次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(24歳、女性)は大学卒業後、一般企業に就職したが、何度も自宅の鍵を閉めたかどうかを確認するため、遅刻を繰り返した。連絡せずに複数回の遅刻があったことを上司のBさんから強く注意され、うつ状態となったため精神科外来を受診したところ、強迫性障害〈obsessive-compulsivedisorder〉と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉の内服を始めてから2か月が経過し、 A さんは外出中に鍵を閉め忘れたかもしれないという考えが強くなり、外出から 予定より早く帰宅することがある。A さんは「鍵を閉め忘れていないかの確認を減 らしたい」と看護師に相談した。 A さんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
公式正答:4
解説
「鍵の閉め忘れの確認を減らしたい」と自ら相談した患者への対応を問う。特に気になるときの前後の状況を振り返るよう促すことである。
この問題で問われていること
本人が減らしたいと望んだ段階で、何を勧めるかを判断できるか。
しくみから理解する
症状を減らす取り組みの土台になるのが、自己観察になる。いつ、どんな状況で、どのような考えが浮かび、どう行動し、その後どうなったか。これを記録して振り返ると、症状が強まる引き金(時間帯、疲労、ストレス、特定の場面)と、確認を行うことで一時的に不安が下がる仕組みが見えてくる。この理解が、曝露反応妨害法へ進むための準備になる。また、「特に気になるとき」に注目することで、すべてを一度に変えようとせず、取り組みやすい場面から手をつけられる。患者自身が減らしたいと望んでいる段階であり、主体的な取り組みを支える対応が適する。
選択肢ごとの確認
外出を控えるよう助言することは、生活を狭める方向になる。回避は不安を一時的に減らすが、確認への依存を強め、行動の範囲を狭めていく。強迫性障害の治療では、回避を減らす方向へ進む。
付き添ってもらうよう提案することも、他者による保証を増やすことになる。同行者が「鍵は閉めたよ」と請け合えば、その瞬間の不安は下がるが、自分で確かめずに済ませる形が固定され、症状は維持される。家族の巻き込みと同じ構造になる。
「気になる理由を考えてみるよう伝える」ことは、一見すると内省を促す助言に見えるが、強迫性障害では逆に働きうる。強迫観念そのものを分析し続けることは、その考えに注意を注ぎ続けることになり、反芻を強める。扱うのは、観念の内容や理由ではなく、それが現れる状況と、そのときの行動になる。
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混同しやすいポイント
誤肢のうち、外出を控えると付き添いは、回避と保証という分かりやすい誤りになる。難しいのは選択肢3で、「理由を考える」は多くの場面で妥当な助言に見える。しかし強迫性障害では、考えの中身に踏み込むより、状況と行動を観察する方が治療的になる。この違いを押さえているかが、正誤を分ける。
理解を深める
曝露反応妨害法は、強迫性障害に対する行動療法の中心になる。不安を引き起こす状況にあえてとどまり(曝露)、いつも行っている確認や手洗いを行わずに過ごす(反応妨害)。すると、不安は最初に高まるが、時間とともに自然に下がっていく。これを繰り返し体験することで、「確認しなくても不安は下がる」「恐れていたことは起こらない」という学習が成立する。進め方は、①自己観察による状況の把握、②不安の強さで場面を順位づける(不安階層表)、③低い場面から段階的に取り組む、④成功体験を積み重ねる、という流れになる。看護師の役割は、記録の仕方を一緒に決める、取り組みの前後で気持ちを聞く、できたことを具体的に認める、そして無理をさせないことになる。本人が「減らしたい」と述べたこの場面は、取り組みを始める好機であり、その意欲を支える対応が求められる。ただし、曝露反応妨害法は専門的な手順に沿って行うものであり、看護師が単独で計画するのではなく、主治医や心理職と連携して進める。
間違えやすい考え方
『適切な対応』を問う型で、誤肢が回避・保証・観念の分析である。状況と行動を観察する方向で切る。
5分で振り返る
①症状を減らす取り組みの土台は自己観察(いつ、どんな状況で、何を考え、どう行動し、その後どうなったか)。②引き金と、確認で不安が一時的に下がる仕組みが見えてくる。③曝露反応妨害法=不安な状況にとどまり、確認を行わずに過ごす。不安は時間とともに自然に下がる。④進め方=自己観察→不安階層表→低い場面から段階的に→成功体験。⑤外出を控えるのは回避を強める。⑥付き添いによる保証は家族の巻き込みと同じ構造。⑦強迫観念の内容や理由を分析し続けると反芻を強める。扱うのは状況と行動。
1分チェック
- 確認を減らしたいと望む患者には。→ 特に気になるときの前後の状況を振り返るよう促す(自己観察)。
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