次の文を読み、問いに答えよ。Aちゃん(7歳、女児)は、頭痛、食欲不振、全身倦怠感、肉眼的血尿および両眼瞼の浮腫を主訴に来院した。1か月前に扁桃炎〈tonsillitis〉に罹患した以外は既往歴に特記すべきことはない。扁桃炎は抗菌薬を内服し軽快した。検査の結果、溶連菌感染後tonsillitispoststreptcoccal急性糸球体腎炎〈acuteglomerulonephritis〉と診断されて入院した。入院時、Aちゃんは体温36.6℃、呼吸数20/分、心拍数84/分、血圧130/80mmHgで、床上安静の指示が出された。
入院3日。両眼瞼の浮腫と肉眼的血尿は続いていた。看護師がA ちゃんのベッ ドサイドを訪れると、A ちゃんは「頭が痛い。気持ち悪い」と訴えた。A ちゃんは 体温36.6 ℃、呼吸数20/分、心拍数92/分、血圧148/88 mmHg であった。 この状況からA ちゃんに起こりうる症状はどれか。
公式正答:2
解説
急性糸球体腎炎で入院中の7歳女児が、頭痛と嘔気を訴え、血圧148/88mmHgとなった状況から、起こりうる症状を問う。意識障害である。
この問題で問われていること
血圧の上昇と頭痛・嘔気という組み合わせから、次に何が起こるかを予測できるか。
しくみから理解する
血圧が急激に上昇すると、脳血流の自動調節能の限界を超え、脳の血管から水が漏れて脳浮腫を生じる。これが高血圧性脳症になる。症状は、頭痛、悪心・嘔吐から始まり、進行すると視力障害、意識障害、けいれん、そして昏睡に至る。この事例では、入院時130/80mmHgだった血圧が148/88mmHgへ上昇し、頭痛と嘔気が出現している。これは高血圧性脳症の初期の徴候であり、次に起こりうるのが意識障害とけいれんになる。緊急に降圧を図る必要がある状態になる。
選択肢ごとの確認
眼のかゆみは、アレルギー性結膜炎などの症状であり、高血圧とは関係しない。急性糸球体腎炎の眼瞼浮腫は、かゆみを伴わない。
耳漏は、中耳炎や外耳道炎で生じる。急性糸球体腎炎および高血圧と関連しない。
鼻閉は、鼻炎や副鼻腔炎で生じる。同様に、この病態から予測される症状ではない。
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混同しやすいポイント
頭痛と嘔気は、多くの原因で起こる非特異的な症状だが、血圧の上昇という所見と組み合わせることで、高血圧性脳症という一つの病態が浮かぶ。誤肢は、いずれも頭頸部の症状だが、機序がまったく異なるものになっている。「起こりうる症状」を問う設問では、いま見えている所見から病態を特定し、その病態が次に何を起こすかを考える。
理解を深める
小児の血圧の基準は年齢によって異なるため、成人の基準をそのまま当てはめられない。学童期(7歳前後)では、収縮期血圧の目安が105〜110mmHg程度で、高血圧の基準は年齢・性別・身長のパーセンタイルで定義される。おおまかには、学童で130/80mmHg以上、中学生で135/80mmHg以上が高血圧とされる。この事例の148/88mmHgは、明らかな高値になる。急性糸球体腎炎における高血圧の管理は、まず水分と塩分の制限、そして利尿薬とカルシウム拮抗薬などの降圧薬になる。急激に下げすぎると脳血流が減って虚血を招くため、緩やかに下げる。看護の観察は、血圧の推移、頭痛と嘔吐の有無と程度、視力の変化(見えにくい、ぼやける)、意識レベル、けいれんの有無、そして尿量と体重になる。頭痛や嘔気を「安静のストレス」と解釈して見過ごさないことが重要で、バイタルサインの測定と結びつけて判断する。けいれんが起これば、気道の確保、酸素投与、抗けいれん薬の準備、そして安全の確保(転落と外傷の防止)を行う。
間違えやすい考え方
『起こりうる症状』を問う型で、誤肢がすべて機序の異なる頭頸部の症状である。所見の組み合わせから病態を特定する。
5分で振り返る
①急激な血圧上昇は脳血流の自動調節能を超え、脳浮腫を生じる(高血圧性脳症)。②症状は頭痛、悪心・嘔吐→視力障害、意識障害、けいれん、昏睡。③学童の高血圧の目安は130/80mmHg以上。148/88mmHgは明らかな高値。④降圧は緩やかに(急激な低下は脳虚血を招く)。⑤観察は血圧の推移、頭痛と嘔吐、視力の変化、意識レベル、けいれん、尿量と体重。⑥頭痛と嘔気を安静のストレスと解釈しない。⑦けいれん時は気道確保、酸素、抗けいれん薬、安全の確保。
1分チェック
- 頭痛・嘔気+血圧148/88mmHgの次に来るのは。→ 意識障害(高血圧性脳症)。
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