次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(24歳、女性)は大学卒業後、一般企業に就職したが、何度も自宅の鍵を閉めたかどうかを確認するため、遅刻を繰り返した。連絡せずに複数回の遅刻があったことを上司のBさんから強く注意され、うつ状態となったため精神科外来を受診したところ、強迫性障害〈obsessive-compulsivedisorder〉と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。
内服を始めて1週後、A さんは看護師に「鍵を閉めたかどうかの確認が増え、睡 眠時間が減ってつらい」と訴えている。 看護師の声かけで適切なのはどれか。
公式正答:2
解説
強迫性障害で治療中の24歳女性が「確認が増え、睡眠時間が減ってつらい」と訴えた際の声かけを問う。「睡眠状況を具体的に教えてください」である。
この問題で問われていること
訴えに対して、まず何をするかを判断できるか。
しくみから理解する
患者が困りごとを訴えたとき、対応を決める前に必要なのは、状況を具体的に把握することになる。「睡眠時間が減ってつらい」という訴えだけでは、何時に床に就き、何時に眠れ、何回目覚め、日中にどう影響しているかが分からない。それを聞き取って初めて、薬の調整が必要か、生活の工夫で対応できるか、症状の悪化なのか、薬の副作用なのかを判断できる。また、具体的に尋ねること自体が、患者の体験に関心を向け、話を聞く姿勢を示すことになる。
選択肢ごとの確認
「主治医に薬の変更を相談しましょう」は、情報を集める前に対応を決めることになる。選択的セロトニン再取り込み阻害薬は、強迫性障害では効果の発現に時間がかかり、うつ病より高用量を要し、十分な効果が現れるまで8〜12週間程度かかることもある。内服1週の時点で変更を検討するのは早すぎる。また、不眠が薬の副作用によるものか症状の悪化によるものかも、まだ分かっていない。
「Bさんに別の部署に異動したいと伝えてみましょう」は、患者の訴えと離れた助言になる。訴えは確認行為と睡眠であり、職場の異動の話ではない。また、看護師が生活上の大きな決定を促すことは、患者の主体性を損なう。
「鍵を閉めたかどうか気になるときは別のことを考えましょう」は、実行が難しく、かえって症状を強めうる。強迫観念は、意図的に打ち消そうとするほど強まる性質があり(思考抑制の逆説的効果)、「考えないようにする」という指示は有効でない。強迫性障害の行動療法は、曝露反応妨害法(不安を感じる状況にとどまり、確認という反応を行わずに、不安が自然に下がるのを体験する)が基本になり、専門的な手順のもとで段階的に進める。
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混同しやすいポイント
誤肢は、早すぎる対応、話題のすり替え、そして効果のない助言になっている。共通するのは、患者の状況を聞かずに何かをしようとする点になる。看護過程の順序(情報収集→アセスメント→計画→実施)に照らせば、この場面はまだ情報収集の段階にある。訴えを聞いたらまず具体的に尋ねる、という原則が要点になる。
理解を深める
強迫性障害は、強迫観念(繰り返し浮かぶ、不安をかき立てる考え。汚染、危害、確認、対称性など)と、強迫行為(その不安を打ち消すために繰り返す行動。手洗い、確認、数える、並べ直す)から成る。本人はそれが過剰だと分かっていながらやめられず、日常生活と社会生活に支障をきたす。治療は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬による薬物療法と、認知行動療法(曝露反応妨害法)の組み合わせになる。看護では、①症状の程度と日常への影響を具体的に把握する(何を、何回、どのくらいの時間、どんな場面で)、②強迫行為を頭ごなしに止めない(不安が高まり、より強い行為を招く)、③本人が減らしたいと思う場面から段階的に取り組む、④できたことを具体的に認める、⑤家族が巻き込まれている場合(代わりに確認を求められる、繰り返し保証を求められるなど)は、家族への支援も行う、という関わりになる。また、この患者は職場での遅刻と叱責をきっかけにうつ状態となっており、抑うつと自責の程度、そして希死念慮の有無も、あわせて確認する。
間違えやすい考え方
『適切な声かけ』を問う型で、誤肢が早すぎる対応・話題のすり替え・効果のない助言である。情報収集が先という順序で切る。
5分で振り返る
①訴えに対しては、対応を決める前に状況を具体的に把握する(看護過程の順序)。②選択的セロトニン再取り込み阻害薬は強迫性障害では高用量・長期間を要し、効果まで8〜12週間かかることもある。1週での変更は早い。③強迫観念は打ち消そうとするほど強まる(思考抑制の逆説的効果)。「別のことを考えて」は有効でない。④行動療法の基本は曝露反応妨害法。⑤強迫行為を頭ごなしに止めない。⑥本人が減らしたい場面から段階的に取り組む。⑦家族が巻き込まれている場合は家族への支援も行う。
1分チェック
- 訴えを聞いたら、まず。→ 具体的に尋ねる(睡眠の状況を詳しく聞く)。対応を決めるのはその後。
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