次の文を読み、問いに答えよ。A君(5歳、男児)は共働きの両親と3人で暮らしている。2歳6か月で自閉スペクトラム症autismspectrumdisorderと診断され、保育所と療育センターに通っている。保育所の健康診断で低身長を指摘され、受診を勧められて両親と来院した。A君は待合室を走ったり診察室の扉を開けたりしていた。診察室に入ると「頑張ろう」と泣きながら叫び、恐怖心を抑えている様子だった。母親は「Aは病院が苦手で、予防接種はAの手足と体を看護師さん3人で抑えて行ってきましたが、繰り返し説明することで、抑えなくても注射ができるようになりました」と話した。診察の結果、1週後に成長ホルモン分泌刺激試験を行うことになった。母親から「Aが血液検査でパニックを起こすのではないかと心配です」と発言があった。
母親への声かけで適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
自閉スペクトラム症のある5歳男児について、1週後の血液検査でパニックを心配する母親への声かけを問う。「家でA君に説明できる絵カードをお渡しします」である。
この問題で問われていること
自閉スペクトラム症の特性に合った説明の方法を選べるか。
しくみから理解する
自閉スペクトラム症では、言葉による説明の理解が難しい一方で、視覚的な情報の処理は得意なことが多い。そのため、絵、写真、実物、そして手順を示したカードといった視覚支援が有効になる。また、見通しが立たない状況への不安が強いため、事前に何が起こるかを繰り返し伝えておくことが、混乱とパニックの予防につながる。母親は「繰り返し説明することで、抑えなくても注射ができるようになった」と述べており、この子には事前の説明が有効であることが既に確かめられている。その方法を家庭で実施できる形にして渡すのが、この場面の対応になる。
選択肢ごとの確認
「検査があることは当日に説明しましょう」は、見通しを立てる時間を奪うことになる。自閉スペクトラム症のある子どもには、予告なく状況が変わることが強い不安となる。1週間の準備期間があるのだから、その間に繰り返し説明を重ねる方が適する。
「予防接種ができるのであれば心配ありません」は、母親の不安を退けることになる。また、予防接種と成長ホルモン分泌刺激試験は、所要時間、採血の回数、絶食の有無などが大きく異なる。同じようにできるとは限らず、根拠のない保証になる。
「看護師3人でA君をしっかりと抑えて採血します」は、以前の方法へ戻ることになる。母親は、繰り返しの説明によって抑制が不要になったと述べており、その成果を否定する提案になる。身体の抑制は、子どもの恐怖と不信を強め、次回以降の処置をより困難にする。抑制はやむを得ない場合に最小限で行うもので、最初から前提にしない。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも「説明の準備をしない」方向になっている。当日に説明する、心配ないと退ける、抑えて実施する。共通するのは、子ども本人が理解して臨む機会を作らないことになる。母親の発言の中に、この子に有効な方法(繰り返しの説明)が既に示されており、それを活かすのが答えになる。事例文の中の手がかりを拾う設問になっている。
理解を深める
自閉スペクトラム症のある子どもへの医療の場での配慮は、いくつかの原則から成る。視覚支援=絵カード、写真、手順表、タイマーで時間を示す。予告と見通し=いつ、どこで、何をするか、どのくらいかかるか、終わったらどうなるかを、事前に具体的に伝える。構造化=手順を一定にする、場所を決める、変更を減らす。感覚への配慮=音、光、においに過敏なことがあるため、静かな環境、待ち時間の短縮、個室の利用を検討する。成功体験=できたことを具体的にほめる。そして本人のペースを尊重し、急がせない。成長ホルモン分泌刺激試験は、早朝から絶食で行い、複数回の採血を数時間にわたって繰り返すため、留置針を用いる、待ち時間の過ごし方を準備する(好きなものを持参する)といった工夫も要る。母親との連携では、家庭での成功例を聞き取り、それを医療の場で再現することが最も効果的になる。日頃の関わりを知っているのは家族であり、その情報が支援の設計の土台になる。
間違えやすい考え方
『適切な声かけ』を問う型で、誤肢がすべて事前の準備をしない方向である。事例文の中の有効な方法を拾う。
5分で振り返る
①自閉スペクトラム症では視覚的な情報の処理が得意なことが多く、絵カードや写真が有効。②見通しが立たない状況への不安が強いため、事前に繰り返し伝える。③当日の説明では準備の時間が足りない。④「予防接種ができるから心配ない」は根拠のない保証(検査の内容が異なる)。⑤身体の抑制は恐怖と不信を強め、次回をより困難にする。最小限にとどめる。⑥配慮の原則=視覚支援、予告と見通し、構造化、感覚への配慮、成功体験。⑦家庭での成功例を聞き取り医療の場で再現する。
1分チェック
- 自閉スペクトラム症の子どもへの検査の説明は。→ 視覚支援(絵カード)を用いて事前から繰り返す。
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