次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(32歳、初産婦)は、夫と2人で暮らしている。骨盤位のために妊娠38週0日に予定帝王切開術で午前11時に男児を出産した。分娩時出血量は480mLであった。出生後、手術室で男児と面会をして「無事に生まれてきてくれてありがとう」と話した。帰室後、子宮底は臍高、硬度良好、悪露は赤色で20gであった。後陣痛と創部痛があり夜間に鎮痛薬を使用した。
帝王切開術後3日、子宮底は臍下3横指、悪露は褐色であった。乳房に熱感があ り、乳管は左右とも3本開通しており、移行乳の分泌を認める。看護師が訪室する とA さんは「まだ、お腹の創が痛くて、動くのはつらいです」と話す。慣れない手 付きで児に授乳をしながら「上手にできなくてごめんね」と児の顔を見て語りかけて いる。A さんと児の目と目が合う様子がみられる。 アセスメントで適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
帝王切開術後3日、創部痛を訴えながらも児の顔を見て語りかけ、目と目が合う様子がみられる褥婦のアセスメントを問う。母子相互作用がみられる、である。
この問題で問われていること
所見を、正常な経過と逸脱に正しく振り分けられるか。
しくみから理解する
母子相互作用とは、母親と児が互いに働きかけ、反応し合うことで関係が形づくられていく過程を指す。母親からの働きかけには、児を見つめる、語りかける、抱く、触れる、授乳するといった行動があり、児からは、泣く、目を合わせる、乳頭を吸う、母親の声に反応するといった行動がある。この事例では、母親が児の顔を見て語りかけ、児と目と目が合っている。これは母子相互作用が成立している所見になる。「上手にできなくてごめんね」という発言は、自責のようにも見えるが、児に向けた語りかけであり、児を気遣う気持ちの表れになる。初産婦が授乳に慣れないのは当然であり、この時期として正常な経過にある。
選択肢ごとの確認
子宮復古は順調になる。子宮底の高さは、分娩直後に臍高、産褥1日で臍高から臍下1横指、以後1日に約1横指ずつ下がり、産褥10日前後で腹壁から触れなくなる。産褥3日で臍下3横指は、この経過に合っている。悪露も、赤色(産褥1〜3日)から褐色(産褥4〜9日)へ移行しており、やや早いが逸脱とはいえない範囲になる。
乳汁分泌も遅れていない。乳汁は、初乳(産褥1〜5日)、移行乳(産褥6〜10日)、成乳(産褥10日以降)と変化する。産褥3日で移行乳がみられるのはやや早い経過だが、乳房の熱感(乳房の血流と乳汁産生の増加を示す)と乳管の3本の開通があり、分泌は進んでいる。遅れているとはいえない。
マタニティブルーズではない。マタニティブルーズは、産褥3〜10日頃に一過性に現れる、涙もろさ、気分の変動、不安、集中困難などを特徴とする状態で、多くは2週間以内に自然に軽快する。この事例の母親は、創部痛を訴えているが、児への関心と関わりが保たれており、気分の障害を示す所見がない。「上手にできなくてごめんね」を抑うつと読み取るのは、過剰な解釈になる。
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混同しやすいポイント
誤肢3つは、いずれも「異常がある」という判定になっている。事例文の数値と所見を、正常な経過の目安と照らし合わせれば、すべて範囲内だと分かる。残る選択肢が、いま起きている前向きな現象を言い当てている。正常を正常と判定できることも、アセスメントの重要な力になる。何かを見つけようとして、正常な所見を異常と読むことが、この設問の落とし穴になる。
理解を深める
母子相互作用を促す看護には、いくつかの要素がある。早期の接触=出生直後の母子の対面と早期母子接触(この事例では手術室で面会している)。母児同室=児の欲求に応じた関わりの機会を増やす。授乳の支援=技術を教えるだけでなく、母親のペースを尊重し、できていることを言葉にして返す。母親の観察力の育成=児の表情、動き、泣き方の意味を一緒に読み取る。そして母親自身のケア=疼痛管理、休息、栄養。とくに帝王切開術後では、創部痛が抱っこと授乳を妨げるため、鎮痛薬を積極的に用い、授乳の姿勢を工夫する(フットボール抱き、添え乳など、創部を圧迫しない方法)。「上手にできなくてごめんね」という発言に対しては、否定も安易な励ましもせず、「よく見ていらっしゃいますね」「お子さんはお母さんの声を聞いていますよ」といった形で、いま起きている関係を言葉にして返すことが支援になる。産後の心理は、マタニティブルーズと産後うつ病の区別が重要で、2週間を超えて続く抑うつ、児への関心の喪失、自責の強さ、そして希死念慮があれば、産後うつ病を疑って専門的な対応につなぐ。
間違えやすい考え方
アセスメントを問う型で、誤肢がすべて「異常がある」という判定である。正常な経過の目安と照らして切る。
5分で振り返る
①母子相互作用=母と児が互いに働きかけ反応し合う過程。見つめる、語りかける、抱く、目が合う、吸う。②子宮底は分娩直後に臍高、以後1日約1横指ずつ下降。産褥3日で臍下3横指は順調。③悪露は赤色(1〜3日)→褐色(4〜9日)→黄色→白色。④乳汁は初乳(1〜5日)→移行乳(6〜10日)→成乳。⑤マタニティブルーズは産褥3〜10日の一過性で2週間以内に軽快。⑥2週間を超える抑うつ、児への関心の喪失、希死念慮は産後うつ病を疑う。⑦帝王切開後は創部を圧迫しない授乳姿勢を工夫する。
1分チェック
- 児の顔を見て語りかけ、目が合う様子は。→ 母子相互作用がみられる(正常な関係の形成)。
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