、戻れない血液が上流に溜まる→中心静脈圧が上がる。
理解を深める
開心術後の心タンポナーデは、心囊ドレーンの閉塞や凝血塊による排液の停止をきっかけに生じることがある。したがって、ドレーンの排液が急に減った、あるいは止まったという変化は、危険な徴候として報告する必要がある。あわせて、血圧の低下、頻脈、中心静脈圧の上昇、尿量の減少、末梢の冷感、意識レベルの変化、そして呼吸困難を観察する。診断は心臓超音波検査で心囊液の貯留と右房・右室の虚脱を確認する。治療は緊急のドレナージ(心囊穿刺または再開胸)で、時間との勝負になる。予防としては、ドレーンの管理(屈曲、閉塞、位置)を確実に行うことが重要になる。ミルキングの可否は施設の方針と医師の指示による。心タンポナーデは、開心術後だけでなく、外傷、心筋梗塞後の心破裂、大動脈解離、悪性腫瘍の心囊転移、尿毒症、感染でも生じる。急速に貯留する場合は少量(200mL程度)でも症状が出るのに対し、緩やかに貯留する場合は1L以上でも耐えられることがあり、貯留の速度が症状を左右する。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢がすべて方向の逆である。「拡張できない」という機序で切る。
5分で振り返る
①心タンポナーデ=心囊内の液体貯留で心臓が拡張できなくなる。②ベックの三徴=血圧低下、頸静脈怒張(中心静脈圧上昇)、心音減弱。③心拍出量は低下し、代償で頻脈になる(徐脈は末期)。④奇脈=吸気時に収縮期圧が10mmHg以上低下する。⑤術後はドレーンの閉塞が契機になるため、排液の急な減少は危険な徴候。⑥診断は心臓超音波、治療は緊急ドレナージ。⑦急速な貯留では少量でも症状が出る。
1分チェック
- 心タンポナーデの三徴は。→ 血圧低下、中心静脈圧上昇(頸静脈怒張)、心音減弱(ベックの三徴)。
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