次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(43歳、男性、会社員)は、1か月前に右頸部の腫瘤を自覚した。大学病院で非Hodgkin〈ホジキン〉リンパ腫〈non-Hodgkinlymphoma〉と診断され化学療法導入目的で入院した。バイタルサイン:体温37.1℃、呼吸数16/分、脈拍84/分、整。身体所見:顔面に浮腫を認める。検査所見:Hb12.8g/dL、白血球6,400/μL、総蛋白7.6g/dL、アルブミン4.1g/dL。胸部造影CT:縦隔リンパ節腫大による上大静脈の圧迫を認める。
A さんはR-CHOP 療法(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、 ビンクリスチン、プレドニゾロン)を受けた。 A さんのR-CHOP 療法の初日に生じる可能性がある合併症はどれか。
公式正答:5
解説
非ホジキンリンパ腫に対するR-CHOP療法の初日に生じる可能性がある合併症を問う。腫瘍崩壊症候群である。
この問題で問われていること
合併症を、出現する時期で区別できるか。
しくみから理解する
腫瘍崩壊症候群は、化学療法によって多量の腫瘍細胞が短時間に破壊され、細胞内の成分が血中へ放出されることで生じる。高尿酸血症(核酸の分解)、高カリウム血症、高リン血症、そしてリンとカルシウムが結合することによる低カルシウム血症をきたす。その結果、急性腎障害、不整脈、けいれん、そして心停止に至りうる。治療の開始後、数時間から48時間以内に生じることが多いため初日から警戒が必要になるが、この窓に限られるわけではない。増殖の速い腫瘍では治療の開始前に自然に生じることがあり、治療後は1週間程度まで起こりうる。治療前の検査値も含めて監視する。腫瘍量が多い、増殖の速い腫瘍(悪性リンパ腫、急性白血病)、化学療法への感受性が高い、腎機能が低下している場合にリスクが高い。
選択肢ごとの確認
脱毛は、毛母細胞という増殖の速い細胞が障害されて生じる。投与開始から2〜3週間後に現れ、治療終了後3〜6か月で回復し始める。初日には生じない。
口内炎も、粘膜の細胞の障害によるもので、投与から1〜2週間後に現れることが多い。
低血糖は、この治療で一般的な合併症ではない。R-CHOP療法にはプレドニゾロン(副腎皮質ステロイド)が含まれ、むしろ高血糖をきたしうる。
好中球減少症は、骨髄抑制によるもので、投与後7〜14日頃に最低値(ナディア)を迎える。この時期に感染のリスクが最も高まる。初日には生じない。
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混同しやすいポイント
化学療法の副作用を、出現する時期で整理する。当日から数日=過敏反応、悪心・嘔吐(急性)、血管外漏出、腫瘍崩壊症候群。1〜2週間=口内炎、下痢、骨髄抑制の始まり。7〜14日=好中球減少の最低値。2〜3週間=脱毛。長期=末梢神経障害、心毒性、性腺機能障害、二次発癌。この時間軸を持っていれば、「初日に生じる」という条件から一意に決まる。
理解を深める
腫瘍崩壊症候群の予防は、治療開始前から始まる。十分な輸液(尿量を確保して尿酸と電解質を排泄する)、尿酸生成抑制薬(アロプリノール)または尿酸分解酵素薬(ラスブリカーゼ。高リスク例で用いる)の投与、そして電解質と腎機能の頻回のモニタリングになる。看護では、水分出納の正確な記録、尿量(時間尿を確保できているか)、体重、そして電解質の値(カリウム、リン、カルシウム、尿酸)、心電図の変化(高カリウム血症によるテント状T波、QRS幅の延長)、けいれん、テタニー(低カルシウム血症)、意識レベルを観察する。R-CHOP療法では、他にリツキシマブによるインフュージョンリアクション(初回投与時の発熱、悪寒、掻痒、呼吸困難、血圧変動)が初日に生じうるため、投与速度の調整と、前投薬、そして投与中の頻回の観察が必要になる。ドキソルビシンは血管外漏出により重篤な組織障害を起こす起壊死性薬剤であり、点滴の刺入部の観察も欠かせない。心毒性(累積投与量に依存)も長期の課題になる。
間違えやすい考え方
合併症を問う型で、誤肢がすべて後から生じるものである。出現する時期で切る。
5分で振り返る
①腫瘍崩壊症候群=多量の腫瘍細胞が短時間に破壊され、細胞内成分が血中へ放出される。②高尿酸血症、高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症→急性腎障害、不整脈、けいれん。③治療開始から数時間〜48時間以内が多い。ただし増殖の速い腫瘍では治療前に自然に生じることがあり、治療後は1週間程度まで起こりうるため、治療前から監視する。④リスクは腫瘍量が多い、増殖が速い、感受性が高い、腎機能低下。⑤予防は十分な輸液、尿酸生成抑制薬または分解酵素薬、頻回のモニタリング。⑥脱毛は2〜3週間後、口内炎は1〜2週間後、好中球減少は7〜14日で最低値。⑦リツキシマブのインフュージョンリアクションも初日に起こりうる。
1分チェック
- 化学療法の初日に生じうるのは。→ 腫瘍崩壊症候群(腫瘍細胞の急速な崩壊)。
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