次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(32歳、初産婦)は、夫と2人で暮らしている。骨盤位のために妊娠38週0日に予定帝王切開術で午前11時に男児を出産した。分娩時出血量は480mLであった。出生後、手術室で男児と面会をして「無事に生まれてきてくれてありがとう」と話した。帰室後、子宮底は臍高、硬度良好、悪露は赤色で20gであった。後陣痛と創部痛があり夜間に鎮痛薬を使用した。
帝王切開術後1日、午前9時、子宮底は臍下1横指、硬度良好、バイタルサイン は体温36.9 ℃、呼吸数18/分、脈拍72/分、整、血圧110/70 mmHg であった。夜 間に排ガスを認めた。A さんは「痛み止めを使用した後は眠れましたが、また痛み が出てきました。こんな状態で動けるか心配です。この後の予定を知りたいです」 と話した。 このときのA さんへの説明で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
予定帝王切開術の翌日、バイタルサインが安定し排ガスも認めた褥婦への説明を問う。「今日から歩行を開始します」である。
この問題で問われていること
術後の回復を促す標準的な経過を説明できるか。
しくみから理解する
帝王切開術後は、翌日から歩行を開始するのが標準になる。早期離床には、深部静脈血栓症と肺塞栓症の予防、腸蠕動の回復と腸閉塞の予防、無気肺と肺炎の予防、そして筋力の低下と褥瘡の予防という効果がある。妊娠と産褥は血液が凝固しやすい状態にあり、加えて手術と臥床が重なるため、血栓のリスクが高い。この事例では、術後1日の午前9時にバイタルサインが安定し、子宮復古も順調で、夜間に排ガスも認めている。離床を開始できる条件が整っている。疼痛は歩行を妨げる要因になるため、鎮痛薬を用いて痛みを抑えたうえで、初回は看護師が付き添って行う。
選択肢ごとの確認
「入院中は毎日、タオルで身体を拭きます」は誤りになる。清拭は離床が進むまでの一時的な方法で、術後2〜3日にはシャワー浴が可能になる(創部の状態と施設の方針による)。入院中ずっと清拭が続くわけではない。
「膀胱に入れている管は明日抜きます」も誤りになる。膀胱留置カテーテルは、歩行の開始に合わせて術後1日に抜去するのが標準になる。留置が長引けば尿路感染のリスクが高まるため、早期に抜去する。
「食事は明日からです」も誤りになる。帝王切開術後は、術後1日から水分の摂取を始め、排ガスの有無を確認しながら食事を開始するのが一般的になる。この事例では夜間に排ガスを認めており、腸蠕動が回復しているため、当日から食事を開始できる。
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混同しやすいポイント
4つの選択肢はいずれも術後の経過に関する説明であり、正誤は時期の妥当性で決まる。誤肢はすべて「実際より遅い」内容になっている。術後の回復は、以前より早い経過をたどるようになっており、早期の離床、早期のカテーテル抜去、早期の食事開始が標準になった。古い知識のまま「安静を長く」と考えると、すべて誤る。回復を促す方向が原則になる。
理解を深める
帝王切開術後の標準的な経過を整理する。術当日=安静、輸液、酸素飽和度と出血量の観察、疼痛管理、子宮収縮の確認、下肢の運動(足関節の底背屈)と弾性ストッキングによる血栓予防。術後1日=歩行の開始、膀胱留置カテーテルの抜去、水分と食事の開始、授乳の開始または継続。術後2〜3日=シャワー浴、活動範囲の拡大、母児同室の開始または本格化。術後5〜7日=退院。この経過は施設によって差があるが、方向は共通になる。看護のポイントは、疼痛管理を十分に行うこと(痛みを我慢させると離床が進まず、合併症を招く)、初回の歩行は必ず付き添い、起立性低血圧(めまい、ふらつき)に注意すること、そして経腟分娩の褥婦と異なり創部痛を抱えながら育児を始めることへの配慮になる。母親が「動けるか心配」と述べているように、不安が離床を妨げることもあるため、見通しを具体的に伝えることが支援になる。
間違えやすい考え方
術後の経過の説明を問う型で、誤肢がすべて実際より遅い内容である。回復を促す方向が原則になる。
5分で振り返る
①帝王切開術後は翌日から歩行を開始する。②早期離床の目的=深部静脈血栓症と肺塞栓症、腸閉塞、無気肺と肺炎、筋力低下と褥瘡の予防。③妊娠と産褥は血液が凝固しやすく、手術と臥床が重なるため血栓のリスクが高い。④膀胱留置カテーテルは術後1日に抜去する(尿路感染の予防)。⑤食事は排ガスを確認しながら術後1日から開始する。⑥清拭は一時的で、術後2〜3日にはシャワー浴が可能。⑦疼痛管理を十分に行い、初回の歩行は付き添う(起立性低血圧に注意)。
1分チェック
- 帝王切開術後1日の予定は。→ 歩行の開始(血栓・腸閉塞・肺合併症の予防)。カテーテルも同日に抜去する。
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