A さん(55 歳、男性、会社員)は30 年の喫煙歴がある。会社の健康診断で高血圧 を指摘されて生活習慣の改善を勧められたが「週末にスポーツジムで運動するよう になったけれど、仕事が忙しくてこれ以上生活を変える自信はありません」と述べ た。 A さんの自己効力感を高める支援はどれか。2つ選べ。
公式正答:1・3
解説
30年の喫煙歴があり高血圧を指摘された55歳男性が、週末の運動は始めたがこれ以上変える自信はないと話した場面での対応を2つ問う。運動への取り組みを評価することと、取り組めそうな目標を一緒に設定することである。
この問題で問われていること
行動変容の段階に応じた働きかけを選べるか。
しくみから理解する
この患者は、既に運動を始めている。行動変容の段階でいえば、行動を開始した段階にあたる(実行期と維持期は続けている期間でおおむね6か月を境に分けるが、事例に期間の記載がないため、どちらとまでは確定できない)。同時に「これ以上は自信がない」と述べており、自己効力感が低下している。この段階で必要なのは、まず既にできていることを認めて自己効力感を高めること、そして本人が実行できると感じる範囲で次の目標を一緒に決めることになる。目標を医療者が決めて課すのではなく、本人が選ぶことで、実行の可能性と継続性が高まる。運動を始めた事実は、変わる力があることの証拠であり、それを本人に返すことが支援になる。
選択肢ごとの確認
職場の上司に配置転換を依頼することは、本人の同意なく職場へ介入するもので、権限も適切さも欠く。仕事の忙しさが背景にあるとしても、それを医療者が直接解決しようとするのは越権になる。
気持ちになるまで待つのは、既に行動を始めている人に対して不適切になる。無関心期であれば情報提供と関係づくりに留めることもあるが、この患者は実行期にあり、支援を求めている状況で待つことは機会を逃す。
脳血管疾患になる危険性が高いと説明することは、恐怖に訴える働きかけになる。短期的には行動を促すことがあるが、多くの場合、不安と反発、あるいは無力感を生み、継続にはつながらない。とくに、既に努力している人に対して危険を強調することは、「やっても足りない」というメッセージになり、自己効力感をさらに下げる。
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混同しやすいポイント
行動変容の段階(無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期)に応じた働きかけを整理する。無関心期=情報提供、関係づくり、本人が気づく機会。関心期=利点と障害を一緒に検討する。準備期=具体的な計画づくり、小さな目標。実行期=できていることの承認、障害への対処、継続の工夫。維持期=再発の防止、生活への定着。この患者は既に行動を始めた段階にあり、承認と次の目標の設定が適する。実行期と維持期の区別は続けている期間(おおむね6か月)によるが、事例に期間の記載がないためどちらとまでは決まらず、支援の内容はどちらでも変わらない。誤肢は、越権、待つこと、恐怖の喚起になっている。
理解を深める
生活習慣の改善を支援する際の原則は、いくつかある。一度に多くを求めない(喫煙、食事、運動、飲酒をすべて同時に変えることは困難)。本人が選ぶ(何から始めるかを本人に決めてもらう)。小さく具体的に(「運動する」ではなく「週末に30分歩く」)。できたことに注目する(できていない部分を数えない)。失敗を責めない(元に戻ることは過程の一部)。生活の文脈を理解する(仕事、家族、経済、価値観)。この患者の場合、喫煙は最大の危険因子であり、いずれ取り組む必要があるが、今の段階で運動に加えて禁煙まで求めることは、負担が大きすぎる可能性がある。運動が定着してから、本人の準備が整った時点で禁煙の話題を出す、という順序も選択肢になる。何を優先するかは、医学的な重要性だけでなく、本人が取り組めるかどうかで決まる。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢が越権・待つこと・恐怖の喚起である。行動変容の段階で切る。
5分で振り返る
①行動変容の段階=無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期。②この患者は既に行動を始めた段階で、自己効力感が低下している(実行期と維持期は継続期間でおおむね6か月を境に分けるが、事例に期間の記載はない)。③まずできていることを認め、本人が実行できる範囲で次の目標を一緒に決める。④職場への介入は越権。⑤既に行動している人を待つのは機会を逃す。⑥恐怖に訴える説明は反発と無力感を招き、努力している人の自己効力感を下げる。⑦一度に多くを求めず、本人が選び、小さく具体的に。
1分チェック
- 運動を始めた人への支援は。→ できていることを認め、次の目標を一緒に決める。
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