次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(24歳、女性)は大学卒業後、一般企業に就職したが、何度も自宅の鍵を閉めたかどうかを確認するため、遅刻を繰り返した。連絡せずに複数回の遅刻があったことを上司のBさんから強く注意され、うつ状態となったため精神科外来を受診したところ、強迫性障害〈obsessive-compulsivedisorder〉と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。
受診に同行していた母親からは「A から『私の代わりに鍵が閉まっているか見て きてほしい』といった要望が多い。それに従わないと『どうして私のつらさを分かっ てくれないの』と大きな声を出す。どのように関わればよいか分からない」と看護師 に相談があった。 母親への看護師の対応で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
娘から代わりに確認するよう繰り返し求められ、断ると大声を出されて困っている母親への対応を問う。母親が疾患をどのように理解しているか確認することである。
この問題で問われていること
家族への支援の出発点を判断できるか。
しくみから理解する
家族への支援も、患者への関わりと同じく、まず現状の把握から始まる。母親が疾患をどう理解しているかを確認することで、誤解があればそれを解き、知らないことがあれば情報を補い、既に理解していることの上に具体的な助言を重ねられる。強迫性障害では、家族が確認や手洗いを代行したり、保証を与えたりすることで、患者の不安を一時的に和らげる一方、症状を維持・強化してしまうことが知られている(家族の巻き込み、あるいは調節行動と呼ばれる)。この仕組みを家族が理解して初めて、関わり方を変えることが意味を持つ。理解を確かめずに助言だけを与えても、実行につながらない。
選択肢ごとの確認
要望に応じ続けるよう助言することは、症状を強める方向になる。家族が代わりに確認すれば、患者は「確認しなければ安心できない」という結びつきを保ち続け、強迫行為が維持される。ただし、急に一切応じないようにすると、患者の不安が強まり関係も壊れるため、段階的に減らす方向で、治療者と相談しながら進める。
「治療の効果が得られるまで待つように」と伝えることは、いま困っている家族を放置することになる。薬物療法の効果には時間がかかり、その間の家族の負担は続く。また、家族の関わり方そのものが症状に影響するため、待つのではなく、いま取り組むべきことがある。
「Aさんが大きな声を出しても反応しないように」という助言は、母親が判断する材料を持たないまま、対応の型だけを渡すことになる。また、一律に反応しないことは、患者に見捨てられた感覚を与えかねず、関係を損なう。強迫行為への対応を変える取り組みは、患者本人が納得し、治療の一環として計画されたうえで行うものであり、家族だけの判断で始めることではない。
もっと詳しく読む
混同しやすいポイント
誤肢は、症状を強める助言、放置、そして根拠を伝えないままの型の指示になっている。「まず理解を確認する」という選択肢は、一見すると何もしていないように見えるが、支援の出発点として必要な段階になる。家族支援の設問では、家族もまた支援の対象であり、指示を与える相手ではないという視点が要点になる。
理解を深める
強迫性障害における家族への支援は、いくつかの段階を踏む。①現状の把握=家族が疾患をどう理解しているか、どのような要望にどう応じているか、家族自身の負担はどの程度か。②心理教育=強迫観念と強迫行為の仕組み、家族の代行が症状を維持すること、そして本人の意志の弱さではないこと。③関わり方の調整=治療者と本人を交えて、どの要望にどう応じるかを段階的に決める。急に断つのではなく、話し合ったうえで少しずつ減らす。④家族自身のケア=家族も疲弊しており、休息、相談先、家族会などの資源を紹介する。⑤危機への備え=症状の悪化、抑うつ、希死念慮が現れた場合の連絡先を明確にする。「どうして私のつらさを分かってくれないの」という患者の言葉は、家族を責めているように聞こえるが、不安の強さの表れでもある。家族がそれを疾患の症状として理解できると、責められている感覚が和らぎ、関わりを続けやすくなる。この理解の変化そのものが、支援の目的の一つになる。
間違えやすい考え方
『適切な対応』を問う型で、誤肢が症状を強める助言・放置・根拠のない型の指示である。まず理解を確認するという順序で切る。
5分で振り返る
①家族支援も現状の把握から始める(疾患の理解、応じ方、家族自身の負担)。②強迫性障害では家族の代行と保証が症状を維持・強化する(巻き込み)。③要望に応じ続けることは症状を強めるが、急に断つのも不安を強め関係を損なう。段階的に減らす。④心理教育=仕組みを伝え、本人の意志の弱さではないと理解してもらう。⑤関わり方の調整は治療者と本人を交えて決める。家族だけの判断で始めない。⑥家族自身のケア(休息、相談先、家族会)も支援に含まれる。⑦「分かってくれない」は不安の強さの表れと理解できると、家族の負担感が和らぐ。
1分チェック
- 家族からの相談には、まず。→ 家族が疾患をどう理解しているかを確認する。
この問題に対応する教材の確認中です。