次の文を読み、問いに答えよ。Aさん(14歳、男子、特別支援学校の中学生)はDuchenne〈デュシェンヌ〉型筋ジストロフィー〈Duchennemusculardystrophy〉で両親、弟(7歳)と2階建ての家に4人で暮らしている。呼吸障害が進行したため非侵襲的陽圧換気療法を導入する目的で入院した。Aさんの呼吸状態は安定し、両親に対するバッグバルブマスクによる用手換気の指導が終了したため、自宅に退院し訪問看護を毎日利用して療養生活を続けることになった。両親は「日常の呼吸管理について退院後に対応できるか心配です」と病棟の看護師に話した。
退院後1週。A さんの父親から「最近、大雨や落雷、地震による被災の報道が多 くて、A は人工呼吸器を付けているし、弟もまだ小さいので不安です。災害に備 え何をすればよいでしょうか」と訪問看護師に相談があった。 訪問看護師がA さんの父親に説明する内容で優先度が高いのはどれか。
公式正答:1
解説
人工呼吸器を装着した14歳男子の父親から、災害への備えについて相談された訪問看護師の説明で、優先度が高いものを問う。非常用電源の選び方である。
この問題で問われていること
生命に直結する備えを、優先して選べるか。
しくみから理解する
人工呼吸器は電気で動く。停電すれば、内蔵バッテリーの持続時間(機種により数時間程度)を過ぎた時点で停止し、換気が途絶える。これは直ちに生命に関わるため、電源の確保が最も優先度の高い備えになる。具体的には、外部バッテリー、自動車からの給電に使う変換器、発電機、そして蓄電池といった選択肢があり、それぞれ持続時間、費用、保管、扱いやすさが異なる。家族の状況に合わせて選べるよう情報を提供することが、この場面の対応になる。あわせて、電力会社への事前の登録(停電時に優先して復旧の情報を得る仕組み)、日頃からバッテリーを充電しておくこと、そして用手換気(バッグバルブマスク)で電源に依存せず換気を維持できることの確認も行う。
選択肢ごとの確認
福祉避難所への移動手段も、備えとして必要になる。ただし、人工呼吸器を使う療養者は、移動そのものが負担であり、また避難所での電源と医療の確保が難しいため、まず在宅での継続を可能にする備えを整えることが優先される。避難が必要な場合の計画は、その次の段階になる。
足踏み式吸引器の使用方法も、電源に依存しない備えとして重要になる。ただし、この患者は非侵襲的陽圧換気であり気管切開はしていないため、吸引の必要性は気管切開の場合ほど高くない。電源が失われたときに直ちに生命へ影響するのは換気であり、優先度は電源が上になる。
ハザードマップの確認も、備えの一つになる。自宅がどのような災害の危険にさらされているかを知ることは、避難の判断の土台になる。ただし、この家族が挙げた不安(大雨、落雷、地震)のうち、いずれの場合も共通して起こるのが停電であり、それへの備えがより広く効く。
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混同しやすいポイント
誤肢は、いずれも誤りではなく、必要な備えになっている。この設問は「優先度が高いのはどれか」を問うており、正誤ではなく順序を問う型になる。判断の基準は、失われたときに最も速く生命へ影響するものは何か、になる。人工呼吸器を使う療養者では、それが電源になる。優先度の設問では、すべてが正しく見えるため、基準を明確に持つことが要点になる。
理解を深める
医療機器を使用する在宅療養者の災害への備えを整理する。電源=内蔵バッテリーの持続時間の把握、外部バッテリーの準備と定期的な充電、自動車からの給電の準備、発電機(屋外で使用し一酸化炭素中毒を防ぐ)、電力会社への登録。機器=用手換気の器具(バッグバルブマスク)を常に手元に置く、足踏み式または手動の吸引器、予備の回路とマスク。物資=内服薬、経腸栄養剤、衛生材料の備蓄(1週間分程度)、飲料水。情報=連絡先の一覧(主治医、訪問看護、機器の業者、電力会社)、避難先と経路、ハザードマップ。そして訓練=家族全員が用手換気と機器の切り替えを行えること、停電を想定した実際の手順の確認。加えて、市町村の避難行動要支援者名簿への登録、そして近隣との関係づくりも支えになる。この家族は、弟が7歳と小さく、両親の手が分かれることも想定される。誰が何を担うかを、あらかじめ決めておくことも助言になる。個別避難計画の作成は市町村の努力義務とされており、訪問看護師はその作成に関わる立場にある。
間違えやすい考え方
『優先度が高い』を問う型で、誤肢がいずれも必要な備えである。失われたときに最も速く生命へ影響するもので切る。
5分で振り返る
①人工呼吸器は電気で動き、停電で内蔵バッテリーが尽きれば換気が途絶える。②電源の確保が最優先(外部バッテリー、自動車からの給電、発電機、蓄電池)。③電力会社への事前登録、日頃からの充電。④用手換気(バッグバルブマスク)は電源に依存せず換気を維持できる。⑤備蓄は薬・栄養剤・衛生材料を1週間分程度。⑥避難行動要支援者名簿への登録と個別避難計画(市町村の努力義務)。⑦誰が何を担うかを家族であらかじめ決めておく。
1分チェック
- 人工呼吸器を使う療養者の災害への備えで最優先は。→ 非常用電源の確保。
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