成人の糖尿病〈diabetes mellitus〉患者に対するペン型インスリン自己注射の指導で正しいのはどれ か。2つ選べ。
公式正答:1・2
解説
成人の糖尿病患者に対するペン型インスリン自己注射の指導で正しいものを2つ問う。「ブドウ糖を携帯してください」と「注射部位は毎回変えてください」である。
この問題で問われていること
手技と、低血糖への備えを両方押さえているか。
しくみから理解する
インスリン療法では低血糖が最も注意すべき副作用になる。低血糖の症状(発汗、動悸、手のふるえ、脱力、空腹感、そして進行すると意識障害)が現れたとき、直ちに糖分を補給できるよう、ブドウ糖を常に携帯する。ブドウ糖10gまたはブドウ糖を含む飲料を摂り、15分後に改善しなければ繰り返す。注射部位については、同じ場所に繰り返し注射すると、皮下組織が硬くなる(リポハイパートロフィー)。硬くなった部位では吸収が不安定になり、血糖のコントロールが乱れるため、毎回2〜3cmずつずらして注射する。
選択肢ごとの確認
注射後にもむのは誤りになる。もむと吸収が速まり、予期しない血糖の低下を招く。注射後は軽く押さえる程度にとどめる。
30度ではなく、皮膚に対して90度(垂直)で刺す。ペン型注入器の針は短く(4〜6mm程度)、垂直に刺すことで皮下組織に確実に届く。皮下脂肪が薄い人では、皮膚をつまんで刺す。45度で刺すのは、針が長い場合や、極端にやせている場合の対応になる。
未使用のインスリンは冷凍庫ではなく冷蔵庫(2〜8℃)で保管する。凍結すると変性して効果を失うため、絶対に凍らせてはならない。使用中のものは室温で保存してよい。室温で保存できる期間は製剤ごとに定められており、4週間のものと8週間のものがあるため、処方された製剤の添付文書と器具の説明に従う。夏季の車内や直射日光を避けることも伝える。
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混同しやすいポイント
誤肢3つは、いずれも実際に患者がやってしまいがちな誤りになっている。もむ、角度を浅くする、冷凍する。とくに冷凍は、薬剤を無効にしてしまう重大な誤りであり、保管方法の説明は必ず行う。手技の指導では、実際にやってみてもらい、次回に再確認することが定着につながる。
理解を深める
自己注射の指導内容は多岐にわたる。手技(手洗い、単位の設定、空打ち、注射、10秒程度待ってから抜く、針の廃棄)、部位(腹部、上腕、大腿、臀部。吸収速度は腹部が速い。同じ領域内でずらす)、保管、そして低血糖への対応。低血糖については、症状、対処法、そして起こりやすい場面(食事の遅れや欠食、いつもより多い運動、飲酒、入浴、シックデイ)を具体的に伝える。無自覚性低血糖(症状が出ないまま意識障害に至る)がある場合は、より頻回の血糖測定と、目標値の緩和が検討される。シックデイ(感染症などで体調を崩したとき)のルールも重要で、食事が摂れなくてもインスリンを自己判断で中止しない(とくに1型糖尿病では中止するとケトアシドーシスに至る)、水分を十分に摂る、血糖を頻回に測定する、主治医に連絡する、という内容を伝える。自動車の運転前には血糖を確認し、低血糖時は運転しないことも指導する。針は医療廃棄物であり、専用容器で医療機関に返却する。
間違えやすい考え方
2つ選べの型で、誤肢が実際にやりがちな誤りである。手技と低血糖への備えの両面で切る。
5分で振り返る
①低血糖に備えてブドウ糖を常に携帯する(症状が出たら10g摂り15分後に再評価)。②注射部位は毎回2〜3cmずらす(同じ場所は硬結して吸収が乱れる)。③注射後はもまない(吸収が速まる)。④針は皮膚に対して90度(垂直)で刺す。⑤未使用は冷蔵庫(2〜8℃)、凍結させない。使用中は室温でよいが、保存できる期間は製剤ごとに違う(4週間のものと8週間のものがある)ため、処方された製剤の指示に従う。⑥低血糖が起こりやすいのは欠食、運動、飲酒、入浴、シックデイ。⑦シックデイでも自己判断でインスリンを中止しない。
1分チェック
- インスリン自己注射の要点は。→ ブドウ糖の携帯(低血糖)と、注射部位を毎回変えること。
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