次の文を読み、問いに答えよ。A君(5歳、男児)は共働きの両親と3人で暮らしている。2歳6か月で自閉スペクトラム症autismspectrumdisorderと診断され、保育所と療育センターに通っている。保育所の健康診断で低身長を指摘され、受診を勧められて両親と来院した。A君は待合室を走ったり診察室の扉を開けたりしていた。診察室に入ると「頑張ろう」と泣きながら叫び、恐怖心を抑えている様子だった。母親は「Aは病院が苦手で、予防接種はAの手足と体を看護師さん3人で抑えて行ってきましたが、繰り返し説明することで、抑えなくても注射ができるようになりました」と話した。診察の結果、1週後に成長ホルモン分泌刺激試験を行うことになった。母親から「Aが血液検査でパニックを起こすのではないかと心配です」と発言があった。
成長ホルモン分泌刺激試験の結果、母親が自宅で毎晩A 君に成長ホルモン製剤 を注射することになった。外来で母親は注射の手技を習得し、A 君も注射に慣れ た。 自宅での注射に向けて、母親に確認する事項で優先度が高いのはどれか。
公式正答:2
解説
自宅で毎晩、母親が成長ホルモン製剤を注射することになった5歳男児について、母親に確認する事項の優先度を問う。A君と家族の日課である。
この問題で問われていること
毎日の医療的ケアを生活に組み込むために、まず何を知る必要があるか。
しくみから理解する
成長ホルモン製剤は、毎日決まった時刻に、就寝前に皮下注射する。成長ホルモンの分泌が睡眠中に最も高まるという生理に合わせているためになる。毎日続ける必要があるため、家族の生活の流れの中に無理なく組み込めるかが、継続の可否を決める。何時に帰宅し、何時に夕食と入浴を済ませ、何時に寝るのか。両親は共働きで、誰がその時刻に在宅しているのか。こうした日課を把握して初めて、実行可能な計画を一緒に立てられる。自閉スペクトラム症のある子どもでは、決まった手順と時刻を保つことが安心につながるため、日課に組み込む意味がいっそう大きくなる。
選択肢ごとの確認
保育所での様子は、集団生活の適応や発達の把握には有用だが、自宅での夜間の注射の実施には直接関係しない。優先度は下がる。
家族の経済状況は、治療の継続に関わりうる要素になる。ただし、対象として定められた疾病の診断がつき、疾病ごとの認定基準(身長のSDスコア、成長速度など)を満たせば、小児慢性特定疾病医療費助成により自己負担が軽減される。助成は成長ホルモン治療そのものに対するものではなく、診断された疾病と認定基準によって可否が決まる。また、この設問は「自宅での注射に向けて」の確認事項を問うており、手技の実行に関する情報が優先される。
祖父母の居住地は、支援の資源としては意味があるが、毎晩の注射は母親が実施すると決まっており、直接の関係が薄い。優先度は下がる。
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混同しやすいポイント
「優先度が高いのはどれか」という設問では、いま決まっていること(母親が自宅で毎晩注射する)に、最も直接関わる情報を選ぶ。日課は、いつ・誰が・どこで実施するかを決める土台になる。誤肢は、いずれも意味のある情報だが、この場面の意思決定には直結しない。優先度の設問では、無関係な選択肢が並ぶのではなく、有用だが優先度の劣るものが並ぶ点に注意する。
理解を深める
成長ホルモン治療の在宅での支援には、いくつかの要素がある。手技=製剤の保管(多くは冷蔵で凍結させないが、条件は製品と注入器により異なるため、処方された製剤の説明に従う)、注入器の操作、注射部位(腹部、大腿、上腕、殿部)のローテーション(同じ場所を続けると硬結と脂肪の萎縮を招く)、針の廃棄方法。生活への組み込み=就寝前の決まった時刻、記録をつける、旅行や外泊時の持ち運び(保冷)。子どもへの関わり=年齢に応じた説明、痛みへの配慮、できたことをほめる、将来的には自己注射への移行。副作用の観察=注射部位の反応、頭痛、関節痛、浮腫、そして血糖の変化。定期の受診=身長と体重の測定、成長曲線での評価、骨年齢、血液検査。制度=対象として定められた疾病の診断がつき、認定基準を満たす場合の、小児慢性特定疾病医療費助成の申請。そして家族の負担=毎日のことなので、実施者が一人に偏らないよう、父親も手技を習得しておくと、体調不良や出張の際にも継続できる。訪問看護や外来からの電話相談など、困ったときの相談先を明示しておくことも支援になる。
間違えやすい考え方
『優先度が高い』を問う型で、誤肢が有用だがこの場面の意思決定に直結しないものである。決まっていることに最も近い情報を選ぶ。
5分で振り返る
①成長ホルモンは睡眠中に分泌が高まるため、就寝前の決まった時刻に皮下注射する。②毎日続けるには、家族の生活の流れに組み込めるかが決め手になる。③共働きの家庭では、その時刻に誰が在宅しているかが要点。④自閉スペクトラム症では決まった手順と時刻が安心につながる。⑤注射部位はローテーションする(硬結と脂肪の萎縮を防ぐ)。⑥対象として定められた疾病の診断がつき、認定基準を満たせば小児慢性特定疾病医療費助成を受けられる(治療そのものが対象になる制度ではない)。⑦実施者を一人に偏らせず、父親も手技を習得しておく。
1分チェック
- 毎晩の在宅注射で、まず確認するのは。→ 子どもと家族の日課(いつ・誰が実施できるか)。
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