次の文を読み、問いに答えよ。A君(5歳、男児)は共働きの両親と3人で暮らしている。2歳6か月で自閉スペクトラム症autismspectrumdisorderと診断され、保育所と療育センターに通っている。保育所の健康診断で低身長を指摘され、受診を勧められて両親と来院した。A君は待合室を走ったり診察室の扉を開けたりしていた。診察室に入ると「頑張ろう」と泣きながら叫び、恐怖心を抑えている様子だった。母親は「Aは病院が苦手で、予防接種はAの手足と体を看護師さん3人で抑えて行ってきましたが、繰り返し説明することで、抑えなくても注射ができるようになりました」と話した。診察の結果、1週後に成長ホルモン分泌刺激試験を行うことになった。母親から「Aが血液検査でパニックを起こすのではないかと心配です」と発言があった。
3か月後、自宅でのA 君への成長ホルモン製剤の注射は順調に実施されている。 外来受診時に母親から看護師に「A が通っている療育センターにも相談しました が、A は自閉スペクトラム症 autism spectrum disorder であるだけでなく、注射もしているので就学のこと を考えると心配です。通常の学級に通わせたいと考えているのですが、通常の学級 への就学について教えてください」と相談があった。 看護師の説明で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
自閉スペクトラム症があり成長ホルモン注射を続ける5歳男児について、通常の学級への就学を希望する母親への説明を問う。「A君の特性に合わせた配慮を学校に求めることができます」である。
この問題で問われていること
障害のある子どもの就学に関する制度を、正確に説明できるか。
しくみから理解する
障害者差別解消法により、学校を含む行政機関と事業者には、合理的配慮の提供が義務づけられている。合理的配慮とは、障害のある人が他の人と等しく教育を受けられるよう、その人の状況に応じて行われる変更や調整を指す。過重な負担にならない範囲で、本人や保護者の求めに応じて、学校が個別に検討して提供する。自閉スペクトラム症のある子どもでは、視覚的な手がかりの提示、予定の事前の伝達、刺激の少ない席の配置、指示を短く具体的にする、クールダウンの場所の確保などが例になる。また、成長ホルモンの注射は自宅で行うため、学校での医療的ケアは要らないが、体調の変化への配慮は求められる。
選択肢ごとの確認
保護者が学校で待機する必要はない。医療的ケアが必要な場合でも、看護師の配置や教職員の対応によって支援する仕組みが整えられており、保護者の付き添いを前提としない方向へ進んでいる。また、この子は自宅での夜間の注射であり、学校での医療的ケアは生じない。
就学する学級は、校長が決定するものではない。就学先は、市町村の教育委員会が、本人と保護者の意見を最大限に尊重し、教育支援委員会などの専門的な意見、学校の状況、そして総合的な判断のうえで決定する。平成25年(2013年)の学校教育法施行令の改正により、障害の程度によって就学先を機械的に振り分ける仕組みは廃止され、本人と保護者の意向を踏まえた合意形成を経て決めることになった。
通常の学級に籍を置いても通級による指導は受けられる。通級による指導は、大部分の授業を通常の学級で受けながら、障害に応じた特別の指導を、別の場(自校または他校の通級指導教室)で受ける仕組みになる。むしろ通常の学級に在籍していることが、通級による指導の前提になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも制度の誤った理解を示している。保護者の付き添いを前提とする、決定権者を取り違える、そして通級を排他的なものと捉える。制度の設問では、誰が決めるか、何が併用できるか、そして何が義務づけられているかを正確に押さえる。就学に関する説明は家族の進路の判断に直結するため、不正確な説明は害になる。
理解を深める
障害のある子どもの学びの場は、複数ある。通常の学級(合理的配慮を受けながら学ぶ)、通常の学級+通級による指導(週に数時間、障害に応じた特別の指導を受ける)、特別支援学級(少人数の学級で、その子に応じた教育課程で学ぶ)、そして特別支援学校(障害の程度が比較的重い子どもを対象に、専門的な教育と自立活動を行う)になる。これらは固定されたものではなく、就学後の様子に応じて、学びの場を変更することもできる(就学時に決めたら変えられない、という理解は誤りになる)。就学の手続きは、就学時健康診断、教育相談、体験入学などを経て、市町村教育委員会が本人・保護者との合意形成を図りながら決定する。個別の教育支援計画と個別の指導計画が作成され、医療、福祉、教育の連携の土台になる。看護師の役割は、医療の側から情報を提供し、家族の相談に応じ、必要に応じて学校との連携を橋渡しすることになる。制度の詳細については、教育委員会の就学相談の窓口を紹介することも、適切な支援になる。
間違えやすい考え方
『適切な説明』を問う型で、誤肢が制度の誤った理解である。誰が決めるか、何が併用できるかで切る。
5分で振り返る
①障害者差別解消法により、学校には合理的配慮の提供が義務づけられている。②合理的配慮=過重な負担にならない範囲での、個別の変更と調整。③就学先は市町村の教育委員会が、本人と保護者の意見を最大限に尊重して決定する(校長ではない)。④平成25年の学校教育法施行令の改正で、障害の程度による機械的な振り分けは廃止された。⑤通級による指導は、通常の学級に在籍しながら受ける仕組み。⑥学びの場=通常の学級/通級/特別支援学級/特別支援学校。就学後の変更も可能。⑦個別の教育支援計画が医療・福祉・教育の連携の土台になる。
1分チェック
- 通常の学級への就学では。→ 特性に合わせた合理的配慮を学校に求めることができる。
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