次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(14歳、男子、特別支援学校の中学生)はDuchenne〈デュシェンヌ〉型筋ジストロフィー〈Duchennemusculardystrophy〉で両親、弟(7歳)と2階建ての家に4人で暮らしている。呼吸障害が進行したため非侵襲的陽圧換気療法を導入する目的で入院した。Aさんの呼吸状態は安定し、両親に対するバッグバルブマスクによる用手換気の指導が終了したため、自宅に退院し訪問看護を毎日利用して療養生活を続けることになった。両親は「日常の呼吸管理について退院後に対応できるか心配です」と病棟の看護師に話した。
A さんの両親に対する看護師の指導で適切なのはどれか。
公式正答:3
解説
デュシェンヌ型筋ジストロフィーで非侵襲的陽圧換気療法を導入して退院する14歳男子の両親への指導を問う。人工呼吸器が過剰送気を示すときは回路が外れていないか確認する、である。
この問題で問われていること
アラームの意味から、確認すべきことを導けるか。
しくみから理解する
非侵襲的陽圧換気では、マスクを介して設定した圧を送る。回路が外れたり、接続が緩んだり、マスクが顔から大きくずれたりすると、抵抗がなくなって空気が抜け、装置は圧を保とうとして送気量を増やす。そのため、過剰送気(送気量の増加、低圧、リークのアラーム)は、回路の外れや接続不良、マスクの装着不良を最初に疑う所見になる。まず回路とマスクをたどって確認し、外れがあれば接続し直す。アラームは、機器の異常を知らせるだけでなく、どこに問題があるかの手がかりになるため、意味と対応を結びつけて覚えることが、家族の指導の要点になる。
選択肢ごとの確認
「息苦しいときは吸気圧を上げる」ことは、家族が行ってはならない。設定圧は医師が呼吸状態と血液ガスをもとに決めるものであり、家族が変更すれば、過剰な圧による気胸、胃部の膨満と誤嚥、そして換気の不均衡を招く。息苦しさが続くときは、まず回路とマスクを確認し、体位を整え、それでも改善しなければ主治医または訪問看護へ連絡する。
「人工呼吸器が動かないときはすぐに救急車を要請する」ことは、対応の順序として誤りになる。装置が停止すれば、直ちに換気が途絶えるため、救急車を待つ時間はない。まず用手換気(バッグバルブマスク)に切り替えて換気を維持しながら、原因の確認(電源、バッテリー、回路)と連絡を行う。両親は既に用手換気の指導を受けており、それを行える。
「マスクの周囲から空気が漏れるときはベルトをきつく締める」ことは、皮膚障害を招く。強く締めれば、鼻根部や頬に圧迫が加わり、発赤から潰瘍へ進む。リークへの対応は、まずマスクの位置と向きを調整し、サイズと形が合っているかを確認し、必要に応じてクッション材を用いる。締めつけの強さは、指が1本入る程度が目安になる。
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混同しやすいポイント
誤肢は、設定を家族が変える、順序を誤る、そして力で解決しようとする、という3つの型になっている。在宅の医療機器の管理では、「家族が行ってよいこと」と「連絡すべきこと」の境界を明確にすることが指導の中心になる。設定の変更は行わない、換気の途絶には用手換気で対応する、そして機械的な問題は力ではなく調整で解決する。この3点が押さえられているかを問う設問になる。
理解を深める
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィン遺伝子の異常によるX連鎖劣性遺伝の疾患で、男児に発症する。3〜5歳頃に歩行の異常(動揺性歩行、登はん性起立=ガワーズ徴候)で気づかれ、進行して10歳前後で歩行が困難になり、車椅子を使うようになる。その後、呼吸筋の筋力低下と側弯により、換気が不十分となり、まず夜間から非侵襲的陽圧換気を導入する。心筋障害(拡張型心筋症)も進行するため、心機能の評価と管理も欠かせない。在宅療養の支援は多岐にわたる。医療機器=人工呼吸器、加温加湿器、吸引器、パルスオキシメータ、バッグバルブマスクの管理と、消耗品の補給。災害への備え=非常用電源、バッテリーの確保、電力会社への登録、避難の計画。日常=排痰の支援(徒手的な咳の介助、機械による排痰補助)、栄養、体位、褥瘡の予防、関節の拘縮の予防。社会資源=訪問看護、訪問リハビリテーション、特別支援学校、レスパイト入院、身体障害者手帳、小児慢性特定疾病医療費助成。そして意思決定の支援=進行に伴う気管切開と侵襲的人工呼吸への移行を、本人と家族が考える時間を持てるようにすること。14歳という年齢では、本人の意思を尊重し、本人にも説明と選択の機会を用意することが重要になる。
間違えやすい考え方
『適切な指導』を問う型で、誤肢が設定の変更・順序の誤り・力での解決である。家族が行ってよいことの境界で切る。
5分で振り返る
①非侵襲的陽圧換気で過剰送気(低圧・リーク)のアラームは、回路の外れ、接続不良、マスクのずれを疑う。②設定圧の変更は医師が行う。家族が変えると気胸、胃部膨満、誤嚥を招く。③装置が止まったら、まず用手換気(バッグバルブマスク)に切り替える。救急車を待たない。④マスクのリークは、位置と向きの調整、サイズの見直しで対応する。締めつけは指1本が目安。⑤デュシェンヌ型筋ジストロフィーはX連鎖劣性、男児に発症、ガワーズ徴候、10歳前後で車椅子。⑥心筋障害の管理も必要。⑦災害への備え=非常用電源、バッテリー、電力会社への登録、避難計画。
1分チェック
- 過剰送気のアラームが鳴ったら。→ 回路が外れていないか確認する(リークを疑う)。
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