次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(71歳、女性)は夫と10年前に死別し、1人で暮らしている。息子は結婚して他県に住んでいる。Aさんは、3か月前に脳梗塞〈cerebralinfarction〉を発症して要介護1となり、介護老人保健施設に入所した。Aさんは老人性白内障senilecataractがあるがADLに支障はなく、認知機能やコミュニケーションに問題はない。食事は自力で摂取できる。紅茶が好きで、毎日カップ2、3杯は飲んでいる。我慢できない強い尿意があり尿が漏れてしまうため、下着に尿取りパッドを付けている。トイレには自力で移動でき、下着やズボンの上げ下ろしは自立している。排便は2日に1回である。
4、5日前からA さんは倦怠感を訴え、ベッドで寝ていることが多くなった。 食欲が落ちてきて、1日の水分摂取量も減少した。トイレでの排尿が間に合わない ことが多くなり、頻回に尿失禁するようになった。看護師がA さんの尿取りパッ ドの交換を介助すると尿臭が強く、色も茶褐色であった。A さんが「おしっこをす るとお腹の下の方が痛い。体がだるい」と看護師に訴えたため、体温を測定すると 37.5 ℃であった。看護師がA さんの状況を施設の医師に報告すると、抗菌薬を内 服するように指示が出された。 A さんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
公式正答:1
解説
倦怠感、食欲低下、水分摂取量の減少、頻回の尿失禁、強い尿臭と茶褐色の尿、下腹部痛、体温37.5℃という状態の71歳女性への対応を問う。日中に飲水を勧めることである。
この問題で問われていること
尿路感染症の治療と予防における水分の役割を説明できるか。
しくみから理解する
尿路感染症では、十分な尿量を確保することが治療と予防の基本になる。尿量が増えれば、膀胱内の細菌が洗い流され(洗浄効果)、また尿の停滞による細菌の増殖も防げる。この事例では、水分摂取量が減少しており、尿が濃縮されて茶褐色となり、尿臭も強くなっている。まず水分摂取を増やすことが、直接に病態へ働きかける対応になる。日中に勧めるのは、夜間の排尿による睡眠の妨げと、夜間の移動に伴う転倒を避けるためになる。
選択肢ごとの確認
下腹部のマッサージは、この場面で有効な対応ではない。膀胱炎による下腹部痛に対して、圧迫は苦痛を増す可能性がある。また、尿の排出を促す効果も期待できない。
抗菌薬を自分で管理してもらうことは、この状況では適切でない。倦怠感が強く、食欲も低下し、寝ていることが多い状態では、確実な服薬が難しくなる。抗菌薬は、指示された期間を最後まで飲みきることが重要で、中断すれば耐性菌を生み、再燃も招く。回復するまでは施設の職員が管理し、状態が改善してから本人の管理へ戻す。
昼間の離床を促すことは、一般には有益だが、発熱と倦怠感がある急性期には、まず休息を優先する。回復に伴って段階的に離床を進める。急性期に無理に離床を求めることは、負担になり回復を遅らせる。
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混同しやすいポイント
『病態に直接働きかけるもの』を選ぶ。水分の増加は、尿量を増やして細菌を洗い流すという、尿路感染症の治療と予防に直結する対応になる。誤肢は、効果のないもの(マッサージ)、この状態では困難なもの(服薬の自己管理)、時期が早いもの(離床)で構成されている。
理解を深める
高齢者の尿路感染症は、症状が非定型的になりやすい。典型的な排尿時痛、頻尿、残尿感が乏しく、代わりに、食欲不振、倦怠感、活気の低下、せん妄、転倒、微熱といった形で現れることがある。この事例でも、倦怠感と食欲低下が先行している。したがって、「なんとなく元気がない」高齢者では、尿路感染を鑑別に入れる必要がある。上部(腎盂腎炎)と下部(膀胱炎)の区別も重要で、発熱と腰背部痛、肋骨脊柱角の叩打痛があれば腎盂腎炎を疑い、菌血症と敗血症のリスクが高まるため、より慎重な管理が要る。予防としては、十分な水分摂取、排尿を我慢しない、陰部の清潔(前から後ろへ拭く)、便秘の改善、そして尿取りパッドやおむつを使用している場合はこまめな交換が挙げられる。カテーテルを留置している場合は、その必要性を毎日評価し、早期に抜去することが最も有効な予防になる。
間違えやすい考え方
『対応』を問う型で、誤肢が効果のないもの・困難なもの・時期が早いものである。病態に直接働きかけるかで切る。
5分で振り返る
①尿量を増やすと細菌が洗い流され、停滞による増殖も防げる。②日中に勧めるのは、夜間の排尿による睡眠妨害と転倒を避けるため。③下腹部のマッサージは効果がなく苦痛を増しうる。④倦怠感が強い時期の服薬の自己管理は確実性を欠く(抗菌薬は最後まで飲みきる)。⑤急性期はまず休息、回復に伴って段階的に離床する。⑥高齢者では症状が非定型(食欲不振、倦怠感、せん妄、転倒)。⑦発熱と肋骨脊柱角の叩打痛があれば腎盂腎炎を疑う。
1分チェック
- 尿路感染症への基本の対応は。→ 水分摂取を増やして尿量を確保する(日中に勧める)。
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