次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(43歳、男性、会社員)は、1か月前に右頸部の腫瘤を自覚した。大学病院で非Hodgkin〈ホジキン〉リンパ腫〈non-Hodgkinlymphoma〉と診断され化学療法導入目的で入院した。バイタルサイン:体温37.1℃、呼吸数16/分、脈拍84/分、整。身体所見:顔面に浮腫を認める。検査所見:Hb12.8g/dL、白血球6,400/μL、総蛋白7.6g/dL、アルブミン4.1g/dL。胸部造影CT:縦隔リンパ節腫大による上大静脈の圧迫を認める。
A さんの顔面の浮腫の原因で考えられるのはどれか。
公式正答:4
解説
非ホジキンリンパ腫で、縦隔リンパ節腫大による上大静脈の圧迫を認める43歳男性の、顔面の浮腫の原因を問う。上大静脈の圧迫である。
この問題で問われていること
浮腫の原因を、機序ごとに区別できるか。
しくみから理解する
上大静脈は、頭頸部と上肢からの静脈血を右心房へ運ぶ。この血管が、縦隔のリンパ節腫大や腫瘍によって外から圧迫されると、上流の静脈圧が上がり、頭頸部と上肢に浮腫が生じる。これが上大静脈症候群になる。顔面と頸部の浮腫、上肢の腫脹、頸静脈と胸壁の静脈の怒張、顔面の紅潮、そして進行すると呼吸困難、頭痛、意識障害をきたす。臥位や前かがみで悪化し、坐位で軽減するという特徴もある。この事例では、造影CTで圧迫が確認されており、機序が明示されている。
選択肢ごとの確認
発熱は浮腫の原因にならない。リンパ腫の全身症状(B症状:発熱、盗汗、体重減少)における発熱は、原因不明の38℃を超える発熱と定義されるため、体温37.1℃はこれに当たらない。いずれにせよ、発熱は顔面の浮腫を説明しない。
貧血も浮腫の原因ではない。ヘモグロビン12.8g/dLは男性としてやや低いが、著明な貧血ではなく、また貧血が顔面の浮腫を起こすことはない。
低蛋白血症ではない。総蛋白7.6g/dL、アルブミン4.1g/dLはいずれも正常範囲内になる。低アルブミン血症による浮腫であれば、膠質浸透圧の低下により全身性の浮腫となり、とくに重力の影響で下肢に強く現れる。顔面に限局する分布とも合わない。
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混同しやすいポイント
浮腫の原因を機序で分類する。静脈圧の上昇(心不全、静脈の閉塞・圧迫、深部静脈血栓症)、膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症:ネフローゼ症候群、肝硬変、低栄養)、血管透過性の亢進(炎症、アレルギー、熱傷)、リンパ流の障害(リンパ節郭清後、フィラリア)、そしてナトリウムと水の貯留(腎不全、薬剤)である。分布も手がかりになり、上大静脈の圧迫では上半身に限局する。この事例では、検査値が低蛋白血症を除外し、造影CTが圧迫を示している。
理解を深める
上大静脈症候群は、腫瘍による圧迫が原因の大半を占め、肺癌(とくに小細胞癌)と悪性リンパ腫が主な原疾患になる。腫瘍の増大に伴って進行するため、緊急性を伴う場合がある(オンコロジック・エマージェンシー)。気道の圧迫による呼吸困難、脳浮腫による意識障害が生じれば、直ちに対応が必要になる。治療は、原疾患に対する化学療法または放射線療法で、リンパ腫では化学療法がよく奏効する。症状の緩和としては、上半身を挙上した体位(静脈還流を助ける)、酸素投与、ステロイド、利尿薬、そして必要に応じてステント留置がある。看護では、呼吸状態、意識、浮腫の程度と分布、頸静脈と胸壁静脈の怒張を観察する。上肢からの静脈路は、投与した薬剤が上大静脈を経て心臓へ戻る経路を閉塞に妨げられるため、下肢または大腿からの経路を用いる。血圧の測定はこれとは別で、動脈の圧を測るものであるから、静脈の閉塞そのもので不正確になるわけではない。ただし上肢に著しい浮腫があると、マンシェットによる測定の精度が落ちるため、浮腫の程度に応じて下肢での測定を検討する。締めつける衣類を避け、上半身挙上の体位を保つことも、看護としてできる対応になる。
間違えやすい考え方
浮腫の原因を問う型で、誤肢が別の機序と検査値で除外できるものである。機序と分布で切る。
5分で振り返る
①上大静脈は頭頸部と上肢からの静脈血を集める。圧迫されると上半身に浮腫が生じる。②症状=顔面と頸部の浮腫、上肢の腫脹、頸静脈と胸壁静脈の怒張、顔面紅潮、進行で呼吸困難と意識障害。③臥位と前かがみで悪化、坐位で軽減。④原因の大半は腫瘍(肺癌、悪性リンパ腫)。⑤総蛋白とアルブミンが正常なら低蛋白血症は否定。⑥浮腫の機序=静脈圧上昇、膠質浸透圧低下、透過性亢進、リンパ流障害、ナトリウム貯留。⑦上肢からの静脈路は避け、下肢または大腿を用いる(薬剤が閉塞部を通る経路になるため)。血圧の測定は動脈の圧であり閉塞そのものの影響は受けないが、上肢に著しい浮腫があれば精度が落ちるので下肢での測定を検討する。
1分チェック
- 縦隔リンパ節腫大による顔面浮腫は。→ 上大静脈の圧迫(上大静脈症候群)。
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