次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(71歳、女性)は夫と10年前に死別し、1人で暮らしている。息子は結婚して他県に住んでいる。Aさんは、3か月前に脳梗塞〈cerebralinfarction〉を発症して要介護1となり、介護老人保健施設に入所した。Aさんは老人性白内障senilecataractがあるがADLに支障はなく、認知機能やコミュニケーションに問題はない。食事は自力で摂取できる。紅茶が好きで、毎日カップ2、3杯は飲んでいる。我慢できない強い尿意があり尿が漏れてしまうため、下着に尿取りパッドを付けている。トイレには自力で移動でき、下着やズボンの上げ下ろしは自立している。排便は2日に1回である。
A さんの尿失禁の種類で考えられるのはどれか。
公式正答:3
解説
我慢できない強い尿意があり尿が漏れてしまうが、トイレへの移動と下着の上げ下ろしは自立している71歳女性の尿失禁の種類を問う。切迫性尿失禁である。
この問題で問われていること
尿失禁の型を、症状の特徴で区別できるか。
しくみから理解する
切迫性尿失禁は、突然の強い尿意(尿意切迫感)が起こり、トイレに間に合わずに漏れてしまうものを指す。膀胱が十分に溜まっていないのに、排尿筋が不随意に収縮することによる。なお過活動膀胱は、尿意切迫感を中心とする症状によって定義される症候群で、排尿筋の不随意な収縮(排尿筋過活動)は尿流動態検査で観察される所見になる。両者は重なるが、同じものではない。原因としては、脳血管障害、パーキンソン病、脊髄疾患といった神経因性のもの、膀胱炎、膀胱結石、前立腺肥大症、そして原因が特定できない特発性がある。この事例では、3か月前に脳梗塞を発症しており、神経因性の関与が考えられる。「我慢できない強い尿意」という記述が、この型を明確に示している。
選択肢ごとの確認
溢流性尿失禁は、尿が出せずに膀胱に溜まり、あふれるように少しずつ漏れるものを指す。前立腺肥大症、糖尿病性の神経障害、抗コリン薬の使用などで生じる。残尿が多く、排尿困難を伴う。この事例では強い尿意があり、機序が異なる。
機能性尿失禁は、排尿の機能そのものは保たれているが、認知機能の低下や運動機能の障害によってトイレに間に合わないものを指す。この事例では、トイレへの移動と下着の上げ下ろしが自立しており、認知機能にも問題がないと明記されているため、該当しない。
腹圧性尿失禁は、咳、くしゃみ、笑う、重い物を持つといった腹圧のかかる場面で漏れるものを指す。骨盤底筋の脆弱化により、出産歴のある女性と高齢女性に多い。尿意を伴わずに漏れる点が、切迫性との違いになる。
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混同しやすいポイント
4つの型を、症状の特徴で区別する。切迫性=突然の強い尿意、間に合わない。腹圧性=腹圧がかかると漏れる、尿意はない。溢流性=出せずに溜まってあふれる、残尿が多い。機能性=排尿機能は正常だが、移動や動作、認知の問題で間に合わない。事例文の記述が、それぞれの型を除外する材料になっている。移動と動作が自立(機能性を否定)、強い尿意がある(尿意を伴わない腹圧性を否定)。なお溢流性については、膀胱に尿が充満していれば尿意切迫感を伴いうるため、強い尿意があることだけでは除外できない。除外には残尿量の評価が要り、事例にその記載はない。脳梗塞の後には排出の障害も生じうるため、実際の場面では残尿を確認する。
理解を深める
切迫性尿失禁への対応は、まず原因の検索から始める。尿路感染、膀胱結石、腫瘍、そして薬剤の影響を除外する。そのうえで、行動療法(膀胱訓練:尿意を感じてから少しずつ我慢する時間を延ばす、時間排尿、骨盤底筋訓練)、生活の調整(カフェインとアルコールの制限、水分摂取の時間帯の調整、便秘の改善)、そして薬物療法(抗コリン薬、β3受容体作動薬)を組み合わせる。この事例では、紅茶を毎日2〜3杯飲んでいるという記述があり、カフェインが膀胱を刺激して症状を悪化させている可能性がある。ただし、水分そのものを減らすと脱水と尿路感染を招くため、飲む物の種類と時間帯を調整する形になる。抗コリン薬は、高齢者では口渇、便秘、尿閉、認知機能への影響に注意が要る。看護では、排尿日誌をつけてもらって実態を把握し、その人に合った方法を選ぶ。尿取りパッドの使用も、自尊心と外出の継続を支える手段として、否定せずに扱う。
間違えやすい考え方
尿失禁の型を問う型で、誤肢がそれぞれ別の機序である。症状の特徴と事例文の記述で切る。
5分で振り返る
①切迫性尿失禁=突然の強い尿意で間に合わない。過活動膀胱は尿意切迫感を中心とする症状による症候群、排尿筋過活動は尿流動態検査で見る所見で、両者は同じものではない。②腹圧性=咳やくしゃみで漏れる、尿意を伴わない(骨盤底筋の脆弱化)。③溢流性=出せずに溜まってあふれる、残尿が多い。尿意切迫感を伴うこともあるため、除外には残尿量の測定が要る。④機能性=排尿機能は正常だが移動や認知の問題で間に合わない。⑤脳梗塞後は神経因性の切迫性が生じうる。⑥カフェインは膀胱を刺激するため種類と時間帯を調整する(総量は減らさない)。⑦対応は膀胱訓練、時間排尿、骨盤底筋訓練、薬物療法。
1分チェック
- 我慢できない強い尿意で漏れるのは。→ 切迫性尿失禁(排尿筋の不随意な収縮)。
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